さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

【読書録】赤い人

2023-05-21 22:54:59 | 読書録

吉村 哲/講談社文庫

これはかなり悲惨な話である。同じ北海道の刑務所を扱った「破獄」は、脱獄を繰り返す人の人物描写に多少ユーモラスなところがあったが、それは本作より後の時代のこと。囚人の待遇もだいぶマシになった時代の話だ。だが本作「赤い人」はそれより前の明治を舞台にしている。ここの囚人になることはまるでゆっくりとした死刑を受けているのと同じこと。虫ケラのように囚人が死んでいく。囚人たちは満足に食事や衣服を与えられない中で、廉価な労働力として、極寒の地、北海道を開発するのに使われている。彼らはいわば使い捨てのような位置付けなのだ。炭鉱も硫黄鉱山も道路も彼らが開発させられた。病気になって病院に送られたら、病院は助けるどころか病状を悪化させるだけで、程なくしてその囚人は死ぬのであった。

北海道がこうした多大な犠牲の上に開発された地であること・・忘れられてはならないと思う。

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