無知の知

ほたるぶくろの日記

お囃子の稽古

2016-05-22 18:39:27 | 日記

今日は本当によい天気でした。空気も乾燥していたので、あまり気温は気になりませんでした。

例年のごとく、氏神様のお囃子の稽古が今年も始まっています。最初は太鼓も笛もばらばらなのが、だんだんまとまってきます。上手になってきました。

ここのお囃子の拍子は何種類もあり、難しいものです。私は全然覚えられません。戦国時代の元亀年間(1570~73)から行われている、という記述もあるそうです。

今年も無事に例祭を迎えたいです。

伊勢志摩サミットが始まります。この時期に各国の首脳が伊勢神宮の神気に触れることは、何かとても重要な気がします。

話しは全然変わりますが、某スーパーコンピュータの心臓部にも神宮大麻がお祭りされています。びっくりですが、とてもうれしく思いました。重要なことです。


幹細胞について

2016-05-21 07:08:18 | 生命科学

『幹細胞』については、iPS細胞が世に出て一気に人口に膾炙したように思います。それまでにもES細胞などがすでにあって、生命科学の世界では1990年頃から『幹細胞』についての理解は急速に進んでいました。しかし、一般の社会にはあまり関係がなかったですし、高校ぐらいまでの生物でもあまりきちんと扱われていなかったかもしれません。

『幹細胞』『多能性』『万能性』という言葉の定義の理解が曖昧なまま今回STAP細胞の事件が起こったこと。論文の内容がきちんと報道されなかったこと。これらが社会の混乱の一因になっているように思います。もちろん発表のされ方にも問題はあったでしょう。しかし、それを許したのも、そもそも社会での『幹細胞』の理解が曖昧であったからこそだと思います。いわゆるリテラシーが低い状態であったからこそ起こった事件とも言えるでしょう。

『幹細胞』とは広い定義です。身体の中には様々な幹細胞があります。そもそも、動物は一個の受精卵から発生してきます。受精卵は初め自分と同じ細胞をコピーし、ある程度の数になったところで「分化」を起します。そしてまた分化した細胞はそれぞれコピーを作りまた「分化」する。これを繰り返していくことで、様々な機能をもった細胞の集団によって個体を形成します。これが多細胞生物です。細胞の「分化」は例えば毛では毛の幹細胞が毛の細胞に分化し、毛を作ります。これは最終分化。毛になると細胞核はなくなり、もう増殖することはできません。

しかし、身体の中にはかなり「分化」を繰り返していても増殖能力を維持している細胞があります。この中で特にさらに「分化」することのできる細胞が「○○幹細胞」と言われます。血球系幹細胞、などと呼ばれるものもそうですし、毛包幹細胞などというものもそういうものです。これらのある程度分化が進んだ幹細胞はそこから分化できる範囲は限られています。それでも血球系幹細胞などはもの凄い沢山の細胞へ変化しますので、これは『多能性』幹細胞です。

『万能性』幹細胞は、受精卵と同等の、多細胞生物の全ての細胞へ分化しうる細胞のことを言います。ES細胞や、iPS細胞がこれに当たります。多能性幹細胞と比べ、様々な点で異なっており、その性質の不思議さは宇宙的です。

ただし、幹細胞の性質はがん細胞の性質にも似ている点があります。無限に増殖できる、という点です。iPS細胞の再生医学への応用でがんの発生が障害となっていますが、作成時にがん遺伝子を用いる、という点だけではなく、そもそも幹細胞の性質ががん細胞に近いものがある点にも関係があるでしょう。幹細胞を用いた治療全てに言えることです。

応用、という点では分化の制御が上手にできるようになれば、理論的に身体を構成する全ての細胞を産み出すことができるのですから、病態の解明、治療法の開発など応用範囲が広いように考えられますが、分化の制御は容易ではありません。ものによっては組織から取り出した多能性幹細胞を利用する方がより安全で、容易に応用できるものもあるでしょう。これらを開発の過程でどう見分けるか、今後の再生医療研究では重要な点ではないでしょうか。

