無知の知

ほたるぶくろの日記

STAP細胞について4

2014-12-29 13:57:17 | 生命科学

 2014年を終えるにあたって、やはりSTAP細胞事件について何らかの区切りを私自身もつけたいと思い、書いておくことにしました。ここにおいても、いくつか日記を書いてきましたので、それを見直しながら、私自身の件の論文に対する考えの変遷を振り返ります。

まず2月1日、発表の直後に

「今回の発見は多くの幹細胞研究者が一度は夢見ていた、あるいは心に抱いた現象だったのではないでしょうか。

今回の快挙にまずは賞賛を送りたいと思います。発見者の小保方さんだけではなく、彼女をフォローした若山さん、笹井さんも本当に立派だと思います。それもこれもカドヘリンの発見者である、竹市雅俊先生が率いる理研再生・発生科学総合研究センターであったからこそ、成し遂げられた仕事だと思います。

(中略)

がん細胞の誕生とはまさしく今回のストレスによる分化細胞の幹細胞化、ともいえるのです。これからそのメカニズムの詳細の研究が進むことによって、分化の本質、がん細胞制御の技術が生まれてくることを予想します。本当に楽しみな状況になってきました。」

と書きました。

このころ論文は斜め読みでしたが、やはり責任著者として笹井氏の名前があったことから、詳細を検討せずにこの論文の主張を信用しました。しかし、あの派手な発表の仕方や、その後の小保方氏に関する報道での取り上げられ方には異常なものを感じていました。

その後米国への出張中に論文への疑義が挙がっていることを知りました。正直な話し「やっぱり」という気持ちがあったことは確かです。あまりにもリセットをおこす条件が非特異的すぎたためです。また、がん化の際に起こる幼若化とどのように区別するのかも不明だったからです。

その後論文を熟読した後の疑問点について2月後半から3月にかけて何度か書きました。

その最中に理研CDBの丹羽先生からプロトコールが新たに提出されました。これがまた、だめ押しのような酷いものだったことも書きました。特に論文における最も重要な主張要件が文中あっさりと否定されていたのは驚くべきことでした。このころは、私は自分の論理性がおかしいのか?自分の頭の方がおかしいのか?と自問自答せざるを得なかったくらい、巷の反応は鈍かったように思います。どう考えても筋の通っていない論文を擁護する人々がいることが信じられないと思いました。

論文への疑義が呈されたこの時期に、理研がまずやるべきであったのは『疑義の対象となっているSTAP細胞なるものが、真にそのような細胞であり、ES細胞ではない』ことを確かめることだったはずです。自分が当事者であったなら、そしてその研究成果に絶対の自信を持っていたなら「どうぞ調べたいだけ調べてください」と喜んでサンプルを提供し、ES細胞ではないことを証明してもらうことを、むしろ望んだでしょう。

今回の報告書をじっくりを読ませて頂きましたが、実に精緻にSTAP幹細胞のゲノム遺伝子解析が行われ、全ての細胞株がすでに存在していたES細胞と同一のものであることが明確に証明されていました。これこそが、まず最初になされる調査であったはずです。9月に発足したとされるこの委員会は約4ヶ月でこの報告書をまとめました。2月にこのような検討が開始されていたなら、6月にはこの結果が出ていたはずです。科学的事実に対しては科学的事実をもってしか説得力はありません。誰がどのような信念を持っていようが、いまいが、自然は真実を示してくれるからです。初期に科学的事実が明白に示されていれば事態の混乱はこのように長期化はしなかったはずです。また、亡くなる方は出なかったことでしょう。

なぜ、そうならなかったのか。

その原因を探ることは 、現在の理研、さらに生命科学界の抱える問題点を明白にすることでしょう。

誰が、何のために、問題の細胞を検証することを止めたのか?

この問いはSTAP細胞の政治的背景を明らかにすることでしょう。多くの組織と人々が関わっていたはずです。

誰が、何のためにES細胞をSTAP細胞に混ぜ込んだのか?

この問いによって、現在の生命科学研究の現場の問題点が明らかになることでしょう。

STAP細胞の直接の当事者が混ぜ込んだのか?この場合、当事者達は相当の悪意をもってこのストーリーを作り上げたことになります。あるいは途中からそうだったのか。初めからではないのかもしれません。つまり、実際に混ぜ込んだ方は論文当事者ではなく、単なるいたずらのような気持ちでES細胞を混ぜ込んだのかもしれません。それを論文当事者がSTAP幹細胞ができたと勘違いし、先へ進んでしまったのかもしれません。しかし、途中からだったにせよ、立ち止まってよく吟味するべき時点は何度もあったはずです。さらに実験ノート等の不備、論文内の他の文書からのコピー、画像のコピーや使い回し、切り貼りなどの違法な改ざんについても、論文の責任著者は気づいていたはずです。

