![Photo Photo](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/d3/aee8feb00826fc968fb1bebf05571919.jpg)
Photo by Chishima,J.
(オオワシ亜成鳥の飛び立ち 2006年3月 北海道根室市)
少数のオジロワシは北海道で繁殖・越夏するが、大部分の個体とオオワシは冬期に北方より飛来する。流氷の根室海峡でスケトウダラ漁船団のおこぼれに群がったり、海辺で海ガモ類を捕らえたりしている姿は、これらの鳥を「海ワシ」と呼ばせるのにふさわしい光景といえる。
オジロワシ(成鳥)の飛翔
2006年3月 北海道根室市
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Photo by Chishima,J.
ところが最近、風蓮湖など氷下漁業が盛んでその恩恵に預かれるような地域を除くと海の近くで見られる海ワシ類の数が少ないような気がする。十勝でも渡来後しばらくは海岸部や十勝川下流域で力尽きたサケなどに付いているが、それらが減ってくる冬の後半にさしかかると、ワシに出会う機会もぐっと少なくなる。
オジロワシ(若鳥)
2006年3月 北海道十勝川中流域
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Photo by Chishima,J.
その一方で、同じ時期に山間部で見かける「海ワシ」の数はずいぶん増えてきたようだ。流氷や砂丘海岸ではなく、針広混交林やダム湖を背景に飛ぶオオワシやオジロワシの姿に、最初は違和感を覚えたものだが、近年では当たり前の風景になってきた。こうなるとこれらは海ワシなのか、それとも山ワシということになるのか少々複雑だが、これらの個体の主要な餌資源はエゾシカである。
山間を飛ぶオオワシ(若鳥)
2006年3月 北海道
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Photo by Chishima,J.
エゾシカ
2006年3月 北海道根室市
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Photo by Chishima,J.
エゾシカは急激な個体数の増加による林業や農業への被害が各地で問題となっているが、それらを反映した狩猟・有害獣駆除による残滓や越冬中の餓死個体の増加は、ワシたちに厳しい冬の間の食糧を提供することになる。厳冬期にも関わらず豊富に供給される動物性タンパク質に目をつけたのは海ワシ類だけではないようで、ワタリガラスも山間部へ多数飛来しているし、土着のクマタカもシカ残滓を利用しているそうである。
ワタリガラス
2006年3月 北海道
「コア…」、甲高い声が谷間に響くと2羽のくさび形の尾をしたカラスが現れた。
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Photo by Chishima,J.
クマタカ(成鳥)
2006年3月 北海道
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Photo by Chishima,J.
これだけで終わってくれれば、ふんだんに利用可能な餌生物をめざとく見つけ、習性を変化させた野生動物の逞しさともいえるのだが、残念ながらそうはいかなかった。有名な鉛中毒の問題である。すなわち、残滓の中に残留している銃弾の鉛により、ワシたちが中毒を起こし、無視できない数が死んでいる問題である。鉛弾の使用規制や残滓の回収強化などの策が講じられてはいるが、根本的な解決にはまだ時間と努力が必要なようだ。
1980年代には知床のスケトウダラ漁業という人間活動に依存していた海ワシたちは、1990年代の水揚げ量減少という人間側の都合によって各地に分散するようになり、その過程で山間部の越冬地においてやはり人間活動によって生じたシカ残滓を発見し、結果鉛弾という人間側の事情により死亡する事態に至っている。その精悍な顔つきから、自然界における孤高の存在的なイメージで見られることがあるオオワシやオジロワシも、現代の日本では人間の動きに大きく影響されながら冬を越している。
オオワシ(成鳥)
2006年3月 北海道
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Photo by Chishima,J.
オジロワシ(若鳥)
2006年3月 北海道根室市
![Img_3739 Img_3739](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/ac/36fe2143dad059909b2ef4a145916ff3.jpg)
Photo by Chishima,J.
(2006年3月19日 千嶋 淳)
鶴居村付近を流れる、釧路川支流の「久著呂川」という川があります。
語源なんですが、「上流の崖に大きな鳥(クッコロカムイ)が棲んでいた」ということらしいのです。
語源自体が確証性の低いものらしいですが、河川のみに依存するオジロワシ?それとも、昔はオオワシが営巣してた?ひょっとして、イヌワシのこと?想像はつきません。
ちしまさんならどう考えますか?
「棲んでいた」という表現が微妙で、繁殖していたとも、冬などによく止まっていたとも解釈できます。
繁殖で考えると、オオワシの現在の繁殖地はサハリン北部やカムチャツカなどかなり北に位置していることと、樹上に営巣することから可能性は低そうです。オジロワシは、ツンドラなどでは崖の棚や岩礁の頂上などでも営巣するそうですが、北海道で知られている巣はすべて樹上です。ただし、出入りしやすいために断崖や斜面に生えている木が多いです。また、内陸での繁殖については、現在でも海からかなり離れた山中で大きな河川やダム湖で餌を捕りながら繁殖しているつがいもいくつかあります。したがって、オジロワシはありえそうに思います。ただ、昔のことですのでbotaさんの言うようにイヌワシや、あるいは想像を逞しくすれば現在は道北でのみ繁殖するワシミミズク(崖の岩棚で営巣)だったりして、とも思います。
冬などに止まっていたとなると、これはもう、いろいろ考えられます。上記にあげた種以外でも、クマタカが断崖上の大木を止まり木にしていたのを見たことありますし、想像ですが満月の晩にシマフクロウが崖の上で鳴き交わすのが目に浮かぶようです。
と、ここまで書いて「コタン生物記」(更科源蔵・更科光 著)を繰ると、「釧路の雪裡コタンでクッコル・カムイ(岩棚を支配する神)と呼んでいる、狩りの獲物をさずけてくれる岩棚の間にいるフクロウがいる」との記述がありました。更科もワシミミズクの可能性を指摘していますが、「空知では鳥ではあるがフクロウではなく、(中略)帯広では白いウサギのような獣で、(中略)クッコル・カムイの正体もはっきりしない」と結んでいます。
語源なんですが、「上流の崖に大きな鳥(クッコロカムイ)が棲んでいた」ということらしいのです
以前アイヌ民族学の学芸員に聞きましたがクッコロカムイはフクロウやワシなど実物の鳥を意味するのでなく伝説の大きな鳥であるとも聞きました
ちなみにワシミミズクはクッコロカムイ,コタンコルカムイを使わず、フクロウをあらわすイソサンケカムイ(獲物をおろす→獲物がいるのを知らせる)と呼んでいるところもあるようです