無知の知

ほたるぶくろの日記

うつの予防

2015-06-27 17:17:07 | 生命科学

先日理研脳科学研究センターから次の結果が発表されました。

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うつ病に似た状態のマウスに刺激を与え、楽しい記憶を思い出させることで、うつの症状を改善することに成功したと、理化学研究所脳科学総合研究センターの利根川進センター長らのチームが発表した。

 将来、うつの新たな治療法開発につながる可能性があるという。18日の英科学誌ネイチャーに掲載される。

 チームは、遺伝子操作したオスのマウスで、メスと遊んだ時に活動した脳細胞を記録し、光を当てると、その細胞が再び活動するようにした。その後、継続的にストレスを与え、うつ状態にした。

 健康なマウスは、尻尾を持ってぶら下げると、起き上がろうともがくが、うつ状態のマウスはすぐに諦める。ぶら下げる際、メスと遊んだ時に活動した脳細胞に、光ファイバーを通じて光を当てると、もがく時間が健康なマウス並みに長くなった。楽しい記憶を思い出し、うつが改善したと考えられるという。

 刺激を受けて活動する脳細胞は、「記憶」「感情」「意欲」にそれぞれ関係する領域をつないでいた。

----------------------------------------2015年06月18日 読売

 マウスの実験であること。うつのモデルが果たして正しく人のうつを反映しているか否かは議論のあるところですが、人間の生活に応用できる結果かな、と思います。

「楽しい!」と思える「こと」あるいは「時間」を日々の生活のどこかで持つこと。これが活力の元であり、心の回復にも役に立つのでしょう。何を「楽しい!」と思うかが、また重要なのですが、ともかく一生懸命「楽しい」ことも探しておくことが大事なようです。

私自身は「~ねばならない」だらけの生活を長年送り、すっかり心理的にうつ状態に陥ったことがありました。あの山を越えたら、この谷を越えたら、と「楽しみ」を後回しにしているうちに、時間があれば寝ていたい状態になってしまいました。

先日ネット上で仕事の仕方について議論があったようですが、趣味だけに生きるのも仕事(義務)だけに生きるのもだめかもしれません。仕事に没頭する日々でも、必ず自分を「楽しませる」時間を作ること。そのバランスをうまくとってこそ、前向きに生きて行けるのではと思います。

上の実験結果も「さもありなん」なものですが、こうして結果が示されれば、人にとっての休息がいかに大切なものか社会が認めることになるでしょう。長時間労働がなぜだめなのか、それがうつの原因となることも示されることになります。研究の進展を願っています。


醗酵(酵素)ジュース

2015-06-20 20:33:18 | 生命科学

ずっと昔から酵素液など「○○酵素」などとして売られていました。どのような菌で醗酵させているのか調べてみますと「多種類の乳酸菌、酵母など」となっていました。

「健康にいい」ということで、ご自分で作る方も最近多いようです。私の周りにもいらっしゃいます。「作ったのでどうぞ」と頂くこともあります。

消費者庁が「酵素ジュース」をクックパッドで紹介し「素手でかき混ぜ手の常在菌で醗酵を進める」との説明を付けていたところ、食中毒のおそれがあるのでは、との指摘が殺到して削除した、との報道がありました。

ぬか漬けもそうですが、数十年前はぬか床のフローラ(微生物叢)がよくわかっていなかったのか、人の手の常在菌でぬか床が美味しくなる、と言われていました。その後ぬか床のフローラの研究も進み、今ではぬか床の乳酸菌は「植物性乳酸菌」であることが分かっています。手についている微生物ではなく、植物に着いている乳酸菌や酵母が増えてぬか床を作っていることが分かってきたのです。

「ぬか床」「酵素ジュース」もフローラの中心は「植物性乳酸菌」であり、ぬか床と同じです。「素手でかき混ぜる」ことの「素手」は重要ではなく「かき混ぜる」ことに意味があります。

