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2011.4.24 津市河芸町豊津海岸にて ヨシコツルギアブ雄
ハマボウフウやハマニガナなどの海浜植物が生えていて,どちらかといえば疎らに生えている砂浜の砂地上に,以前から白いハエがいることは分っていた。写真も撮っていたが,同定ポイントが写っていなかったりして,種名は判らなかった。
ヨシコツルギアブ Acrosathe yoshikoae Nagatomi et Lyneborg,1988 は4月に現われると聞いていたので,今年はあちこちの砂浜を探し回っていた。4月21に芦原海岸で初見,24日には豊津海岸でも見つけた。写真もたくさん撮ったが,前・中腿節の腹面に1~2本の剛毛をもつことを確認できる写真は数枚しか撮れていなかった。
三重県レッドデータブック2005には,ヨシコツルギアブは「小形で体形は細長く,後方に向かって狭まる。雄の腹部は美しい銀白色の毛に覆われる。雌では灰褐色に黒色の斑紋を装う。この属の種は互いに近似種が多いが,本種は前・中腿節の腹面に1~2本の剛毛をもつことで,比較的容易に区別できる。海浜性で,コウボウムギの群落やその周辺の限られた範囲にみられ,それより内陸には生息しない。幼虫は砂中にあって他の節足動物を捕食する。年1化,春に出現する。」などとあり,絶滅危惧Ⅱ類に選定されている。
永冨ほか(2000)によると,ヨシコツルギアブの雄は体長7.2-9.4㎜で「前・中腿節の腹面(中央部を越えた所)に1本の剛毛を持つ。顔の最下方部の幅は触角と前単眼間の距離の1.0-1.2倍である。前額の側部に毛群がある。」とし,雌は体長7.5-11.3㎜で「前・中腿節の前腹面(中央部を越えた所)に1本の黒剛毛を持つ。顔の最下方部幅は触角と前単眼間の距離の1.2-1.5倍である。腹部第5背板上の黒紋は通常半円形か三角形で,第6背板上の黒紋は三角形か中央部が突出しないままとなる。」という。また,ヨシコツルギアブの模式標本産地は九州の佐多岬となっている。
柿沼(2009)は「山口県では産地,個体数ともA.tashimaiより少ない,海浜植生の間の砂の上にいることが多い。」と言い,島根県での記録と合わせて報告している。
佐藤(2007)は9枚の写真を使って,新潟市五十嵐浜でのヨシコツルギアブの生態を報告している。
三重県産のツルギアブはこれまでにヨシコツルギアブ,ナギサツルギアブ,ハマツルギアブ,シオサイツルギアブ,ヤマトツルギアブの5種が記録されている。山地性のものも私は見つけているので,まだまだ増える。
参考文献
篠木善重,2011.ヤマトツルギアブ三重県と徳島県の海浜での記録.はなあぶ (31):56-57.
大石久志・篠木善重・別府隆守,2010.日本産Acrosathe属(ツルギアブ科)の新知見.はなあぶ (30-1):31-46.
柿沼進, 2009. 山口県・島根県の海浜性ツルギアブ分布記録.はなあぶ(27):54-55.
永冨昭・大石久志, 2000. 日本産ツルギアブの同定.はなあぶ(9):1-32.
佐藤直美, 2007. 新潟市におけるヨシコツルギアブの記録. はなあぶ(23):79-80.
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2011.4.21 津市河芸町芦原海岸にて ヨシコツルギアブ雌
右前脚の腿節腹面に1本の剛毛が見えている。
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2011.4.21 津市河芸町芦原海岸にて ヨシコツルギアブ雌雄
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ヨシコツルギアブ雌
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ヨシコツルギアブ雌
前脚のは見えていないが,中脚腿節腹面に各1本の剛毛が見えている。
ヤマトツルギアブ
三重県のヤマトツルギアブ
シオサイツルギアブ覚書
ツルギアブ科Acrosathe sp.の訪花
ナギサツルギアブ覚書
砂浜のツルギアブ
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