tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

付加価値の分配で社会の様相と将来が決まる

2015年06月16日 10時27分27秒 | 経済
付加価値の分配で社会の様相と将来が決まる
 前回、付加価値は人間生活のベースで、付加価値を増やすことが経済成長、まずその実現が大事、そして、その分配の在り方が大変重要で、今そこに問題があるという趣旨のことを書きました。

 付加価値の分配には2つの側面があると思います。
① 労使の分配の側面、付加価値を「利益と賃金」にどう分けるかです。よく使われる指標は「労働分配率」(人件費/付加価値)です。
② 政府と民間の分配の側面、付加価値の内どのぐらいを政府(中央・地方)が「税金・社会保険料などで徴収し、政策的に使うかで、「国民負担率」(税・社会保険料/国民所得)がその指標です。

 まず労使の分配の問題を考えてみましょう。利益への配分が少な過ぎると企業は発展できません。その結果、経済成長も止まります。不況で雇用も賃金も低迷です。
 逆に賃金への配分が少ないと、消費が低迷して不況になり、企業も困ります。
 どちらが多すぎても、少なすぎても、経済はうまくいきません。上手な分け方が出来るかどうかは、労使の交渉によって決まります。労使が賢明でなくてはなりません。

 更に、賃金の個人配分という問題があります。個人配分の格差が大きいと、格差社会(最近の非正規雇用の増加の結果のように)になって、社会が不安定になります。これには、雇用制度や賃金制度が関わります。ですから労働法制や賃金制度の問題も大事です。

 次に、政府と民間の配分の問題を考えてみましょう。国民負担率は北欧諸国では高く、欧州主要国がそれに次ぎ、アメリカは低く、日本はその中間にあります。
 しかし日本では、政府は不況対策に金を使い、高齢化の負担に呻吟し、長年の財政赤字で国民からの借金(国債発行)を積み上げて大きな問題になっています。

 消費税増税で借金を減らそうとしますが、なかなか巧くいきません。政府と国民の真剣な対話が必要(かつての土光臨調のような)ですが、理性的、論理的な対話はなかなかできないのが現状です。このままでは国の先行きが危ぶまれます。

 企業でも、国でも、毎年、付加価値を創り、それを労使間、従業員間、そして、国民と政府の間で分配しているわけですが、その分配が「巧くいっているかどうか」が、その国や企業の将来に大きな影響を持っているのです。

 「今日の付加価値の分配の在り方が、国や企業の明日に大きく影響する」のです。国民経済、企業経営の健全な発展のためには、付加価値の分配が極めて重要な問題であることに十分注目していかなければ、付加価値問題の真の理解には至らないようです。

○「 労働分配率論議」、「政府の信用」をご参照ください。