◆櫛引八幡宮の河童 左甚五郎
櫛引八幡宮は八戸市八幡字八幡丁にある神社で、その祀られたのは建久年間(一一九〇-一一九九)と伝わる古社であり、八幡宮の創祀期はひじょうに古い。祭神はホムダワケノミコト(誉田別命・應神天皇)である。現社殿は、一見簡素に見えるが、社寺建築の本軌に則った、格調高い雰囲気がある東北地方では指折りの名建築物として知られ、本殿など五棟は重要文化財に指定されている。
この社殿の建造について左甚五郎の伝説がある。
櫛引八幡宮の社殿再建の計画が出たのは、左甚五郎が深浦に来ているという情報が伝えられたころであった。左甚五郎は陸奥の各地を歩いていたころであった。左甚五郎は社殿建築を任せられたが、その材木が近隣では調達できず遠方より調達しなければならないということだった。左甚五郎は土地の老人を招いて話を聞いたが、馬淵川(まべちがわ)も相当上流まで行けば良材が調達できるだろうが、はなはだ困難だという、というのは地形が険阻で伐採しても引き出す道路がないことである。いきおい水運に頼らざるを得ないが厄介な問題があった。馬淵川には投じすでに水運があり舟もい通っていたのだが、この川には、悪さをするメドツなるものがいて、たいへん困っているのだということだった。土地の人たちがメドツとよんでいるのはどうやら河童らしい。話を聞き終わった左甚五郎はその夜遅く、夜も更けてから、馬淵川の川端にやってきてメドツを呼び出した。しばらく待っていると、水面が波立ち、黒々とした獰猛な様子の河童が岸に上がってきた、「だんな、いったいなんのごようですかい?」、「おお、おまえがこの川の主か?、」「へえ、さようで」、「ちと、たのみがあってやってきた」、「へえ」、「じつはこのかわぎしに八幡さまのお社の建造を頼まれたんじゃが、このあたりにはいい材木がない、そこでまんべ川の上流の木を伐って、いかだに組んで流したらどうかと考えたが、村の衆は黙り込んで何も言わんわい?」、「へえ」、「やっとひとりが言うには、この川には恐ろしいメドツが住みついていて、川に入ったものは片っ端から襲われるらしい?」、「へえ、さようで」、「そうかやっぱりお前のしわざか?」、「いかにも」、「うーん、こまったやつじゃ、ここはひとつわしの顔を立ててくれんかのう」、「なんじゃそんなことですかい、おやすいごようで、しかしここしばらくはろくな食べものにありつけず、ひもじゅうてならん、だんながしりこだまを呉れるなら、力をかしてやらんでもない」、「うーん、そうか、でもおまえには、しりこだまでも。きんたまでもやりたいが、そうすると、わしはあとの仕事ができん、なにかほかにないか?」、「だんな」、「うん、なんじゃ」、「わしは嫁さんがほしい」、「ふうん、おまえは嫁さんがないのか?」、「へえ、さようで」、「以前、いいつまがわにいけば、みつかるかもしれんとおもい五所川原まで行きましたが、見つからず、ついでに岩木川をかみからしもまでたずねてみましたが見つかりませんでした。いや見つかりましたが、おまえにはやえんということで……」、「これこれ、泣くでない、お前が泣くと河童の川流れになる……。よしわかった」、「……?」、「それならわしがおまえに秋田美人のような、色白……いやちがった、色緑のきれいな娘ごをせわしようではないか」、河童は大喜びして、「ふうん、そうか、そんなことならむずかしいことではないぞ」こうしてうまく話がまとまりました。
櫛引八幡宮は八戸市八幡字八幡丁にある神社で、その祀られたのは建久年間(一一九〇-一一九九)と伝わる古社であり、八幡宮の創祀期はひじょうに古い。祭神はホムダワケノミコト(誉田別命・應神天皇)である。現社殿は、一見簡素に見えるが、社寺建築の本軌に則った、格調高い雰囲気がある東北地方では指折りの名建築物として知られ、本殿など五棟は重要文化財に指定されている。
この社殿の建造について左甚五郎の伝説がある。
櫛引八幡宮の社殿再建の計画が出たのは、左甚五郎が深浦に来ているという情報が伝えられたころであった。左甚五郎は陸奥の各地を歩いていたころであった。左甚五郎は社殿建築を任せられたが、その材木が近隣では調達できず遠方より調達しなければならないということだった。左甚五郎は土地の老人を招いて話を聞いたが、馬淵川(まべちがわ)も相当上流まで行けば良材が調達できるだろうが、はなはだ困難だという、というのは地形が険阻で伐採しても引き出す道路がないことである。いきおい水運に頼らざるを得ないが厄介な問題があった。馬淵川には投じすでに水運があり舟もい通っていたのだが、この川には、悪さをするメドツなるものがいて、たいへん困っているのだということだった。土地の人たちがメドツとよんでいるのはどうやら河童らしい。話を聞き終わった左甚五郎はその夜遅く、夜も更けてから、馬淵川の川端にやってきてメドツを呼び出した。しばらく待っていると、水面が波立ち、黒々とした獰猛な様子の河童が岸に上がってきた、「だんな、いったいなんのごようですかい?」、「おお、おまえがこの川の主か?、」「へえ、さようで」、「ちと、たのみがあってやってきた」、「へえ」、「じつはこのかわぎしに八幡さまのお社の建造を頼まれたんじゃが、このあたりにはいい材木がない、そこでまんべ川の上流の木を伐って、いかだに組んで流したらどうかと考えたが、村の衆は黙り込んで何も言わんわい?」、「へえ」、「やっとひとりが言うには、この川には恐ろしいメドツが住みついていて、川に入ったものは片っ端から襲われるらしい?」、「へえ、さようで」、「そうかやっぱりお前のしわざか?」、「いかにも」、「うーん、こまったやつじゃ、ここはひとつわしの顔を立ててくれんかのう」、「なんじゃそんなことですかい、おやすいごようで、しかしここしばらくはろくな食べものにありつけず、ひもじゅうてならん、だんながしりこだまを呉れるなら、力をかしてやらんでもない」、「うーん、そうか、でもおまえには、しりこだまでも。きんたまでもやりたいが、そうすると、わしはあとの仕事ができん、なにかほかにないか?」、「だんな」、「うん、なんじゃ」、「わしは嫁さんがほしい」、「ふうん、おまえは嫁さんがないのか?」、「へえ、さようで」、「以前、いいつまがわにいけば、みつかるかもしれんとおもい五所川原まで行きましたが、見つからず、ついでに岩木川をかみからしもまでたずねてみましたが見つかりませんでした。いや見つかりましたが、おまえにはやえんということで……」、「これこれ、泣くでない、お前が泣くと河童の川流れになる……。よしわかった」、「……?」、「それならわしがおまえに秋田美人のような、色白……いやちがった、色緑のきれいな娘ごをせわしようではないか」、河童は大喜びして、「ふうん、そうか、そんなことならむずかしいことではないぞ」こうしてうまく話がまとまりました。
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