さて、件の事件に関連する論文として、あまり関係ない論文を紹介した怪しい記事があったため先日の記事を書きました。今頃になってもまだこんな記事が出てくる、ということにやや衝撃を受けました。科学界ではようやっとあの混乱した状態が落ち着き、生命科学、再生科学の現場も静かな日常を取り戻しつつあります。またあのような混乱が起こっては日本の生命科学は壊滅してしまいます。あのような記事がなぜ書かれ、それに惑わされる方が出てくるのか。しばし考えていましたが、やはり、件の事件の問題点がまだ人々の間で曖昧なままであるからだと思いました。

あの事件での科学界での議論の焦点が理解されないため、何か「いじめ」が起こっている、という印象を産み出したのだと思います。これは事態の混乱に拍車をかけました。場が冷えてきた今、もう一度振り返ってみるのは無駄ではないと思い、少し書いてみます。

科学界の議論の焦点は主に3つありました。もう一度これらの点を明確にし、件の事件について冷静な対応をして頂きたいと願っています。

1)論文自体の問題点

2)STAP現象自体の問題点

3)その他剽窃(ひょうせつ)、捏造、などの論文不正

 

1)論文自体の問題点

以前、記事にもしたように、なぜあの論文はリトラクト(撤回)されたのか?をまずはきちんと理解する必要があります。あの論文は、リトラクトされなくてはなりませんでした。これは科学界での共通の認識です。何故でしょうか?分野にもよりますが、生命科学の論文では、「ある生命現象について仮説をたて、検証実験を組み立て、実験し、その結果から導き出せる結論を記述する。」原則があります。昨今問題とされているのは、しばしば生命科学の論文では『実験の結果から導き出せる結論を記述する。』という科学の基本のき、がないがしろにされている場合が多々あることです。一番してはいけないことは「仮説」を主張したいあまり、実験結果に手を加えたり、結論の解釈をねじ曲げたりすることです。

物理や化学の世界ですと、測定が非常に厳密にできるので、その可能性が狭まるのですが(ゼロではない)、生命科学の実験では結果に必ず生命現象特有の(?)ぶれが出ます。これも生命科学がまだ科学の領域に入っていない、と思われる一つの証左なのですが、まあそれは今は措いておくとして、話しを先に進めます。このぶれをいいことに、しばしば結果の解釈に強引な論文が出てきます。

件の論文ではまず実験結果が操作されたものでした。そして、さらにたとえ掲載された結果が本当だったとしても、それらの結果から筆者たちの主張する結論は導けないものでした。

この点は論文の基本のきです。このことから件の論文は論文として認められないものだったのです。したがって、私もここで書きましたが、あれは撤回されるしかなかったのです。

もう一度言いますが、STAP細胞があったのかどうか、STAP現象が真実か否か、とは関係なく、撤回された論文には瑕疵があり、論文として体を為していなかったのです。撤回されてしかるべきでした。これは誰が出した論文でも動かぬ結論です。「いじめ」でも何でもなく、真っ当な当たり前のことです。科学界の認識では常識です。

なぜあれが論文として掲載されるに至ったか?は掲載した科学雑誌の体制に問題があったと思いますが、漏れ聞くところでは雑誌社もその点を認識しているようです。本来あってはならないことです。

2)STAP現象自体の問題点

こちらは今だにくすぶっている点です。「STAP細胞はあったのか?」「STAP現象とは本当に起こるのか?」という設問です。この設問にはまだ誰も明確な答えを与えていません。「ない」ことの証明は悪魔の証明です。この点は今後も検証を試みる方がいても問題はありません。

そして、ここで一つ明確にしておくべきことがあります。

STAP現象のアイデアは、Vacanty氏、あるいはさらにこれまでの数多くの再生現象の研究者のものということです。つまり、pHや機械的刺激などによる生物の細胞への影響で、細胞の幼若化(先祖帰り)や分化のリセットは起こるのか?という設問は非常にポピュラーなものであるということです。O氏のアイデアと言う向きもあるようですが、そうではありません。実証ができないだけで、数多くの研究者が試みてきました。論文にもならないデータが多く、みな止めているだけです。

