tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

労働時間短縮、浮いた残業代の行く方は?

2017年11月02日 10時26分58秒 | 労働
労働時間短縮、浮いた残業代の行く方は?
 政府の働き方改革の2つの目玉「労働時間短縮」と「同一労働・同一賃金」について、このブログでは労働時間短縮大賛成、同一労働・同一賃金は日本企業・社会では出来ないと述べてきています。

 今回は労働時間短縮の問題です。この問題は当然、残業時間の削減が大きな課題になるわけですが、最近話題になっているのが、「成果が上がって、残業時間が減れば、企業としてはその分残業代のコストが浮く。さてそれをどうする」という問題です。
 サラーリーマン社会では「残業代が減ったら、生活どうする」という話も昔から言われていました。

 素早い企業では、すでに、残業代削減分は賃金に上乗せするといった解決策を打ち出しているところもあるようですが、これは大変結構な話です。

 残業減には色々な効果があります。まずは、従業員個人の自由時間が拡大することで、これが個人の人生・生き方にとっては最大の意義でしょう。

 企業社会から見れば、当然、経済的意義が問われるわけですが、
ケース1:従業員の意識が変わって、時間内に仕事を片付ける努力をすることになり、職場が引き締まった。
ケース2:仕事の量は変わらないので、納期が遅れたり、員数を増やさなければならなくなった。
ケース3:サービス残業が多かったので、残業が減ってもコストは変わらない。
などなどいろいろでしょう。

 ケース3は論外ですが、多くの企業では、ケース1とケース2が混在するという事になるのではないでしょうか。

 これを生産性の見地から見てみれば、ケース1は、従業員の意識が変わって、労働時間短縮分だけ生産性が上がったという事です。以前私の働いていた職場で、仲間達が作った「いろは歌留多」の中に、「う:うすのろの残業」というのがありましたが、古き良き時代の話です。

 ケース2は、生産性の上がりにくい職場でしょう。機械のスピードに関わる仕事、対個人の仕事(販売、サービスなど)、相手のペースに合わせなければならない仕事、などなどです。それでも生産性向上の余地は必ずあります。

 日本企業はこうしたもろもろの条件に合わせて、それなりの生産性向上の活動をしてきました。労働生産性と言えば「1人当たりの生産額(量)」ですが、厳密には、1人時間当たり」という事でしょう。

 伝統的に「5S」「「QCサークル」「カイゼン」「TQM」などなど、「7つ道具」や「動線管理」「職場レイアウト」「職務管理(仕事の与え方、こなし方)」・・・といったいろいろなものを使って、きめ細かい生産性向上努力を積み上げてきました。

 成功した企業、あまり成功できなかった企業、いろいろあったでしょう。どちらにしてもそれは「個々人の意識」「職場の在り方」「企業の経営姿勢」などによって決まるようです。

 畢竟、労働時間短縮は「生産性向上」によってはじめて可能になるのです。
 多くの職場が存在する企業において、労働時間短縮の目標のもとに生産性が上がり、残業時間が削減されたら、それは生産性向上の成果として、従業員に配分されてしかるべきものでしょう。
 そして、配分の仕方は、それぞれの企業で、労使が十分話し合って、納得のいくものにすることが大変重要です。