全国官報販売協同組合
https://www.gov-book.or.jp/asp/Koukoku/GenkouItemEntryTop/?op=1&id=28&pid=1
株式交付の手続において,債権者保護手続をとる必要がある場合は,極めて少ないと思われるが,上記HPに,株式交付に関する官報公告の文例が掲載されているので,取り上げておく。
株式交付においては,その対価が株式交付親会社の株式のみである場合には,債権者保護手続を要しない。
しかし,株式交付親会社は,対価に占める株式交付親会社の株式以外の財産の割合が一定の基準を超える場合には,その債権者に対して債権者保護手続を行う必要がある(会社法第816条の8第1項,会社法施行規則第213条の7)。
〇 会社法施行規則
(株式交付親会社の株式に準ずるもの)
第213条の7 法第816条の8第1項に規定する法務省令で定めるものは、第1号に掲げる額から第2号に掲げる額を減じて得た額が第3号に掲げる額よりも小さい場合における法第774条の3第1項第5号、第六号、第8号及び第9号の定めに従い交付する株式交付親会社の株式以外の金銭等とする。
一 株式交付子会社の株式、新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)及び新株予約権付社債の譲渡人に対して交付する金銭等の合計額
二 前号に規定する金銭等のうち株式交付親会社の株式の価額の合計額
三 第1号に規定する金銭等の合計額に20分の1を乗じて得た額
株式交付子会社においては,何らの手続を要しない。
なお,株式交付親会社がこの手続を行う場合における公告又は催告の内容として,株式交付親会社及び株式交付子会社の最終事業年度に係る貸借対照表の要旨に関する事項を含む必要があるところ,株式交付親会社が株式交付子会社の貸借対照表の要旨の内容を知らないこともあり得るが,その場合には,「知らない」旨を内容とすればよい(会社法施行規則第213条の8第6号)。
〇 会社法施行規則
(計算書類に関する事項)
第213条の8 法第816条の8第2項第3号に規定する法務省令で定めるものは、同項の規定による公告の日又は同項の規定による催告の日のいずれか早い日における次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定めるものとする。
一~五 【略】
六 前各号に掲げる場合以外の場合 会社計算規則第六編第二章の規定による最終事業年度に係る貸借対照表の要旨の内容(株式交付子会社の当該貸借対照表の要旨の内容にあっては、株式交付親会社がその内容を知らないときは、その旨)
【実務上の留意点】
組織再編行為においては,債権者保護手続の要否は,重要である。株式交付の手続においても,債権者保護手続を要する場合には,他の組織再編行為と同様の手続をとる必要があるので,注意を要する。昨今,組織再編行為に際しての債権者保護手続において,ギリギリのスケジュールを組み,期間の末日が日曜日である等により,会社法所定の1か月以上の要件を満たさないケースが散見されるようである。債権者から異議が出ることも想定し,余裕のあるスケジュールを組むように留意すべきである。
会社計算規則第39条の2第2項ただし書の規定によれば,株式交付においては,会社法第816条の8の規定による債権者保護手続をとっている場合以外の場合には,原則として,株主資本等変動額の全額を資本金又は資本準備金に計上しなければならず,その他資本剰余金の額を増加させることはできないものとされているので注意を要する。
〇 会社計算規則
第39条の2 株式交付に際し、株式交付親会社において変動する株主資本等の総額(以下この条において「株主資本等変動額」という。)は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法に従い定まる額とする。
一 当該株式交付が支配取得に該当する場合(株式交付子会社による支配取得に該当する場合を除く。) 吸収型再編対価時価又は株式交付子会社の株式及び新株予約権等の時価を基礎として算定する方法
二 株式交付親会社と株式交付子会社が共通支配下関係にある場合 株式交付子会社の財産の株式交付の直前の帳簿価額を基礎として算定する方法(前号に定める方法によるべき部分にあっては、当該方法)
三 前二号に掲げる場合以外の場合 前号に定める方法
2 前項の場合には、株式交付親会社の資本金及び資本剰余金の増加額は、株主資本等変動額の範囲内で、株式交付親会社が株式交付計画の定めに従い定めた額とし、利益剰余金の額は変動しないものとする。ただし、法第816条の8の規定による手続をとっている場合以外の場合にあっては、株式交付親会社の資本金及び資本準備金の増加額は、株主資本等変動額に対価自己株式の帳簿価額を加えて得た額に株式発行割合(当該株式交付に際して発行する株式の数を当該株式の数及び対価自己株式の数の合計数で除して得た割合をいう。)を乗じて得た額から株主資本等変動額まで(株主資本等変動額に対価自己株式の帳簿価額を加えて得た額に株式発行割合を乗じて得た額が株主資本等変動額を上回る場合にあっては、株主資本等変動額)の範囲内で、株式交付親会社が株式交付計画の定めに従いそれぞれ定めた額とし、当該額の合計額を株主資本等変動額から減じて得た額をその他資本剰余金の変動額とする。
3 前項の規定にかかわらず、株主資本等変動額が零未満の場合には、当該株主資本等変動額のうち、対価自己株式の処分により生ずる差損の額をその他資本剰余金の減少額とし、その余の額をその他利益剰余金の減少額とし、資本金、資本準備金及び利益準備金の額は変動しないものとする。