無知の知

ほたるぶくろの日記

日本にあることの幸せ

2016-02-28 21:04:54 | 日記

最近、本当にうれしく思っていることがあります。

衣、食ともに和の復権が目に見え、若い人たちにも人気があることです。そしてそれが海外にも受け入れられていること。素晴らしいと思います。かつおぶしや昆布のだしにも理解が深まり、日本料理の奥深さも解って頂けるようになってきています。

何よりも、私の若い頃とは異なり、自分が日本に生まれ、素晴らしい文化を継承していることに誇りを持つことができるようになっていることです。何でも欧米が優れている、という時代に育った人間としては有り難い世の中になったと思います。お隣の国々も経済的に良くなって、皆さんあか抜けた感じになりました。日本に来て、いろいろ感心して帰って行かれます。日本は経済的には大分勢いもおちて、何となく元気が無くなってきていますが、やっとなりふり構わずの時代が終わった所為では、とも思います。

問題はここから。この自分たちの価値を静かに維持していくことの難しさよ。おごりたかぶるのでもなく、劣等の思いもなく、この世界の中での文化の一つを伝えるものとして、この地に生きて行くこと。自分が伝えられたことを確かに次世代へ伝えること、そこに現代ならではの何かを付け加えること。大きなこと、目立つことをなすことばかり考えなくてもよいのです。

目の前のことを、まずは一生懸命やることですね。


コラーゲン

2016-02-14 16:46:53 | 生命科学

先日書いたように、老化に伴う骨密度の低下や関節の異常をどうやって遅らせるか、考えていました。骨芽細胞を活性化させるエストロゲンが減ることが主たる原因らしい。エストロゲンは一体どのくらい変化するのか数値を探してみました。

健診のサイトに下記の基準値が示されていました。

 

エストラジオール(エストロゲン)(CLIA法)

[月経周期]

卵胞期(月経開始から排卵まで)前期 11~82pg(ピコグラム)/ml

卵胞期後期 52~230 pg/ml

排卵期(排卵日) 120~390 pg/ml

黄体期(排卵後から月経まで) 9~230 pg/ml

[妊娠中]

妊娠前期 2300~7400 pg/ml

妊娠中期 9700~18400 pg/ml

妊娠後期 16500~32400 pg/ml

[閉経後]

22 pg/ml以下

すごい変化です。成人女性では通常でも10倍くらいの数値変化があるわけですね。妊娠するとさらにまた10倍以上増える。人生を通してひょっとすると1000倍の変化もあり得るわけですか。圧倒的ですね。身体にも大層な変化があるはずです。

ところでこんな論文を見つけました。コラーゲンを食べますと、消化によりアミノ酸のほか現在確認されているだけで7種類のオリゴペプチド(アミノ酸が2~5個程度の小さなペプチド)となり、吸収されます。そしてその様々なオリゴペプチドは血中濃度の上昇が確認され、コラーゲン摂取後1~2時間程度で最高値に達してゆっくり低下するそうです。さらにこれらのオリゴペプチドは皮膚、骨、軟骨の細胞を活性化することが観察されているそうです。実際これらのオリゴペプチドの摂取が骨密度の上昇に寄与するデータなどもあるようです。

食べても消化吸収されるわけで、直接皮膚間質のコラーゲンになるわけではなし、と思っていましたが、消化されたオリゴペプチドにそういう効果があるなら、コラーゲンを食べることにも意味があることになります。鶏皮や豚皮、豚骨スープ、ゼラチン系のものはやはり摂るべし、ということでしょうか。

寒い時のお鍋にもゼラチン質が溶け出すような具材を使ってみたり、夏になったらゼラチン寄せを作ったり、最近はドレッシングで柔らかいジュレを作ってサラダにかける、なんていうのも流行ってますね。そうそう、グミもゼラチンです。マシュマロもゼラチン。

あきないように色々な食材でコラーゲンを摂ってみようと思います。


ステロイドホルモン

2016-02-11 17:06:56 | 生命科学

ステロイドホルモンの威力はすごい、と実感するのは子どもたちの第2次性徴。こちらは小学校高学年位から学校の保健体育の教科書にも取り上げられているので皆さん知識は豊富です。おまけに色々な興味も呼びますから、あれやらこれやら微に入り細に入り説明された本やサイトやもううんざりするほどありますね。

ですが、その他の人生におけるステロイドホルモンの威力と言ったら殆ど情報はないに等しい。せいぜいアレルギーを抑える時のステロイド剤の効果くらいが良く知られていることでしょうか。あとは髪の毛に関すること。男性ホルモンが多いと禿げ易い、なんていう情報も結構広まっています。

