tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

物価安定の時代: 何がそうさせるのか?

2015年06月24日 12時32分53秒 | 経済
物価安定の時代: 何がそうさせるのか?
 アメリカでも日本でも、中央銀行が年率2パーセント程度のインフレ(消費者物価の上昇)がいいということで、いわゆるインフレターゲットが言われます。
 かつてはインフレターゲットといえば、高騰する物価を抑えようと所得政策などの中で低いターゲットを決めたのですが、今や、上がらない物価を何とかしてそこまで上げようという目標になっているようです。世の中、逆転です。

 そこでまず、一番身近で解り易い日本の場合を考えてみましょう。日本でなぜインフレが起こり、さらに物価が上がらないデフレになったかが解れば、世界的低インフレ傾向理解の一助になるはずです。

 終戦直後の絶対的な物資不足の時代は別として、高成長時代から第1次オイルショック後迄の高インフレは基本的には賃金インフレ、「賃金上昇、賃金コストアップ(購買力もアップ)、物価上昇(インフレ)、物価上昇を理由に更なる賃上げ、インフレ昂進」という、いわゆる賃金・物価のスパイラル(ホーム・メイド・インフレ)でした。

 第一次オイルショックで日本の労使はこうしたインフレのメカニズムに気付き、第二次オイルショックの時は、賃上げを抑えてインフレを招かず、結果「ジャパンアズナンバーワン」といわれた良好な経済状態を実現しました。

 その頃、アメリカやヨーロッパの主要国は、原油値上がりによる物価上昇を賃上げでカバーしようとし、軒並みスタグフレーション(当時先進国病といわれた)に陥って苦しんでいました。

 主要国は(生産性向上を越える)賃金の上げ過ぎはインフレ・スタグフレーションを招き、経済不振の原因と見極め、労働組織への対策を含め、賃上げ抑制・インフレ退治に奔走しました。

 一歩先を進んで経済の安定と繁栄を実現していた日本に対しては、賃上げと同じ効果のある「円高」を要請、日本は要請に答えた結果、円は二倍に切り上がり、日本は賃金も物価もドル建てで2倍になって、世界で一番賃金も物価も高い国になりました。

 世界で一番賃金も物価も高い国で何が起きるかというと、国際競争力回復のために。賃金と物価を下げることです。こうして日本経済はデフレになり、「失われた20年」を経験することになりました。
 
 日本の場合、デフレの原因は明らかで、それは「円高」です。
 黒田日銀の2度にわたる金融の異次元緩和で、円は$1=¥120に戻り、デフレは解消し、日本経済は安定成長路線に戻りました。

 常に真面目に実体経済の運営をしている日本では、インフレの原因も、デフレの原因も、比較的簡単に特定し、理解することが可能です。
 では、今の世界的な低インフレの原因は何なのでしょうか。次回考えてみましょう。