tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

ユーロ相場下落の読み方

2010年05月19日 09時27分08秒 | 経済
ユーロ相場下落の読み方
 ユーロの相場が大幅に下落して、世界経済の大変不安定な状況をもたらしていることが報道されています。
 GDPで言えば、僅かユーロ圏全体の2.5パーセント、日本の神奈川県ぐらいの経済規模の国の経済問題が、何故世界経済を不安定にするほどの影響を持つのか、実体経済の規模をベースに考えれば、奇妙な話です。

 もちろん、ギリシャだけでなく、PIIGSなどといわれるように、他の国に波及する心配が言われたりしていますが、ただ心配していてもしょうがないことで、EUやIMFも、当該国も、世界経済に迷惑をかけないように出来るだけ早く手を打って世界中を安心させるのが筋でしょう。

 世界経済が安定してしまってはビジネスチャンスがなくなる国際投機資本にとっては、何とか不安を煽って、相場を乱高下させる事が多分目的でしょうから、まさに思う壺かもしれませんが、実体経済の上に成り立つ国際経済機関や共同体の政府、各国政府、さらには経済学者や経済評論家も、相場の乱高下を演出する国際投機資本が巨利を得たり、無用な経済的混乱を招いたりしない様にもっともっと頭をひねり、汗もかくべきでしょう。

 ギリシャがEUに入っていなければ、ギリシャのドラクマが暴落して、ギリシャの責任で解決される問題といった論評もあり、確かにそうでしょう。しかし計算すれば、ギリシャの赤字がユーロ圏という40倍の経済規模に拡大された場で起こるのですから、40分の1に薄められるはずです。なのに、現実に起こっていることはユーロ圏全体が潰れるのかと思わせるような激震です。

 本当にそんな危機なのでしょうか。ギリシャ以外のユーロ圏の国では2割近いユーロの下落で、国内コストがそれだけ下がります。 そしてその分だけ国際競争力が急激に高まっているはずです。丁度、日本の円が現時点で110円ぐらいに円安になったようなものです。コスト高で悩んでいたユーロ圏主要国にはまさに干天の慈雨ではないでしょうか。

 実体経済とかけ離れたこうしたおかしなことが起こるのも、実体経済に関わるマネーよりも、異常に巨大な国際投機資本が、さらにレバレッジを効かせたり、さらには『空売り』(特に"naked" short selling)で、マネーマーケットの動きを大幅に増幅するからでしょう。

 金融の果たすべき役割は、実体経済に奉仕すること、実体経済の安定的発展に役立つ事がその本来の目的という金融のあり方の原点を、世界中の関係者がもっともっと真剣に考えるべきではないでしょうか。アジア金融危機、サブプライム・リーマンショック、日本では土地バブル、教訓はいくらでもあります。


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