つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ  5百円

2015-11-06 13:37:08 | エッセイ

エッセイ 5百円

昨年秋、体調をくずして家事をおろそかにしていた。
気分のいい時は掃除機をかけたが、網戸やガラスが汚れている。

テレビの通販番組を見ていたら、いいものを見つけた。
蒸気が出て、汚れを蒸して浮き上がらせるという。
迷った末に注文をした。

派手な印刷の箱が届いた。
元気な時なら早速取り出して試してみるのだが、箱を見ただけで億劫になった。

暮れの掃除をしなければならない時期に、あの掃除機を取り出した。
要するにスチームアイロンを掛ける要領だ。
汚れを浮き上がらせて拭き取る。
だがセットの布は少なく、何度も汚れた所に同じ面を当てる。
これなら熱いお湯で絞った雑巾を使うのと変わりがない。
普段からきちんと掃除をし、その先の汚れが気になる人用だ。
組み立ても面倒だし、慣れない掃除に、終わった後は「もういいや」と気持ちが萎え、使わなくなった。

夏の初め、二千円の値札をつけて、知人のガレージセールに出したが売れなかった。

いつも乗っているバスから、二軒のリサイクル店が見える、行ってみよう。
夫に、帰りカラオケに付き合うからと掃除機の包みを渡した。
折角だから、私の上着とスカートも持っていった。
よそいき用にと、バーゲンで買った物で、タグに元の値段も付いている。

最初に洒落た洋服だけを取扱う店に行った。
若い店員が慇懃に「十円です」という。
聞き間違いかと思って怪訝な顔をした私に、「中年の方の物はこの位です」とはっきりと言った。
バーゲンと言っても万のお金を出した。
「ええっ」。
洋服を紙袋に仕舞っているうちに夫は店を飛び出していた。

表で、大きな口を開けて笑っている。
「掃除機はいくらだったら売るの」
「千円以下だったら売らない」と答えて、次の店にいった。
そこでは「今、多いんですよ、五百円です」

「だから言ったろ」
何を言ったか分からないが、帰りのことを考えて五百円の硬貨を受け取った。

   
   課題 あいまい・明快
         
   
先生の講評  
     
 妻の行動を笑いながら、半ば冷やかす夫。
      夫婦の機微が描かれほほえましい。

      
                      
       
じのつぶやき ・・・「だから言ったろ」
                    
何を言ったか分からないが、・・・
                  いい表現だと褒めていただきました。               

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2015年10月 里山通信 | トップ | エッセイ スーパーシズオカヤ »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
笑わせていただきました。 (hiromi)
2015-11-08 23:42:05
エッセイの教室でも笑わせていただきましたが、また笑いました。いいですねえ。
笑わせるというのは難しいのですが、傑作ですねえ。
おかしいと感じるのは、同じような体験が私にもあるからなんです。
それを客観的に冷静に見つめて淡々と書けるというところがすごい!ですね。私が書けば、たぶんその時の衝撃と怒りの充満した文になっていたと思います。
返信する
分からなくなりました。 (霧島つつじ)
2015-11-12 21:39:53
hiromiさま
コメント有難うございます。
「10円」は衝撃的でした。
「中年をバカにしてる」。
「横文字の古着や」、なんて、昭和には無かった。
返信する

コメントを投稿

エッセイ」カテゴリの最新記事