しかし、女性にとってはステロイドホルモンは本当にものすごい影響力を持っているのです。ステロイドホルモンは脂溶性ですから細胞膜をするっと抜けて細胞内には入ります。しかし作用を表すためにはそれをキャッチするレセプターが必要です。ステロイドレセプターの数は少なく核内にあったため、発見はかなり遅く、1961年。遺伝子がクローニングされたのは1980年代です。その後、ステロイドレセプターは身体のどこにあるのか調べられました。それを調べれば、ステロイドホルモンの生理機能の範囲が明白になるからです。その結果、脳を含め身体中くまなくレセプターのあることが分り、どうやら非常に幅広い作用のあることが判明しました。

ステロイドホルモン、と言っても実は沢山の種類があります。良く知られたコルチゾール(糖質コルチコイド)、アルドステロン(鉱質コルチコイド)、そしてアンドロゲン、エストロゲン、黄体ホルモン(プロゲステロン)。まあ、それはおいておくとして、私が実感するステロイドホルモンの効果とはもっぱらエストロゲン。生理前の様々な身体の変化も面白いものですが、妊娠、出産の時の変化は驚くべきものがあります。

妊娠中はこんなにも変わるんだ、というほど身体が変化します。身体だけではなく、脳の方も変化します。どちらかというとぼーっとして、考えることが面倒くさい感じがします。その一方で、気分は穏やかになり、明らかに鷹揚になりました。これは脳内にもレセプターがあることから、脳にも何らかの変化を起していることを想像させます。味覚、臭いに対する感じ方も変化します。私はにんにくの香り、焼き肉の香りがまったくダメになりました。焼き肉系のほか、出汁の香りもダメでした。お味噌汁など、香りを嗅がないようにしていました。その一方で、ごはんは何ともなかったです。炊きたてごはんが気持ち悪くなる、というのは良く聞いた話だったのですが、私は全く問題なかったです。また、酸味のあるものには全く興味がなかったです。広く言われているので、どんなに食べたくなるのか興味津々でしたが、全くそういう欲求はありませんでした。どちらかといいますとダメになったものの方が多く、これが食べたい、というものはあまりなかったですね。食べられなくて往生しました。後期ではさすがにヘモグロビンが落ちてきて、鉄剤を処方されていました。

ところでこの間、エストロゲン、プロゲステロンは高濃度で推移します。そして出産を経て急激に減少します。この時の変化がまた劇的。子宮が収縮したり、乳汁の分泌がはじまったり、代謝が変わったり、という変化の他にも様々なことがあります。

私自身はあまり感じていなかったのですが、友人は「ものすごい量の髪が抜けた」と言っていました。これはこのホルモンの急激な減少によります。それから気分の落ち込み、イライラ。妊娠期間中のあののんびりとした気分はどこかへ行ってしまいます。もっとも赤ちゃんが外に出てきて、やらなくてはいけないことが沢山あることもありますが、エストロゲン急減少の影響も大きいと思います。出産直後1ヶ月はまわりの方がお母さんをよく看てあげなくてはいけません。私の場合は鈍感なせいか、何となく元の自分に戻ってきた感があって、特になんとも思わなかったのですが、ホルモンの影響を受け易い方は気分の落ち込みも激しいかもしれません。かわいい赤ちゃんの寝顔をゆっくり眺めて、のんびりするのが一番です。

さて、そうして次の変化の時が更年期です。今度は思春期以来ある程度の濃度を保ってきたエストロゲンがぐっと下がります。いわば第2次性徴の逆バージョンが進行するわけで、身体の変化は大体予想がつきます。しかし、第2次性徴では関係なかった変化もいろいろ現れてきます。その一つがLDLの上昇です。この機会に、とここ10年くらいのLDLの数値をグラフにしてみました。

2011~2012年にLDLが32mg/dl一気に上昇しています。もちろん、治療域に入っていたわけですが、更年期の変化、と捉え放置。そして2013年には最高値を記録し、その後は毎年数値は下がり、今年はめでたく正常域に入りました。

2012年、総コレステロールにして一気に42mg/dlも数値が上がったときにはちょっとびっくりしました。あれっと思って心当たりを探ったのですが、すぐにそうか、と思い当たりました。健康診断結果票には要治療の文字がありましたが、いろいろ調べてみますと、更年期の女性のコレステロール値には諸説あることも分りましたし、これは大丈夫、と思いました。

それでもこの数値が下がってくるのかどうかは観察しないと、と思い、毎年欠かさず健康診断は受けてきました。そして今年の結果をみて、なるほど、と改めて思ったことでした。このきれいなカーブを観ていますと、人間の身体調節機能の素晴らしさを実感します。

