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Something New.

中国北京市の危機 武漢ウィルス感染拡大

2020-06-24 11:11:11 | 国際
武漢コロナウィルスが再び猛威を振るいつつある。中国・北京市で、である。

この状況と背景について作家で中国ウォッチャーである石平氏が解説しているので、それを抄録の形でお伝えしたい。


日本のメディアでも「中国北京市で感染続く 新たな発症者22人」として少しは報道されている。

この22人の内、10人が北京の食品卸売市場で確認されている。その他に河北省や福建省でも新規感染者が見つかっている。

今回の北京での感染発生場所は「新発地」という卸売市場である。ここでクラスターが発生した。


中国メディアの報道では

6月13日に同市場関係者36人の感染を確認して市場の閉鎖を開始している。北京市の幹部は「北京市は非常時に入った」と宣言した。

ここで「36人」と発表しているのだが、以前からの例を挙げるまでもなく中国の発表する数字は毎回嘘だらけなので今回も事実とは異なる数字だろうと思われる。恐らく本当の数字は発表の数字に10を掛けたくらいではないだろうか。要するに数百人単位での感染拡大が起きている、ということだ。

ここで重要なのは卸売市場自体がが閉鎖されたことである。北京の野菜や果物需要の7割がこの市場から供給されている、という実情がある。この市場の広さは東京ドーム二十数個分である。かなり大規模な市場である。

さらに中国メディアの記事に拠ると、6月14日には同市場関係者の8人が感染していることが確認されている。さらにこの日は武装警察が1500人も進駐してきている。閉鎖命令を無視する連中や騒動を起こす連中を取り締まる目的で武装警察が出てきたのだ。

新発地卸売市場の所在地は「北京市豊台区花郷地区」であるが、ここは中国全土の中でも唯一「高リスク地区」に指定されている。


「新発地卸売市場」はどのような市場なのだろうか?

此処は全国でも最大の農産物卸市場である。取り扱う農産物は年間1749万トンで、北京市で消費される野菜・果物の7割を供給している。出入りする車両は3万台/日であり、出入りする人数は5万人/日である。全国22の省・自治区から農産物を調達している。

此処の元々の地名は「新墳地」である。「墳」は中国語で「お墓」の意味なので、ここを開発する時に”縁起が悪い”ということで「新発地」に改名したのである。


前述のように、6月13日に市場が閉鎖されるまでは毎日5万人が出入りしていた場所である。なので、その影響の広さは計り知れないものがある。

野菜・果物の北京市内需要の7割がこの市場から供給されるとすると、あらゆるレストラン・スーパーなどにこの市場から出た野菜や果物が供給され食べられていた、ということになる。レストランやスーパーの労働者間での感染はもちろん、その労働者の家族、野菜・果物を食べた人々や客への感染が最も懸念されるところである。

北京は中国の中央官庁が集まる場所である。その各中央官庁には構内に必ず食堂がある。その食堂もまたこの市場から食材を調達しているのだ。

上で「全国22の省・自治区から農産物調達」と記したが、逆に言えば22の省や自治区にこの市場から人が買付に出向いている、ということでもある。その時に感染を拡大させている可能性は非常に大きいだろう。中国に於ける新たな感染拡大の震源地となりうる話である。

ここまででお判りと思うが新発地卸売市場は特別な役割があり、そこから考えると今回の感染拡大は簡単には終わらないだろうことは容易に想像できるのである。


6月13日の市場閉鎖までにどれだけ感染拡大したかは不明だが、相当な規模になっている可能性は捨てきれない。しかもそれ迄に感染した人が実際に発症するのはこれからなのだ。


新発地市場はあの天安門広場からも遠くない。天安門広場の南西方向に数キロ行った場所である。


6月14日の北京日報の記事を見ると見出しは「北京は既に非常時期に突入した」となっている。

6月19日になると中国の疫学専門家の発言で「北京のウィルス再流行は既にピークを過ぎた」とか「もう収まるだろう」という発言がBloombergに掲載されている。ただ、問題はそれが「本当かどうか」である。

別の専門家の見立てはまったく違うようである。

6月17日の中国経済メディアの記事では高福という専門家の話が掲載されいる。彼は中国の疾病管理センターの主任であり、かなりの要職にある人物である。彼が言うには「北京での疫情は4月下旬から出現した」ということである。もしそれが本当なら6月13日まで放置したツケはかなり大きなものとなって返ってくる可能性がある。ようやく6月13日になって市場を閉鎖したところでほとんど意味はないだろう。それまでにとんでもない規模の感染拡大になっていると推測されるところである。


