tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

正規・非正規の雇用・賃金構造

2015年06月05日 12時24分25秒 | 労働
正規・非正規の雇用・賃金構造
 日本の格差社会化が統計数字上も現実になり、その要因としての非正規労働の問題が広く認識され、改正派遣法が国会でもめ、日本社会にとって望ましいのはどのような雇用構造なのかが改めて模索されています。

 戦後、日本の経営者は、法律や制度の規定を越えて、日本社会に馴染むような雇用の在り方を模索し、社会の安定のためにそれを実践してきたのではないでしょうか。そして今、日本の経営者は何を考えているのでしょうか。

 毎月勤労統計と、労働力調査から、此の所の、正規労働者、非正規労働者の雇用、賃金構造を瞥見しますと、こんなことになっているようです。

 統計が違えば調査のベースも違い、言葉の定義も違います。しかし「大数の法則」に従えば(最近ならビッグデータ)基本的な流れは掴めるでしょう。

 労働力調査から近年の労働力の中の正規、非正規の動きを見ますと役員を除く雇用者の中で、非正規従業員の割合は2010年からの年々の動きで、34.3%、35.1%、35.2%、36.6%、37.4%(2014年)となっていて、円安効果で景気が回復し始めた2013年から増加のペースが速くなっています。

 これは言われていますように、景気回復による採用増が非正規中心だったためで、2013、2014年は正規従業員数は減っています。
 景気回復の永続性が信用できなかった企業としては、当面非正規を増やして対応したということかもしれません。今後この動きが逆転すると予想したいところです。

 一方、正規と非正規の賃金水準の違いは、毎月勤労統計でみることが出来ます。最近時点、この4月度の調査結果を見ますと、一般労働者平均給与総額349,440円に対し、パートタイム労働者の現金給与総額は98,333円で28.1%です。ちなみに、2010年4月のこの数字は、345,131円と94,956円で、27.5%、僅かな格差縮小です。

 勿論詳しく見れば、労働力調査の非正規従業員と毎月勤労統計のパートタイム従業員の範囲は違います。労働時間も違うでしょう。比較は正確とは言えませんが、この辺りが統計の限界です。

 重要なのは何時も触れますように、この非正規、パートタイマーの中には、家計補助の立場の人と、世帯主の立場の人がいるという現実です。
 格差問題は家計単位のものですから、主要な問題は世帯主で非正規の雇用者ということになります。この問題は、派遣法をどう改正しても、同一労働・同一賃金を叫んでも解決されません。

 解決の方向が見出せるとすれば、現実の雇用の場で、如何なる雇用政策、採用政策が行われるか、つまりは経営者の考え方と行動如何ということではないでしょうか。
 いつも書いておりますが、企業経営の本当の目的は利益追求ではありません。社会の役に立つことです。

 戦後の経営者は立派だったが、最近の経営者は・・・・、などといわれないように、日本経済の正常化の中で、マネー資本主義に引きずられず、日本の経営者本来の高邁な経営理念に立ち帰って、より良い日本社会の明日のために企業活動を展開して頂きたいと思っています。