エッセイ お歳は? 【自由課題】 2017年6月23日
何時も立川駅前からバスに乗る。
乗り場の先に3人掛けのベンチがあり、大抵お年寄りが座っている。
その日の午後、私の前に年配の女性が二人ベンチに座って、周りの車の音や町の騒音に負けないような大きな声で話していた。
「やっぱりリックが一番ですね、どちらで買われたのですか?」とデパートの袋を沢山抱えた一人が聞いた。
「孫からのプレゼントです」と赤い杖を持ってる一人が言った。
「私は息子から、何とかのブランド品だそうです、お元気そうですね」
「お陰様で、時々はお医者様にも行きますが」
「私はどこも悪いところがなく、何のお薬も飲んでいないのですよ、お年はお幾つ?」
「私は・・・」、それを聞いて一つ若い年を言った。
それから、荷物を多く持った人は、毎日スクワットをしている、片足立ちも出来る、大きく前かがみも出来る、いかに周りの人より若く見られるか、年齢に関することを自慢げに話した。
そして最後に 「かははっ」 とも言うような笑い声を上げる。
「今日はお刺身や何やら、こんなに荷物が増えて、主人は近くのスーパーのお刺身では食べないのです、お刺身の時はデパートの地下に買いに来るので大変です、かははっ」
「かははっ」の後、少し値段が張るが美味しいお店がどこだとか、そこに行ったらどうしたとか、またまた自慢話は続いた。
「昔は吉祥寺に住んでいましたの、あそこは静かで、デパートも近くにあって本当に良いところです」
赤い杖の人は、散々自慢話を聞かされたお返しのように、
「そうですか? 私は阿佐ヶ谷に住んでいましたよ」
吉祥寺より阿佐ヶ谷の方が都心に近いのよと自慢するように、顎を上げて言いた。
高齢になると年齢を言いたがり、聞きたがる。
私はいま暫くは言いたくない。
先生の講評・・・人物の見方と描写が辛くてよい。
健康、グルメおたくの高齢者の心理をつかんでいる。
つまり、通俗を通俗と認識するシャイな目がある。
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