たまに(この塩梅が重要)かき混ぜることで

1)酸素をぬか床に入れ、乳酸菌の増殖にブレーキをかける。

2)香りの成分の一部を産生する表面の酵母をぬか床内に混ぜ込む。

3)ぬか床の底で繁殖する嫌な臭いを産生する酪酸菌などの嫌気性菌を表面に出し、増殖を抑える。

この過程で、常に適度の酸味と豊富な乳酸菌、嫌な臭いを抑え、風味豊かなぬか床となります。

酵素ジュースでもほぼ同じ効果を得られるでしょう。頂いたジュースを味わってみて、酪酸菌の臭いを感じることがあります。もう少しかき混ぜて頂いた方がいいのかもしれません。かき混ぜる時は、清潔な柄の長いスプーンやへらなどで空気を入れてやる気持ちで混ぜることが大切です。素手でやるのは腐敗菌などの混入につながりますので止めましょう。

ところで「健康にいい」のは本当でしょうか?まだ未知といってもよいですが、乳酸菌のつくり出す様々な物質は人の腸管の免疫細胞へなんらかの働きかけをする可能性があります。また、腸内フローラの調整も行う可能性があります。

どちらも腸管を介した免疫機能調整、全身状態の改善を期待できるでしょう。今は腸管免疫の研究も進んできていますし、詳細はこれから明らかになってくると思います。ひょっとすると抗がん作用も証明されるかも。。

 

 

 


あぁ本音。。。

2015-06-15 07:38:54 | 日記

情けない報道が目に飛び込んできました。皆さんの本音はわかってはいるのですが、公に発言してしまうとはやはり驕りでしょうか。私の周りの方々の本音もこのようなものでしょう。

(2015年6月13日朝日新聞デジタルより)

ソウルで11日まで開かれた科学ジャーナリスト世界会議で「女性が研究室にいると困る」と発言したノーベル賞受賞者のティム・ハント氏(72)がユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)の名誉教授職を辞任した。

 ハント氏は科学の世界に女性を増やそうという趣旨で開かれた昼食会で「女性が研究室にいると、三つのことが起きる。(周囲の男性が)女性に恋をする、女性が恋をする、女性を批判すると泣かれる」と発言。これがツイッターを通じて世界中に広がり、批判が起きた。英BBCの取材に「軽い気持ちだった」などと謝罪して釈明したが、さらなる批判を招いた。

 UCLは辞任を伝える声明のなかで「UCLはイングランドの中で学生の男女平等を初めて認めた大学である」などとした。

 ハント氏は2001年に細胞分裂に関する研究でノーベル医学生理学賞を受賞した。(ソウル=編集委員・高橋真理子

ハント先生と同世代かそれより年上の方は本音の部分では女性を分類しています。

1)良妻賢母:ご自宅には必須の存在。多くの場合、奥さまあってのご自分ということには気づきたくないらしいです。奥さまにはけちょんけちょんに言われたりしていますが、「ふん、なにを雑魚が」と思っているご様子。

2)職業婦人:仕事に生きる女性。家族はなし。仕事はそういう厳しいもの。両方なんてとんでもない。それを認めたら、ご自分が家庭でなにもやっていないことを反省しなくてはいけませんから。

3)便利な女性:ときどき2)と被ります。そうなるとパーフェクトですね。もちろんあちらの方で便利な女性です。

このどれにも分類されないで生きようと、大分努力してきました。少しずつそういう女性が日本にも出てきたような。

1)~3)のどこかの分類に落とし込めようと随分諭され(?)ましたが、私も頑迷ですので、断固として拒否してきました。この世で何かをなしたとしたら、このことでしょうか。

まだまだ道は続きます。今も道行きの最中。努力中です。 

 


組織について3

2015-06-13 14:05:35 | 組織

「組織について」の続きがなかなか書けないでいました。どうすればよかったのか考えていたのに、いつのまにか言い訳になっていることに気がつき「これではダメだ!」の繰り返しでした。

最終的な結論としては、サイエンスよりも組織との戦いに力を削いでいる状況にもっと早く気づき身を処すべきだった、ということです。そういう視点で、どうすればよかったのか、今言えることを書いてみます。

私は自分に被害が及ばないうちは積極的に動きませんでした。しかし、他人が罵倒されているのを見ているのは本当に嫌でした。それが自分の身に及ぶことが嫌なのはもちろんですが、他人が罵倒されていること、それを嘲笑しながら眺める人間のいること、そのような状況が嫌でした。これはいじめの起きている学校の教室と同じような心理状態です。

