
(NPO法人日本野鳥の会十勝支部報「十勝野鳥だより184号」(2014年3月発行)掲載記事「海鳥を読む」を分割して掲載)
「海鳥の行動と生態-その海洋生活への適応」(綿貫豊著、A5版、317ページ、生物研究社、2010年)
海鳥を観察・識別するだけでは物足りなくなり、広い海でどんな暮らしをしているのか知りたくなったら読みたい本。日本初の海鳥の専門書で、起源から飛行、潜水、海上での分布や餌の探し方、生活史や人間とのかかわりまで幅広い分野が網羅されている。600近い文献を渉猟しただけでなく、著者自身の研究成果も随所に盛り込まれており、またバイオロギング(生物に記録計を装着して行動を調べる学問)にもとづく潜水や採餌行動に多くの紙面が割かれているのは、黎明期からその分野の第一線で活躍してきた著者ならではといえる。専門書ではあるが文章は比較的平易で研究の裏話的なコラムも散りばめられ、すらすら読める。クロアシアホウドリやハシブトウミガラスなど、十勝沖で馴染みの深い海鳥も多く登場する。同じ著者による「ペンギンはなぜ飛ばないのか―海を選んだ鳥たちの姿」(127ページ、恒星社厚生閣、2013年)は、翼の形と潜水行動を軸に海鳥の行動を解説しており、文章もより平易で手軽に読むことができる。
(2014年3月 千嶋 淳)
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