tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

トヨタの新型株式と集団的自衛権論議

2015年06月18日 09時53分07秒 | 経営
トヨタの新型株式と集団的自衛権論議
 トヨタの新型株式と最近の憲法論議(集団的自衛権)と並べてみても、中身も広がりも全く異なるものです。
 しかし、今の与野党の論戦を見ていますと、何か、トヨタの新型株式発行についての2つにわれた投資家の態度とよく似ているなと考えてしまいます。

 先日の株主総会で発行が決まったトヨタの新型株式については、「マネー資本主義に一石、トヨタの新型株式」で書かせて頂きましたが、反対が25パーセントもあったそうで、殆どは投機型のアメリカの投資業界からでしょう。
 アメリカ流投機型の株主の主張点は、「物言わない」株主が増え、経営に緊張感がなくなり、企業のためにならない、というもののようです。

 実はこういう主張をするベースには、企業は株価の動向を見ながら常に緊張して経営をすべきという論理があります。現実のそうした投資家の手法を見れば、安定株主を少なくし、投機的行動を中心に、株価の変動を増幅し、キャピタルゲインの極大化を狙うというもので、そうした株主の態度がこそが企業経営に緊張感を持たせるというものです。

 一方トヨタの新型株式は、企業を応援してその安定した発展を期待して株を持つという、企業を信頼する考え方に立つものでしょう。企業の絶えざる努力への信頼感と応援です
 両者の間には、企業経営と出資についての基本哲学の相違があります。そして、企業に本当に役立つのはどちらかという点で、それぞれの哲学を主張し合うわけです。

 集団的自衛権が憲法に違反するかという問題も似ています。表面上は憲法解釈の問題ですが、その背後には、(個別自衛権は当然の問題とした上で)、今日の国際情勢では、日本が軍事攻撃を受ける可能性が高いから、集団的自衛権でそれに備えるべきという意見と、日本は平和主義の国だから、あらゆる努力で軍事衝突にならないようすべきで、今の世界ではそれは可能であるという、大きく2つの、時局観、歴史観があるようです。

 そこには基本的な世界観の相違があります。どちらが正しいかという答えは現状では誰にも解らないことなのではないでしょうか。

 経済も政治も、模範解答の無い問題に、より正しいだろうと国民が判断する答えを出していくしかないのです。違った考えを理屈付けし、いくら張り合っても正しい答に行きつくか保証はありません。

 答えは歴史が出すでしょう。そして、その時代の日本人が平成27年の結論をどう評価するでしょう・・・?
 トヨタの株主は結論を出しました。集団的自衛権はこれからです。平成27年に生きる日本人の「知恵」が、今、問われているのでしょう。