それらをスルーし、あの派手な発表まで突き進んでしまったのは一体どうしてだったのでしょう?生命科学系の論文は約70%くらい再現不可能と言われています。これも大概だと思うのですが、だとすれば、たとえ世界中の研究者が再現できないと騒ぎ立てても「コツがありますから」で逃げ切れるとでも思っていたのでしょうか?この点に関してはまた稿を改めて東大分生研の問題について書くときに触れたいと思います。

ともあれ、2014年は日本の生命科学の問題点がまさに噴出した年となってしまいました。生命科学とは何なのか、来年からは厳しい再構築の道が待っています。私も引き続き問題点を少しずつ提示して行きたいと考えています。


家事は科学だ!4- それでも掃除

2014-12-23 16:20:07 | 生命科学

今年ももうあと1週間あまりで終わります。今年は1月末からつい先日まで、某細胞の件でざわざわとしました。まだ全てが終わったわけではありませんが、一区切りはした感があります。日本の生命科学が世界からの信頼を取り戻すまでには長い時間が必要かもしれません。残念ながら火種は残っているからです。私も全く無関係ではありませんので、微力ながら今後もできることをやっていこうと考えています。

さて、秋からずっと仕事が忙しく、続きを書くことができませんでした。やっと暮れになって時間ができました。今回は掃除について書いてみます。

洗濯の次は料理かな、と思ったのですが、やはりここは掃除を取り上げることにしました。掃除についてはまったくもって個人の感覚がばらつきます。また、感覚のままに完璧な掃除を目指しますと生活が成り立たなくなったりします。ここに書こうとするのは、主に健康に暮らせるための最低限の掃除です。私が絶対に手を抜けない部分と考えているところについて書いていきます。

水廻りは要注意

健康、衛生という視点から掃除を見るとき、ともかく最低限毎日やらなくてはならない掃除の場所があります。台所、風呂場、トイレなど水廻りの掃除、あるいは清潔の維持です。特に小さい子どもさんがいたら、これは必須です。小さな子どもさんがいて、そうでなくとも忙しいのに、仕事もあって、でもやらなくてはいけない掃除。辛いのですが、ここを手を抜いて、万が一の事態がおこったら、もっと辛いです。

健康、衛生とは、つまり微生物の制御です。家庭内で問題になるのは細菌とカビです。

洗濯の時も書いたのですが、微生物の増殖条件は温度、水、栄養分です。そのうち人間が制御しやすいのは水。温度は季節によります。お風呂場のようにどうしたって温度の上がってしまうところもあります。台所もそうです。微生物の栄養分はほんとに微量でも十分です。これを完全に取り除くのはまず無理。ところが水については何とかできます。水たまりを作らない。濡れているものは乾燥させる。湿気を取り除く工夫をすることで、微生物の増殖は制御することが可能です。

(1)台所

掃除の前に、台所の標準装備についてちょっと書いてみます。

<ふきんと台拭き>

ふきんは3種類用意しています。手ふき用とまな板用、お皿拭き用。この中でもっともきれいなのはお皿拭き用。基本的に微生物はついていないふきん、と考えています。まな板用は、もっぱら洗った後のまな板の水気を拭き取るもの。これはひょっとすると何らかの微生物がついているかもしれないふきん。そして手ふき用はもっとも雑菌がつきやすい、ついている可能性の高いふきん、と考えています。

子どもが5歳になるくらいまではこれらのふきんを全て毎日変えていました。今は汚れたな、と思ったら変えますが、早くて3日くらい、うっかりすると1週間そのままだったりして、反省してます。私は少なくとも台所のふきんはこの3種類用意するべきと思います。そこまでしないとしても、少なくとも一つは食べる直前の食材に触ったとしても問題ないくらいの清潔なものであるべきです。

台拭きもテーブル拭き用と調理台用、の2種類用意しています。テーブル拭き用は食卓まわり。基本的に清潔なもの。調理台用では生鮮品からの微生物が拭き取られている可能性を常に考えて、マメに洗剤で洗います。夜、最後にはなるべく乾燥させています。

<まな板>

面倒ですが、最低2種類、できれば3種類用意するとよいかと思います。1枚はパン、果物類、ハーブ、薬味など、切ってそのまま口に入れるもの用。そしてその他のまな板。私はその他のまな板も、肉魚類と野菜でまな板を分けています。 

以上の基本装備を確認したら、いよいよ掃除と参りましょう。

あ)まずシンクの排水口に溜めた生ゴミは毎日捨てる。一日の生ゴミは夜にはまとめて捨てる。ゴミの日が決まっているときには密閉して溜めておく。

い)夜にはシンクの皿洗いは必須。少なくとも1日以上溜めない。

う)使用した食器は水ですすいで水を張ってシンクに置いておく。油が沢山ついているものはティッシュなどで拭き取って水を張り、洗剤を一滴たらしておく。油の付いたものとその他のものを区別しておく。

