イエレン米財務長官は5日のオンライン講演で、世界的な法人税率の引き下げ競争に終止符を打つため、国際的な法人税の「最低税率」を設定すべきだとの考えを示した。7日に開かれる主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で国際合意に向けて働きかけると表明した。これはかねてから私が主張してきたことだ。法人が国境を越えて、移動する理由の一つは法人税の安い地へと移ることがある。個人はおいそれと所得税などが安いからと国境を越えて、移動することはない。しかし、法人は本来無国籍なのである。世界的な大企業は多くの多民族を社員に抱える。国家は企業の海外流出を恐れて、法人税の引き下げ競争にはまる。国家は本来、利益の有り余る法人からは税が取れずに、生活に苦しむ庶民から税を取らざるを得ない。企業の流出はそこに雇われている労働者の生活も危うくするからである。企業はもともと、どこで利益を得ているかと言えば、庶民による購買による。企業にとっても、庶民の暮らしが豊かで、市場が充実していかなければ、成長もない。「最低税率」は企業の自由を縛ることになるので、自由主義経済下ではやりたくないことだが、これだけ法人と個人の格差が広がっている現状では是正は必要である。(くちなし亭、2021.04.07)
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