tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

今なぜ世界経済は不振なのか 3

2014年10月22日 11時22分38秒 | 経済
今なぜ世界経済は不振なのか 3
 前回指摘しましたEU、ユーロ圏の経済不振は矢張り深刻なようです。ECB(欧州中央銀行)が、マイナス金利(加盟国の銀行がECBにカネを預けた場合の金利がマイナス)というウルトラCの金融緩和政策で、何とか経済成長をと努力していますが、なかなか実効は上がらないようです。

 2002年ユーロが流通を開始したころ、1US$は0.9ユーロで買えました。ご祝儀相場と言えばそうかもしれませんが、ユーロの将来を期待して、ユーロの価値は高かったのです。

 しかしユーロ加盟国が広がり、南欧の国々や東欧の国々、地中海の島国などが加盟し、ユーロの高い価値を満喫するようになると事情は変わってきました。
 ラテン系の国々は国民性が陽気ということもあるのでしょうか。国力以上の経済生活をするようになり、経常赤字の国が増えて行きました。
  ユーロの価値が次第に落ち、2008年には1ドルを買うのに1.55ユーロが必要といった状況になっています。

 ギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリアなどの経常赤字が問題になり、大幅黒字国のドイツがそれを補填するといった状態になって、ドイツから苦情が出、日本の新聞なども報道したのは2010年頃です。

 このユーロ安は、EU内部の不協和音にはなりましたが、お陰でユーロは値下がりし、黒字国のドイツの競争力は強まり、日本でも、VW、BMW、ベンツなどが割安になり、ドイツ車が随分増えたなと感じた方は多いと思います。

 その後、ユーロ圏でも論議が重ねられ、IMFの指導などもあって、上記の赤字国は努力を重ね、ほぼ黒字に転換し、ユーロ圏自体は大幅黒字を回復しました。
  ギリシャもスペインも、イタリアも経常赤字が消えて、漸く健全化の方向が見え、一安心という時、マネー資本主義の当然の帰結として「ユーロ高」が起きてきました。
 今は$1=1.27ユーロほどでしょうか。2008年ごろに比べれば2割以上のユーロ高です。

 日本が日銀の政策転換で2割の円安になり、日本経済が息を吹き返したのとちょうど逆です。2割のユーロ高は、ユーロ経済圏のコストと物価を一律に2割高くしたわけですから、ユーロ圏がデフレ状態になる可能性は当然高くなります。

 経常赤字国が生活を切り詰め、経済の健全化を果して、消費と貯蓄→投資のバランスを回復し、経済成長路線を取り戻すことはIMFの指導理念でもある大変結構なことのはずですが、真面目にそれをやると「通貨が切り上がって」経済が「成長」ではなく「デフレ」になるという、経済の本来から言えば全く困ったことが、一般的な経済現象として発生するのが現在のマネー資本主義経済の実状です。

 こんなことで世界経済はいいのでしょうか、何故こんなことになるのでしょうか。長くなるので次回にします。