無知の知

ほたるぶくろの日記

師走

2016-12-23 20:13:28 | 日記

やっと昨日くらいから、年末感を感じるようになりました。

絶え間なくいろいろなことがあって、ずっとハードルの立っているトラックを走っているような一年でした。有り難いことなのかな、と思います。

まずは生きてそのトラックに立てること。

走れること。

ハードルが立っていること。

ハードルを越えた時の達成感は生きている実感。もちろんハードルがなくっても走って行かなくてはならないんですが、それだと単調で辛いかな、と思います。もちろん走っているだけよりは消耗しますが。

若いときはもっとすごい時もありました。これでもか、これでもか、と立て続けに判断を迫られる時がありました。出来事の一つ一つが心理的にも大きな衝撃を伴うものであったにもかかわらず、それを噛み締める時間も無く、ただただ処理して先へ進まなくてはならなかったのでした。

そういえば数年前もそんな感じでした。ときどきありますね。そういう時が。

そういう時の記憶はところどころ飛んでいます。長期記憶として定着する前に過ぎ去っていて、全然脳の働きが現実に追いついていないようです。数年前の忙しかった時の記憶もところどころ怪しいものがあります。

今のような状況はそこまでの忙しさでもなく、丁度いい感じでありがたいです。

地球もいろいろな変動が大きく、世界情勢も不安定ですが、休むときには本気で休んで来年の激動に備えたいですね。何があるかわからないな、と何となく思います。

「備えよ常に」てボーイスカウトの標語でしたっけ。そんな感じです。


あるクマムシ

2016-12-11 17:00:34 | 生命科学

ちょっと個人的に面白いと思った論文があったので紹介します。

高い放射能レベルの場所でも生きて行ける生物がいます。その一つがクマムシの一種。この生物がどうして高い放射能レベルの中生きて行けるのか?その他のクマムシと何が違うのか?遺伝子レベルで調べたところ、変わったタンパク質をコードする遺伝子が見つかったというもの。

さらにその遺伝子をヒト培養細胞に導入したところ、その細胞が放射線耐性になった、というもの。しかも面白いのはこの遺伝子はどうやら外来性。もともとクマムシが持っていたものではなく、細菌などが持っていたものらしい。それがクマムシに水平移行(!)したということのようです。

以下が論文。

Extremotolerant tardigrade genome and improved radiotolerance of human cultured cells by tardigrade-unique protein
    Takuma Hashimoto, Daiki D. Horikawa, Yuki Saito, Hirokazu Kuwahara, Hiroko Kozuka-Hata, Tadasu Shin-I, Yohei Minakuchi, Kazuko Ohishi, Ayuko Motoyama, Tomoyuki Aizu, Atsushi Enomoto, Koyuki Kondo, Sae Tanaka, Yuichiro Hara, Shigeyuki Koshikawa, Hiroshi Sagara, Toru Miura, Shin-ichi Yokobori, Kiyoshi Miyagawa, Yutaka Suzuki, Takeo Kubo, Masaaki Oyama, Yuji Kohara, Asao Fujiyama, Kazuharu Arakawa, Toshiaki Katayama, Atsushi Toyoda & Takekazu Kunieda

  • Nature Communications 7, Article number: 12808 (2016)
  • doi:10.1038/ncomms12808

このたんぱく質をもつヒト培養細胞は放射線を照射した後のDNA傷害(主に二重鎖切断)が半分くらいになっていた、ということで、興味深いです。

その他にも逆に放射線耐性クマムシでは選択的に欠損している遺伝子もあり、それはペルオキシゾームの酸化酵素(β酸化の経路で働いているもの)だそうです。ミトコンドリアのものは残っているので脂肪の代謝はできるようですが。

その他にも面白い点があるのですが、また次の機会に。

放射線を使った治療での副作用予防に使えるのかどうか、興味深いところです。