tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

伝統文化、日本的経営、賃金制度:1

2014年10月10日 13時30分05秒 | 経営
伝統文化、日本的経営、賃金制度:1
 ニュースを聞くたびに奇妙な違和感を覚えるのは、安倍総理が、景気対策の一環という意識なのでしょうか「成果主義賃金」を日本の賃金制度の基本にしようと本気で主張していることです。

 本来賃金制度などというものは企業の労使が考えることで、総理大臣が賃金制度に口出しするなどというのは世界でも前代未聞なのではないでしょうか。

 それだけ、アベノミクスの第3の矢が影薄く、景気停滞の様相が気になって焦りが先に出ているということかもしれませんが、やはり一国の総理なら、国民を信頼し、細かいことは国民や労使に任せて、本当に総理でなければできないことをきちんとやって欲しいとつい思ってしまいます。

 ご存知のように、日本文化の原点は「和」の精神で、これは縄文時代からの伝統で、聖徳太子の17条の憲法の第1条「以和為貴」にも率直に表現されています。
 企業経営の歴史で見れば、日本企業は、企業を人間集団として捉え、職務の集合体と考える欧米流とは全く対照的です。

 もう少し現場に即していえば、日本企業は、人を採用するとき「良い人」を採ろうとします。欧米では、担当職務に適切な能力を持った人を採るのが基本です。
 やはり日本は人間中心、欧米は職務中心なのです。これは伝統文化・社会意識の違いによるのでしょう。

 技術革新、経済発展の中で企業のとる行動を見ても違いがあるようです。欧米では賃金の高い産業や企業に従業員が移動していきますが、日本では、企業そのものが、先進分野の企業に変身していきます。
 かつて隆盛を誇った日本の繊維企業は、機能性繊維などの分野も開拓しながら素材産業、化学産業、電子産業、自動車部品産業の企業などに変身しています。

 何がこういう違いを生むのでしょうか。最も基本的なところまで論じていけば、日本的経営の基本理念は「人間中心」であり、欧米企業は、「経済活動は資本が中心」「人間は資本増殖の手段」という所にあるのではないでしょうか。

 今は、経済学者も、経営学者も、金融の専門家も欧米で学んだ人が多いですし、日本の伝統や文化につてはあまり関心を持たない方も多いようですから、欧米は進んでいて、日本は遅れていると思っている人も多いのではないかと危惧します。

 日本の企業や社会を良くするような賃金政策を考えるならば、やはり日本の伝統や文化、日本人の基本にある考え方を踏まえた論議をしなければならないのではないでしょうか。賃金問題のもその応用問題でなければならないと考えます。
 次回、成果主義の問題点について見て行きたいと思います。(以下次回)