エッセイ:日曜日のテレビ(地震その2)
大変な事が起きているというのに、何時もの日曜日の朝だ。
カーテンを開け、少しだけテレビを見てから、朝食の準備を始める。
何十年もやってきたので何という事もないが、一人で用意をするのは
少々くたびれてきた。夫は新聞を広げてはいるが、食事を待っている
のが気配で分かる。手伝ってくれればいいのにと心で呟く。
パンが焼けると、新聞を片手にいそいそと食卓につく。
「新聞は向こうに置いて」と言うと、朝から不機嫌そうだねと目が言
っている。
私は、食事よりさっき見た地震と津波のニュースを早く見たいと、気
持ちが騒いでいる。
東北関東大地震という、未曾有の災害が起こったのだ。
地震だけではなく、今までに経験したことのない大津波が襲った。
そして、若しかしたらこれから一番厄介な事になるかもしれない原発
の事故も起きた。
夫はのんびりとりんごを食べている。
「ご馳走さま」、わざと大きな声で、カップを流しに持っていき、テ
レビの正面に座った。テレビの前のこたつに、夫はいつも正面に、私
は横の席に座る。
「あっ、俺の席を取ったな」と夫が言う。
「主婦の座は空いているわよ」
席なんてどうでもいい。テレビのスイッチを入れた。
なんでもない日常、普通に暮していた町や家や車、畑が濁流に飲み
込まれ流されていく。
素人の撮った映像に緊迫した息遣いが入る。
津波の引いた後に大きな船が陸に乗り上げている。
瓦礫としか言いようの無いあの中に、行方不明の人が沢山いる。
身震いしながらチャンネルを変える。
屋上や屋根にに取り残された人を、ヘリコプターで吊り上げる。
吊り上げられた人の体と隊員の姿に思わずほっとする。
自然の災い、だがむご過ぎる。テレビの画面の前で息をつめていた。
今回の災害を出来るだけ書いて見ましょう、との
先生の提案で、気持ちを寄せる意味でも、もう少
し綴っていきたいと思っています。・・・つつじ
女性が強くなってもやっぱり用意する側の自分と待つ夫になっている。これは日本のかたちなのですね、海外ではもう少し違うようです。
でも勝家はテレビをかけずに向き合って食事を楽しんでいる様子がうかがえます。良いご夫婦
こういう何げない風景が突然失われる悲しさは言葉にできません。日常の小さな不満さえ幸せと気付かせてくれるすてきなエッセイ・・・。
今後も期待していますよ。
日常にある小さな幸せ、忘れがちですがこの辺で立ち止まる事も大切ですね。
でも、分かっていても、食事の用意をする事よいもテレビが見たかった私、反省です。