社会のどこにでもある問題だと思いますが、それを解決して行かなければ、真にクリエイティブな組織にはなりません。

あの時点で、この組織が発展的でないとの判断は十分にできたはず、というのが今痛烈な反省として心にあります。

その時点での選択肢としては

1)組織を去ることでなんらかの意思表示をする。

2)組織に残って何らかの改善を試みる。

があったのですが、結局どちらの道も取らず、

3)組織に残って自分の立場を温存する。

という立場を取ったのが私でした。つまり人を潰して行く組織の片棒を担いだ、わけです。

言い訳がないな、と正直思います。大変なのはどの選択肢も最終的には同じです。その時点でするべき努力をしなかったことには変わりありません。

2)の選択肢をしたとして、どのような試みが可能だったのか。

この間、しばらく考えていたのですが、あの強烈な個性のリーダーに対してはなかなか効果的なものが見当たらないのです。

アカデミアがその問題の方に対してとった方策は、といいますと

徹底的な「無視」でした。ある領域、組織に綴じ込め、そこから外へ出て来ないよう、少しずつ包囲網を固めていきました。その方はさらなる権威を目指し、何回か外へ出るトライをしていましたが、その度に阻まれました。ある組織へのトライの際、その組織内ではかなりの工作が行われたと聞いています。その組織内の某人をよく知る方が、徹底してその組織内で人々を説得して廻ったそうです。

ある時点で某人は他の権威へのトライをあきらめました。それは現組織で某人のその強烈な個性が必要となったこともあり、より権威と力のあるポジションへ引き上げたためです。

その後、明らかに内側への圧力は強くなり、状況は悪くなりました。そして同時に私も含め組織内の人間はさらに出口が無くなって行きました。肝腎のサイエンスはさらに低迷することになりましたが、組織体としては財務問題を解決することが優先課題であったため、サイエンスは犠牲となりました。組織的にはサイエンスはどうでもよいことになったのです。

私は幸いなことに、外に出る縁を頂いたのでそこから出ることができましたが、今もかなりの方があの組織の中で大変な思いをしています。何かできることはあるかと機会をうかがっていますが、今のところ手だてはありません。最終的には一人一人の判断だと思いますが、なんとかなって欲しいと願っています。

某人についてこれ以上書くことは現時点では控えておきます。結局、他人がどうこうではなく、自分がどうするかの問題だからです。組織に属する方の一人一人の決意と行動が積み重なり、適正な組織運営とリーダーの選択につながるのです。そこにマニュアルはありません。

真に自分自身の判断に任されています。そのことを胸に今後も組織について考えて行きます。


MERSにどう備えるか

2015-06-07 16:38:10 | 生命科学

MERSの報道が増えています。隔離対象の方がアシアナ航空機で韓国から香港へ移動し、その後発症したことがわかったりして、封じ込めの対策が後手後手になっていることも不安を増大しています。ヒトーヒト感染の詳細を知ることで、効果的な防疫をして頂きたいと思います。

まず飛沫感染はしないようです。つまり、同じ部屋の空気を吸っているだけでは感染はしません。

しかし、感染者の唾液の飛沫がドアノブやつり革などについていて、それに触れた手で眼や鼻、口の粘膜に触れれば感染が成立する可能性があります。

したがって、マスクをすることには意味があります。しかもすかすかのマスクでも大丈夫です。手についたウイルスが直接口に入ることを防ぎます。ただし、マスクを外すときは要注意です。外側にはウイルスがついていることを想像してマスクの外側にはなるべく触れないよう外し、外側を内側に折り込んで捨てるようにします。そして帰宅したら家のあちこちに触らないでできるだけ早く手を洗います。

空港は危険に満ちています。空港へ行く用事がある場合は特に気をつけたいと思います。

発熱と疲労感が酷い場合は、いきなり受診するのではなく、最寄りの大きい医療機関に電話をし症状を話してから指示に従ってください。

夏の旅行シーズンまでに落ち着くとよいのですが。