それを裏付けるように、感染拡大は北京市だけでなく周辺地域にも広がりを見せている。


中国メディアの6月19日の記事に拠れば河北省でも2名が新規感染したとのことである。その内の一人はなんと新発地卸売市場の経営者である。もうひとりはレストランのスタッフである。

また、別の中国メディアの6月17日の記事では、浙江省でも新発地が感染源と見られる感染者が発生した、と報道されている。浙江省は北京からはかなり遠く、どちらかと言えば上海に近い地域である。

北京の新発地卸売市場は中国全土から食材を調達しているので感染の影響範囲も当然ながら非常に広くなると推測される。そうなると、北京市内では既に隅から隅まで感染拡大していてもおかしくない状態であろう。最悪の場合、国内全土に拡散している可能性さえあるのだ。なので、前述の専門家が6月19日の発言で「既にピークは過ぎた」と宣っている、そんなことでは済まないのではないだろうか。とても簡単にはいかない状況のように思える。


季節はほぼ夏になりつつある。季節が変わればウィルスの活動も収まるような話も一部にあったが、どうもそうはいかないようである。中国だけでない。日本に於いても同様と考えて良いだろう。気温の上昇はウィルスが消える条件にはならないのである。


現在、北京の学校は全て休校となっている。北京から出発する航空機も大幅に減便されており、北京市は既に半分くらいは封鎖されているような状態にある。完全封鎖という事態もなくはないだろう。

中国国内では武漢ウィルスの感染はかなり深刻な状況にあって、周辺各国と比較してもまずい状態にあるようだ。


今はこういう状況なので北京のスーパーからも野菜・果物は消えている。北京市民としては食材の不足は大変であろうが、なんとか我慢している状態のようである。野菜や果物はNGだが、米はあるのでまだまし、ということらしい。


中国は今回の感染について、あろうことか「ノルウェーからの鮭に付着していたウィルスが感染源である」などと言っており、これについてノルウェーは「そんな馬鹿なことはない」とカンカンになって怒っている。「なんで鮭やねん!」と。そりゃそうだろう、これは完全に中国のでっち上げである。

そもそも新発地卸売市場で扱われる食材の数は少なく見ても数千点~数万点はあるだろう。それらを全部検査したわけでもないのになぜ鮭が感染源と断定できるのか。これだけでも嘘がバレバレである。毎回そうだが、中国にとって都合の悪いことは全て外国に責任転嫁する悪癖が今回も発動しているようである。

ウィルスの最初の発祥が武漢であることは知られており、今回のパンデミックで大きな迷惑を受けた世界各国は中国の責任追求をする構えだが、中国自身は責任回避の為になんとか話をうやむやにしようと画策しているのである。今回の感染拡大にあたって「また中国発か」と名指しされたくないので最初に「外国の魚が」と言って逃げ場を作っておくいつもの中国の卑怯な手法である。

最初からそういう口実を作っておくということは、逆に見れば中国は”事態の深刻さ”を理解している、ということでもある。だからこそ急いで責任転嫁の工作に励むのだ。それが中共の常套手段である。


新発地卸売市場では中国政府から野菜等の食材の調達先として「湖北省から調達しろ」と指示があったようである。言うまでもなく湖北省は武漢市を含む省である。武漢ウィルスの影響で湖北省の経済の落ち込みはひどい状態になっている。そこで中国政府は野菜等の食材を湖北省から調達するようにすればお金が湖北省に流れるだろう、と考えたのだ。つまり、ウィルスで汚染された湖北省の食材が北京に入ったから今回の感染拡大につながった、という説があるのだ。確認が難しいところだが、充分に有り得る話であろう。


現在、中国の食材事情はかなり大変なようである。野菜・果物だけではない。前述のように魚に嫌疑がかけられているということは、魚も一斉に売れなくなっているのだ。


なにしろ、北京の現在の状況は簡単に収束可能な話ではない事は間違いないと思われるし、経過が注目されるところである。


また、2020年6月下旬現在、首都である北京市が武漢コロナウィルス感染拡大で武漢市の悪夢の再現になろうとしているその一方で、中国国内では各地で洪水等の水害が発生している。湖北省にある超大型の三峡ダムなどは、この洪水の影響で決壊の危機にある事が取り沙汰されている。
武漢コロナウィルスという「疫病」、自然災害としての「洪水」と「バッタ大量発生に依る被害」・・・歴史書にはよく王朝が崩壊する前には天変地異が競い合うように生起する様子が描かれているが、現在の中国共産党が支配する中国が正に崩壊前夜を迎えているかのような様相を呈している。