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司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

相続登記の義務化~改正要綱案の取りまとめ

2021-02-02 19:14:19 | 民法改正
NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210202/k10012845391000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_064

「所有者がわからないまま放置されている土地の問題を解決するため、法制審議会の部会は、相続する際の登記の義務化や、不要な土地を手放して国の帰属とすることができる制度の創設などを盛り込んだ要綱案をまとめました。」(上掲記事)

・ 土地を相続する際の登記を義務化し、取得から3年以内に申請しなければならない。10万円以下の過料。
⇒相続登記の申請の義務付け(部会資料60-1頁)

・ 相続した人が申し出るだけで登記を認める新たな手続きを設ける。
⇒相続人申告登記(仮称)の創設(部会資料60-4頁)

・ 所有者がわからない土地については裁判所が管理人を選び、所有者に代わって管理や売却を行うことができる制度を設ける。
⇒所有者不明土地管理命令制度(部会資料59-11頁)

・ 相続した人から遺産分割の請求が無いまま10年が経過した場合は法律で定められた割合に応じて分割する。
⇒遺産分割に関する見直し(部会資料59-18頁)

・ 建物や土壌汚染がないことなどを条件に相続した不要な土地を手放して国の帰属とすることができる制度を創設する。
⇒土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設(いわゆる土地所有権の放棄)(部会資料61)

cf. 法制審議会民法・不動産登記法部会第25回会議(令和3年1月26日開催)
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00047.html


 先の記事のとおり,2月10日(水)の法制審議会総会で承認され,法務大臣に答申される予定である。
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法制審議会民法・不動産登記法部会第25回会議

2021-02-02 18:02:13 | 民法改正
法制審議会民法・不動産登記法部会第25回会議(令和3年1月26日開催)
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00047.html

 民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する要綱案(案)(4)~(6)について,議論がされたようである。

 また,本日(2月2日),最終の部会で,要綱案の取りまとめがされたようで,2月10日の法制審議会第189回総会での承認を得て,法務大臣に答申がされる見込みである。

 同総会において,法務大臣から,「離婚後の子の養育の在り方を中心とする家族法制の見直し」「担保権に関する法制の見直し」に関する諮問もされる予定であるようである。

cf. 法制審議会開催予定表
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi03500003.html
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遺言書保管制度異聞

2021-02-02 16:05:43 | 民法改正
 以下は,架空の物語である。

 ある昼下がり,○×地方法務局の門前にあるそよかぜ司法書士事務所(仮称)に,珍客の来訪があった。有名女優の甲山花子(仮名)である。最近亡くなった超有名俳優乙村太郎(仮名)とおしどり夫婦(事実婚であり,子はいない。)としても有名であった。

甲山花子「御相談があるのですが・・・」

で始まった相談の要旨は,

・ 乙村太郎は,自筆証書遺言を書き,法務局における遺言書保管制度を利用していた。このことは,法務省の同制度のPRとして,同HPにも掲載されており,公知の事実である(同人のブログにも「保管番号第777号をゲットした!」と書いてあった。)。

・同HPやブログには,「自分にとって大事な人に財産が渡るように書いておいた」とあったので,ちゃんと自分のことを考えてくれているんだ,と安心していた。

・ 同人の死後,知り合いのタレント弁護士に相談したら,「法務局に行けば,遺言書の証明書を出してもらえますよ」というので,法務局にやって来たところ,「証明書は出せない」といわれた。「私が女優の甲山花子で,乙村太郎の妻だって,ご存じよね?」と聞いたら,「大ファンです。」と言われたけど,「ダメです」って。保管番号第777号の話もしたけど,やっぱり「だめ」だって。どういうこと?

・ いろいろ説明されたけど,「よくわからない」と言ったら,「手続の方法はあるので,司法書士さんや弁護士さんに相談してみてください」と言われ,法務局から出て来たところ,ちょうどこの事務所の看板が目にとまったので,相談に来た。

ということらしい。

 法律婚か否かを確認したところ,やはり事実婚であり,法律上の相続人にはあたらないことを説明したところ,この点は理解しているようであった。

 このような場合,まず,「遺言書保管事実証明書」の交付の請求をすることからのスタートとなる。この証明書の交付の請求は,「何人も」することができる(遺言書保管法第10条第1項)。

 遺言者が保管制度を利用しているという前提において,請求人が相続人であれば,必ず,「遺言書が保管されている」という証明書が交付される。

 しかし,請求人が相続人以外である場合,保管されている遺言書が,請求人に関係のある遺言書(例えば,同人に遺贈する等)であれば,「関係のある遺言書が保管されている」旨の証明書が交付され,遺贈する等の記載がなければ,「関係のある遺言書は保管されていない」旨の証明書が交付されるのである。

 司法書士N藤は,上記について説明し,同証明書の交付請求書の作成について依頼を受け,甲山花子が必要書類を揃えて法務局に交付請求を行ったところ・・・。

「N藤先生,どういうこと! 証明書には「遺言書は保管されていません」と書いてあるけど!」

「先日御説明したとおり,乙村太郎さんが,甲山花子さんに何らかの財産を遺贈する旨の遺言書を書いて,その遺言書が法務局に保管されているのであれば,この保管事実証明書には,「関係のある遺言書が保管されている」旨の証明がされます。その証明書に基づいて,遺言書の内容に関する証明書も取得することができます。しかし,「関係のある遺言書が保管されていない」旨の証明であるということは,乙村太郎さんは,甲山花子さんに何の財産も残していないということです。」

「そんなことって・・・。私のお腹には,あの人の子が宿っているのに・・・」

 その一言で,ピンと来た。

「お子さんが生まれたら,死後認知(民法第787条)の手続をとってください。家庭裁判所で認知が認められたら,お子さんは,乙村太郎さんの相続人ということになりますから,甲山花子さんが,お子さんの法定代理人として,遺言書保管事実証明書の交付の請求をすれば,今度は,相続人からの交付請求ということで,「遺言書が保管されている」という証明書が交付されるものと思います。その後に,遺言書情報証明書を取得すれば,遺言書の内容がわかります」

 その後,甲山花子は,上記のステップを踏んで,遺言書の内容を調べたところ,「胎児に全ての財産を相続させる」旨のことが書かれており,若干のもめ事はあったものの,生まれた子が無事相続手続を経ることができたようである。

 やれやれ。

 こんなこと,ないかな。
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