山口県周南市金峰の集落での連続殺人事件はまるで、金田一耕助のような名探偵が登場しそうな雰囲気を持つ。異様な張り紙や閉ざされた山間の村で起きた事件である。金田一耕助が推理するような場合なら、犯罪者は逃げていない。犯罪者らしくない風体で、探偵のそばにいる。しかし、今回の事件は、確定しているわけではないものの、どうも、あの人が犯人だという人の行方が知れない。だから、金田一耕助の推理はどうやって犯行を行い、どうやって、逃げ延びているのかという点に尽きるので、推理小説としては、名探偵もあとは警察に任せて、さっさと東京に戻ってくるような事件かもしれない。さて、私も名探偵ではないので、事件、そのものには触れない。だが、この小さな集落の人たちのあいだで、抜き差しならぬ嫌悪感情が増幅されていたことは間違いない。人間は、いや、動物というものは、さらに言えば、植物も含めて、生命を持っているものは、必ず、嫌悪感情を持つ。あいつは嫌いだというものである。一度、スカンクのいやな匂いを嗅いだ動物は二度と、スカンクに近寄らない。その性質を利用して、強力なスズメバチに偽装する虫もいる。つまり、嫌いだという感情は誰もが持っている。でも、その上に立って、私たちは社会が成り立っている。嫌いだという気持ちはわかった。では、そのうえで、君はどうするのかという問題である。
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