なぜなら、以前にもここで書きましたが、植物ではそれが起こることが明確に証明されているからです。動物細胞でも起こらない理由がありません。なにかの条件があるはず、と考えるのは間違いではないでしょう。詳細は以前書きましたので、そちらをご参照ください。iPS細胞はこの現象を「人工的に」ではありましたが、動物細胞の体細胞(分化細胞)に完全なリセット(万能性幹細胞への先祖帰り)が起こることを証明したものでした。だから、ノーベル賞受賞となったのです。ただ外からある遺伝子を強制発現させる、という人工的な操作によるものであったため、自然界で日常的に起こる現象ではないと考えられます。したがって自然におこるとする、STAP現象の『真の条件』が発見されればすごいことです。そしてそれは誰もないことを証明してはいません。

完全な体細胞の初期化(万能性幹細胞になるということ)が自然な刺激から起せるとすれば、安全な動物組織の再生への道が開くことになります。ただ、この議論には沢山の反論があるでしょう。私もあるのですが、ここでは話しの筋をそらせることになるので、止めておきます。

 

3)その他剽窃(ひょうせつ)、捏造、などの論文不正

これはもう各種の委員会の報告書が明らかにしていますので、そちらを見て頂きたい。ES細胞が何故混入していたのか。などこれは犯罪捜査の範疇です。

 

以上、科学界の議論の焦点3つを説明しました。これらが全てです。O氏はその中で指導者のもと実験をされた一学徒であり、確かに翻弄されていたことは否めないでしょう。しかしまったく他人の所為であのような大事件になったとは言い難いのです。その点を反省されて今後の人生の糧として頂きたいと思います。何と言っても人が一人亡くなっているのですから。

最後に、STAP現象の市場価値ですが、私はあまり高くないと思います。現在iPS細胞の作成技術も進化し、より自然な状態で(細胞の遺伝子に変異を入れずに)細胞の初期化が行われるようになっています。iPS細胞の研究では「なぜ細胞の初期化(万能性幹細胞への変化)がおこるのか?」という設問についての研究も精力的に行われています。したがってiPS細胞の研究が進めばいわゆるSTAP現象の解明も進むのではないかと考えています。あまり手品のような出来事に踊らされず、正当な科学的努力によって真実は明らかになっていくことが正しい進み方ではないでしょうか。

 再生医学という意味では、ES細胞も組織由来の「多能性」幹細胞も重要なプレイヤーです。これらによる治療への道も多くの真摯な研究者の正しい努力によって進められ、これまでに投資された資金(税金)に見合った成果と国益を産み出してくれるものと信じています。


事実確認することは大事

2016-05-15 22:09:23 | 生命科学

報道、とくにネット上に流れている様々の情報はかなり素性の良くないものがあります。今回それの最たるものがありましたので、少し意見を書きます。

下記の論文についてのニュースが論文の主旨をきちんと伝えていないようです。アブストラクト(概要)を訳したものを示しますので、論文の主旨をまずは虚心坦懐に受け取って頂きたい。

「Modified STAP conditions facilitate bivalent fate decision between pluripotency and apoptosis in Jurkat T-lymphocytes」 

Jee Young Kim , Xinlai Cheng , Hamed Alborzinia , Stefan Wölfl

『Biochemical and Biophysical Research Communications』 Volume 472, Issue 4, 15 April 2016, Pages 585–591

Abstract

Low extracellular pH is not only the result of cancer metabolism, but a factor of anti-cancer drug efficacy and cancer immunity. In this study, the consequences of acidic stress were evaluated by applying STAP protocol on Jurkat T-lymphocytes (2.0 × 106 cells/ml, 25 min in 37 °C). We detected apoptotic process exclusively in pH 3.3 treated cells within 8 h with western blotting (WB). This programmed cell death led to significant drop of cell viability in 72 h measured by MTT assay resulting PI positive population on flow cytometry (FCM) at day 7. Quantified RT-PCR (qRT-PCR) data indicated that all of above mentioned responses are irrelevant to expression of OCT4 gene variants. Interestingly enough, pluripotent cells represented by positive alkaline phosphatase (AP) staining survived acidic stress and consequently proportion of AP positive cells was significantly increased after pH 3.3 treatment (day 7). In general, acidic treatment led to an apoptotic condition for Jurkat T-lymphocytes, which occurred independent of OCT4 induction.

