風に吹かれすぎて

今日はどんな風が吹いているのでしょうか

2010年03月30日 | 雑感
風が冷たいです。
桜というのは不思議な花です。
春の訪れとともに一斉に咲き、一斉に散ります。
花吹雪を見れば、長く暗かった雪の季節を思い返すとともに、爛漫の春に胸がときめきます。
咲くと散る、冬と春、相反するものを一時に表現し尽くすのが桜なんでしょう。
それがまた、日本の風土でなければできない表現の仕方のような気がします。
寒さと暖かさが微妙に交じり合う日本の春です。

また、桜が咲き誇る姿は妖艶です。
いつまでもその姿を愛でていたいという人の心をあっさり裏切って、さらっと散ります。
バラも菊もボタンもきれいには違いありませんが、このさらっと感を出すのは桜だけです。
惜しみなく咲いて、惜しみなく散ります。
この惜しみのなさが、桜の真骨頂です。

「浮世から 何里あろうか 山桜」 山本常朝

山本常朝という人はあの有名な「葉隠」を書いた人です。
その人の句です。
誰が見ようが見まいが、咲くべきときに、咲きべきところでひっそり咲き誇る山桜。
その姿がぴったり日本人の美学に合ったわけです。

浮世のほうでは、浮世の都合を中心にあれやこれやを誰がこうしたああしたとケンケンガクガクしているわけですが、
一切そんなことには係わらず、山中に咲く一本の山桜。
まさに「天上天下唯我独尊」の境地を昔の人は桜の木に見たのかもしれません。