え)まずは油の付いていないものから洗う。だんだんに油の付いたものを洗って行く。 

私は基本的にスポンジは一つです。お皿洗いからシンク、油物まで全て一つで大丈夫。きちんとした毎日の管理がなされていれば、一つのスポンジで全く問題ありません。もちろん水仕事の最後にはスポンジを洗剤で洗っておきます。 

排水口の奥を洗うブラシは専用のものを用意しています。ときどき汚れが気になったらブラシで洗います。市販の納豆菌などの溶液をたまに夜排水口へ入れておくことをしますと排水口奥の汚れもさらさらとした泥のようで、ブラシでさ~っと洗い落とせます。 

食器、鍋類、その他の洗浄が終わったら、ガス台の周りを油汚れ取りシート(いろいろ市販のものがあります)と調理台用台拭きで掃除。その後、テーブル拭きとともに食器用洗剤で洗っておきます。この最後のふきん洗いをさぼるのはだめだめです。汚れたままですと乾かない→細菌増殖。大変なことになります。経験があるから分かることなんですが。。 

(2)トイレ

ここは余り説明は必要ないかもしれません。最低週1回はお掃除しましょう。几帳面な方でしたら毎日されるかもしれません。

トイレには香りのものは置きません。今時の水洗トイレでは臭いに香りをかぶせても埒が明きません。臭う時点でおかしいのです。掃除不足は臭いでわかります。香りはそれを隠すだけ。昔の汲取式で匂うことがどうしようもなかった時は、香りのものを置いておくことで少しでも快適に、という配慮もありえたかもしれません。しかし今は違います。臭いのないこと、がまず第一。そうすることで異臭をいち早くキャッチできます。汚れてきたな。あるいは誰かが汚したかな?というのもすぐに分かります。 

水洗の水タンクもときどき薬剤で掃除します。タンクの中にカビがはえていますとカビ水で便器を洗浄することになり、シャレになりません。 

(3)風呂場

お風呂場は微生物の楽園です。微生物にとって必須の環境因子、水、温度、栄養分が豊富だからです。お風呂に入ってきれいになったものの、微生物に晒されるとあっては元も子もありません。そこで人間は身体を洗い清めるわけで、そのきれいになった状態を維持できる環境を整えないと洗っているのか、感染症の種をまいているのか分からないことになります。

洗剤と掃除については他を参照して頂くとして、毎日気をつけたい点を書いてみます。

お風呂に入った後はともかく石けんかすをきれいにお湯で流します。その後冷たい水をまいてお風呂場の温度を下げます。湿度はどうしても高いですが、温度だけでもまず下げて微生物の増殖を遅くします。

そして換気を十分にして乾燥させます。窓だけの換気では十分ではないかもしれません。もし可能なら換気扇を取り付けるなど、乾燥を促す工夫は必要だと思います。 

(4)洗面所

カギは鏡の美しさと流しの手入れです。洗面所には小さめのタオルを用意し、使用するたびに洗面所のボウルの水気を拭き取ります。水のコックも毎回拭いて、輝かせておきます。そのあと鏡もついでに拭いておきます。水垢の白いこびりつきを防ぐこと。鏡を常にきれいにしておくこと。これだけで大分すっきりとします。 

(5)玄関と窓

玄関は家の顔。たたきはもちろんですが、玄関の扉も気をつけています。そして窓。窓ふき用のお掃除シートは洗剤がついていますから、それで汚れを落とすか、中性洗剤を薄めた水で汚れを拭き取り、最後は繊維くずがつかないシートで一拭きします。時間をかけなくてもいいのです。なるべく簡単な方法で、汚れたな~と感じたら拭きます。

窓がきれいでいますとレースのカーテンも映えます。陽の光も楽しめます。

 (6)清潔な雑巾

家人に毎日のように文句を言っているのは、

「雑巾を使ったら石けんか洗剤で洗って干すこと」

の徹底です。微生物や汚れのついた雑巾で掃除をしても、微生物をこすりつけているだけで、掃除ではなく汚染させていることになります。ともかくこれは絶対に守らなくてはいけない原則です。雑巾を洗うことを考えれば、まずは汚れを紙などで拭き取り、その後雑巾を使う、という知恵もでてくるでしょう。

 

以上、掃除について気をつけていることを書いてみました。掃除の仕方についての細かいテクニックは最近あちこちにあります。お住まいの土地の気候にもよるでしょうし、一概には言えません。ただ、ここで特に強調しておきたいのは掃除のもっとも重要な部分は微生物の繁殖を抑えること、ということです。

アレルギーのある方は特に湿気に気をつけられることをお勧めします。カビもダニも増殖のカギは湿気です。洗剤ではどうにもなりませんし、洗剤や薬剤によって化学物質によるアレルギーをおこすかもしれません。

気持ちのいい環境を作ることは心の環境を整えます。それが健康を促し、活動的な毎日を約束します。地道に努力する価値のある大人のエクササイズです。