(訳;[ ]内は筆者)

がん代謝だけでなく、抗がん剤の効果とがん免疫の結果、細胞外が低いpHとなる。この研究では、STAPプロトコール2.0 × 106 cells/ml[細胞密度]、25分、37 °CをJurkat Tリンパ細胞へ応用することにより、[低いpHという意味合いでの]酸性ストレスが引き起こす事象を評価した。われわれはpH3.3で処理された殆どの細胞が8時間以内にアポトーシス[細胞死の一形態]のプロセスに入ることをウエスタンブロッティングで検出した。このプログラム細胞死[計画的な自律的細胞死]は72時間後に測定されたMTTアッセイ法による細胞生存性を大幅に低下させ、7日後のフローサイトメトリー解析における[死んだ細胞が陽性になる]PI[プロピディウムアイオダイド]陽性群を増加させた。定量的PCRデータは上記した反応の全てがOCT4遺伝子類の発現とは無関係であることを示していた。興味深いことに、アルカリフォスファターゼ(AP)染色の陽性によって示される多能性細胞[と考えられるもの]は酸性ストレスを生き延び、pH3.3処理の後(7日後)、最終的にはAP陽性細胞の割合は有意に増加した。一般的には、酸性処理はJurkat Tリンパ細胞にアポトーシスを起し、これはOct4の誘導とは独立に起こる。

以上が論文の概要、つまり著者達が限られた語数で研究結果の趣旨を説明したものです。なるべく趣旨を変えないよう要約してみますと、

「培養細胞株として確立しているJurkat Tリンパ細胞をSTAPプロトコールのpH酸性ストレス刺激で処理すると、殆どの細胞は死滅した。そのことはウエスタンブロッティング法とフローサイトメトリー解析とで確認した。さらにMTTアッセイという細胞の呼吸を測定することで活性状態をみる解析法でも活性が低下していたので、殆どの細胞が死滅しているのは確か。このプロセスで、多能性獲得と有意に関係するOct4遺伝子の発現を調べたが、発現は変化していない。しかし、アルカリフォスファターゼ染色によって染まる細胞が少数ではあるがこの酸性ストレスを生き延び、7日後には数が増加した。しかしOct4の誘導はみられなかった。」アルカリフォスファターゼ染色によって染まる細胞はしばしば多能性を獲得した細胞のマーカーとして使われますが、それだけでは多能性細胞とは結論できません。だからOct4の発現を測定していたのですが、それは観察できなかった。もし、Oct4の発現も上昇していたら、それらの細胞を移植し、多能性獲得のさらなる証明をしていたでしょう。しかし、Oct4の発現上昇は起こっていなかったため、それはしなかったと考えられます。

要約といいつつ長くなりましたが、つまり、「酸性ストレスを生き残った細胞は多能性細胞なんじゃないか、と思っていろいろ調べたが、そうとも言い切れませんでした。」という論文です。この実験はがん幹細胞の発生についての考察とも言えるでしょう。某細胞の存在を証明するためにやった実験ではありません。

なぜがん幹細胞についてこんな実験をしようと思ったのか、については次に書きます。


腰凝り

2016-05-08 17:48:07 | 日記

筋膜リリースストレッチをやるうちに首肩が大分楽になってきました。すると今度は別の気になる部位がクローズアップされてきました。腰です。

前にも書いたと思いますが、腰の奥に固い筋肉があって、どうも身体が辛くなるとそこがガチガチになっています。何処に原因があってそうなるのか分からないので、対処ができなかったのですが、このストレッチは少しずつそこにも効果しているような感じがあります。

この腰の凝りは疲れたときに背中が丸くなってのびなくなることと関連があるように思います。消化器系にも関連があるような。右足首にも。などなど次から次に関連が見えるこの腰の凝り。

次のターゲットです。