つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ ピアノ

2020-07-23 09:57:52 | 楽しい仲間
エッセイ ピアノ  課題 【憧れる・惑う】 2014・5・23
 
 白いペンキの柵の中に、マーガレットの花がゆれている。
家の中からクラシックのピアノ曲が聞こえる。
ふっと子供のころをを思い出し、懐かしい気持ちになった。
学校の帰り、板塀をめぐらした、しもたやと呼んでいた落ち着いた家並みを歩いた。
地味な家ばかりの中に、黄色い壁に、垣根の低いハイカラな家があった。
眩しい日差しの、5月頃だったかもしれない、家の奥からレコードが聞こえ、庭に真っ白い花が咲いていた。
花びらのはっきりした菊の花に似ていた。
誰かが「マーガレットって言うんだよ」と言った。
その頃イギリスのマーガレット王女がニュースになったり、アメリカの人気子役マーガレット・オブライエンの事も話題になったりしていたので、子ども心に、白い花のマーガレットっていいなと思った。

 若い頃、どんな家に住みたいかなどと友人たちと話し合ったことがあった。
まだまだ家を持つなどとは考え着かない頃だったが、ある人は広い庭にブランコを置くとか、大きな三面鏡が欲しいとかいろいろだった。
私はしゃれた洋風の、居間にピアノが欲しい、白いレースのカーテンとミルクティーの香りに包まれて、庭には多分マーガレットが咲いているなどと言ったような気がする。
ピアノを弾いて楽しむことは思い浮かばなかったが、家にピアノがあるのは憧れだった。

 子供が幼稚園に通っていた頃、若いお母さんと友達になり、よくお宅にお邪魔した。
美大の時結婚したとか、まだ学生のような雰囲気で、木造の借家に住んでいた。
油絵を描くご主人の大作が飾ってある直ぐ側のガスレンジで、焼きそばなどを作ってご馳走してくれた。
赤ちゃんをあやしながらロマンチックな話をする彼女も、家事だけは苦手らしかった。
部屋の隅にある黒いピアノの蓋の上には物が載り、足元は畳まない洗濯物が山積みになっていた。
今、あのピアノの蓋を開けているだろうか。



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