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つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

弟に

2024-12-02 09:29:59 | 楽しい仲間
   2人姉弟の私、弟が療養中なので、今まで書いたエッセイを
   何点かプリントして、お見舞いに持っていきました。

   かき氷 課題【箸・ナイフ・フォーク】              

 ミンミンと、セミが鳴いている。
 真っ青な空に入道雲、首筋に汗が出る。
 かき氷が食べたくなった。
 時々「氷」と書いた小さな旗を見かけるが、
 大体冷房の効いた店の中で出している。

 子供の頃、おシンさんの店の、葭簀の影の縁台で食べたかき氷が懐かしい。
 私の育った所はのんびりとした田舎、
 国道とは名ばかりの、砂利道が町の真ん中を走っている。
 たまに車が通ると、乾いた土埃がたった。
 夏休みになると遠くの方から、鐘の音をならしながら
 自転車に乗ってアイスキャンディーを売りにくる。
 大人の話ではここまでくるうちに、半分も解けているから損だといっていた。

 お盆になると、お客さんが来て少し賑やかかになる。
 仕事が休みになった大人たちは、おシンさんの店に買い物に行く。
 おシンさんの店は何でも売っている。
 鍋や麦わら帽子などが天井近くにぶら下がり、
 蚊取り線香やハエ取り紙などもある。
 棚には茶碗やしゃもじなどが埃を被って並んでいる。
 土間には近くの人が持ち込む野菜もあったし、
 祭りに使うものや盆飾りなども売っている。
 勿論、飴や煎餅もガラスケースの中に納まって、駄菓子のハッカや籤もある。
 おシンさんはごちゃごちゃした店の中の一番目立つところに
 かき氷の器械を出し、手まわしでひっきりなしに氷をかく。
 足の付いた乳白色のガラスの器に、うず高く氷を盛ってシロップをかけ、
 「シャジは自分でとって」という。
 スプーンのことをシャジという。
 おシンさんはケチで氷を細かくかくので、
 スプーンを入れシャキシャキとかき回すとすぐに溶けてしまう。
 子供のいないおシンさんは、背の小さい夫と二人で暮らしていた。
 いつも地味な着物に黒い前掛けをかけ、あんまり笑わない。
 男の子達はおシンさんの店に行くとき、
 「オシンツクツクに行く」と言っていた。


 



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