これからまだまだいろいろな変化が現れると思います。今ちょっと気になっているのは髪の毛。若干薄くなってきたな、と思っています。これもエストロゲン低下の影響の一つでしょう。対して思春期の子どもはふさふさボリュームのある髪の毛を持て余しています。それを観ながらつくづくステロイドホルモンの効果ってすごいな~と思う今日この頃ではあります。その他これから気をつけなくてはいけないのが、骨密度、カルシウム代謝です。これも正しく年を取るためには重要なファクターなのですが、いかんせんいきなり骨密度を測ってもどうしようもありません。なんでどうして骨密度低下に至るのか、下がるのは致し方ないとはいえ、普通に生活できなくなるようでは困ります。それを防ぐのには何が重要なのか。これからの課題です。

男性ももちろん更年期がありますが、女性ほどには顕著ではないようです。男性は第2次性徴以来、目立った変化をすることがあまりないので、ステロイドホルモンの効果を実感する機会がありません。どんなにこのホルモンが多細胞生物の代謝、その他諸々を調整しているのかに無頓着なようです。女性があれこれ身体の変化を言い立てるのを不思議そうに観ていますが、これはなかなかすごいことですよ。ちょっと体験できなくて残念かも、ですね。


薬と毒の狭間

2016-02-06 15:02:33 | 生命科学

以前コレステロールの基準値はおかしい、という記事を書いたことがあります。更年期後の日本女性の半数以上が、高コレステロール血症と診断され投薬されているとは、どう考えても異常です。こんなにも長寿の日本人女性の半数が異常とはどういうことなのでしょうか。そして高コレステロール血症の治療薬スタチンの約7割が日本で、しかも大半が女性によって消費されているそうです。

コレステロール生合成阻害剤スタチン系の様々な副作用の報告が広く報道されています。特に神経系への影響が懸念されています。その一方で、心血管系の発症率を低下させる効果がみられない、という報告も出ています。一体、何のための投薬なのでしょうか。

更年期を迎えますと、一旦は30ほど数値が上がります。しかし、数年経てば脂肪組織などでのホルモン産生が整い、また肝臓での産生量も調節され、自然に数値は下がってきます。普通に健康に留意して生活していれば何の問題もないはず。コレステロールは動物細胞の膜、とりわけ神経系の細胞には必須の成分です。神経細胞の軸索はコレステロールを豊富に含む絶縁性のミエリン鞘で覆われているからです。しつこいようですが、動物にとってコレステロールは必須の栄養成分です。そのために肝臓で大量に生産されています。食事から摂取するコレステロールは肝臓での生産量に比べれば微々たるもので、食事中のコレステロールを下げることには意味はありません。それゆえ、スタチンという薬剤も出てきたのでした。

20~30年前にはコレステロールを含む食品を摂取するな、と大いに宣伝され、卵などが槍玉に挙がっていました。日に何個も頂くわけではなく、たまに卵を頂くくらい、なんてことなかろう、と当時から思っていましたが、巷では皆さん結構気にしていらっしゃいました。今になってやっと食事中のコレステロールを気にすることは意味が無い、と明確に報道されるようになってきました。本当に何をやっているんだか、と思います。

ともかくコレステロールに対する「悪い」イメージを変えることが必要でしょう。

過ぎたるは及ばざるがごとし。

ところで女性の更年期についてあまり詳しい情報が出まわっていません。更年期には卵巣機能が落ちてきて、エストロゲンが急激に低下します。そのために代謝のバランスが崩れ、いろいろな変化が起こります。主に自律神経失調によるさまざまな症状の情報が巷には広まっています。いわく、のぼせ、急な発汗、動悸、高血圧などなど。しかし、あまり情報の無いものもあります。

咽喉頭食道異常感症がそのひとつ。私が経験したことですが、何となく喉の奥にものが引っかかっているような感じがして、一時は食道がんを疑いました。しかし、常にではなく、主にストレスを感じているときであったため、これは。。。と思っていました。調べていますとどうやら更年期にありがちな症状らしく、なんと漢方では「梅核気」(梅の種が喉に引っかかっているような感じ)という用語まで用意されていることが分りました。漢方医学、流石です。

更年期の女性が咽喉頭の異常を訴えて検査してもほとんどの場合異常が見つからなかった、という報告もありました。そこで私はひとまず落ち着いて、しばらく様子を観ることにしました。そのうちすっかりそんな感覚も無くなり、今もお陰さまで元気に過ごしております。

しかし、このような非常に一般的な、女性の当たり前な健康的(ある意味で正常な有り様なので)様相についてどうしてこんなにも情報が出まわっていないのでしょう。大変不思議な気がします。

更年期にはいろいろなことが起きます。しかし、不健康な生活をしているのでなければ、心配しすぎることなく、年1回程度の健康診断を受けながら、安心して過ごしたいものです。