tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

ゴルディロックスとアメリカ経済

2015年06月20日 09時28分00秒 | 経済
ゴルディロックスとアメリカ経済
 アメリカの経済、特に最近の雇用問題を中心として、ブルームバーグ・ビジネスが「ゴルディロックス経済論」を持ち出しています。
 キャリア開発の分野では「セレンディップ」などという言葉も流行りましたが、世界の童話がこうした専門分野でテクニカル・タ-ムとして使われのは何か微笑ましいものを感じさせます。

 ゴルディロックスというのはイギリスの童話に出て来る女の子の名前だそうで、その子が森の中の熊の一家の小屋に入って、色々な暖かさのスープや、色々な座り心地の椅子、色々な寝心地のベッドを発見、一番自分に合った暖かさのスープを飲み、座り心地のいい椅子に座り、寝心地のいいベッドで寝ていたら、家の主人の熊の家族が帰って来て、慌てて逃げ出すのだそうです。

 ところで、マスコミや経済評論家の多くはFOMCの声明を手掛かりに年内の利上げの可能性を言い、2回の利上げの可能性もという意見もあるようです。
 アメリカの経済成長率が今年は2~2.5パーセント程度が見込まれ、物価上昇率は目標の2パーセントを1パーセントほど下回っていますが、失業率も5パーセント強まで下がり、世界でもアメリカ経済は元気といわれ、次第に「経済の居心地良い状態」に近づいているということなのでしょうか。

 この居心地の良い経済状態「ゴルディロックス経済状態」が利上げの条件ということになるのでしょう。
 一方、大変慎重なイエレン議長の発言から感じられるのは、利上げのためには、雇用情勢のもう一息の改善が必要で、利上げまでには未だ時間がかかるでしょうし、また利上げといっても極めて緩やかなものになるといった慎重な見通しです。

 やはり、労働経済畑出身のイエレン議長にしてみれば、華やかな金融市場の認識とは異なり、「ゴルディロックス雇用水準」は、失業率4パーセント台という感じなのでしょうか。
 何か、アメリカ経済は立ち直った、ドルは高くなるべきだと言いたい人たちもいるのでしょうか、利上げを催促するような論調が見られなくもないような状況の中で、イエレン議長の慎重な発言が目立つように感じもしてきます。

 いつも指摘しますように、アメリカ経済が立ち直ったと言っても、経常赤字が解消していくわけではありません。国内需要が回復すれば、赤字幅は増大するでしょう。
 経済成長率、インフレ率、失業率がゴルディロックス状態だと言っていたら、外から熊の親子が帰ってきて(経常赤字の増大)、慌てて逃げ出さなければならなくなる事のないような、舵取りが、本当は必要なようです。