川口保 のブログ

1市民として市政を眺めつつ、社会のいろいろな出来事を取り上げています。

これからの松阪市の農業の行方について

2014-10-08 21:58:23 | 日記
 現在開会中の松阪市議会9月議会の一般質問で「農業」を取り上げました。松阪市議会の一般質問で農林漁業に関する内容は全体的に少ないようですが、私としても始めて農業に関する質問をしました。

 日本の農業の曲がり角にきていると言われて久しいのですが、特に今、日本の稲作が大変不透明な時代にきています。農政は国の政治に左右されることが多く、自治体の裁量で動かせる範囲は少ないのですが、市議会ですので、松阪市の農政の進め方や松阪市の農業がどの方向に向かって進んで行こうとしているのか聞きました。

1)稲作の行方について
A、稲作の現状
 日本で稲作が始まったのは弥生時代と学校で習ったような記憶がありますが、遺跡からの出土物の研究などで、6000年ほど前の縄文時代中期から始まったという説が有力であるということです。そして3000年ほど前の縄文時代の終わり頃には水田栽培が始まっているということです。
 神代の昔から稲作と共に歩んできた日本の農業は、いかにコメの収穫量を上げるかが究極の目標でした。江戸時代にもたびたびの凶作、飢饉に見舞われ、戦時中には働き手が戦地に取られ、年寄りと女性で農地を守ってきた歴史もあります。

 日本の稲作が6000年の歴史の中で、大きな転換期を迎えたのが昭和40年代でした。コメ余り現象が起き、倉庫は米でいっぱいになりました。
 戦前の米の10当たりの反収は300㎏(5俵)位でした。ところが戦後、肥料の導入、機械化、生産技術の向上などにより生産量が飛躍的に増加します。そして日本人の食生活の欧米化で、パンやファーストフーズなどが食べられるようになり、米の消費は年々減少していきます。そしてついに昭和44年(1970)から減反政策がはじまりました。
 
 その後も生産量が増加し続け、消費は急速に減少していき、減反面積は年ごとに増加していきます。そして米価は年々下落していきます。かつて米価の決定する季節になると、筵旗を持った農民の代表が国会に押しかけたのは、今は昔。近年米価について農民が意見を言うことも、国会に押し寄せるバイタリティーもありません。
 今年の米価が1俵(60㎏当たり)1万円を切る事態になりました。
   1等米  9,300円、
   2等米  8,700円、
   3等米  7,700円
   履歴(トレ-サービリティー)加算500円、搬入加算200円
 日本のブランド米を代表する魚沼米も、昨年より2500円下げ1万4200円となったということです。

 そしてここにきて、再び大きな転換期を迎えようとしています。民主党政権時代に制定された農家の個別補償制度、自民党政権に変わっても名称を経営所得安定化対策に変えて続けられていた、反あたり15,000円の補助金が今年(26年)から半額になり、4年後の平成30年(2018)に廃止されます。そして同年、半世紀に渡って続けられてきた生産調整(減反政策)も廃止されることになりました。

【質問】
 コメ余りが加速し、米価の下落に拍車がかかる状況のなかで、松阪市の農林漁業を管轄する経済産業部として、これからの松阪市の稲作がどうゆう方向に進んでいくと予測しているか。

【答弁】
 三重県は伊勢平野の肥沃な土地と、多くの河川による豊かな水源、温暖な気候など稲作に適し、コメ作りが農業の中心となっています。
 生活様式の変化と食生活の移り変わりにより、コメの過剰在庫、米価の大きな下落、そしてこの夏の天候不順による不作なども相まって、生産現場では担い手を中心として大きな打撃を受け大変憂慮しています。

 このような状況の中、米価下落のセーフティーネットとなる、国の経営所得安定政策の収入減少影響緩和対策(ならし対策)の周知徹底を図っていきます。また、農家の経営を安定させる拡充措置等も求めていきたい。

 昨年11月に国の農政改革が示され、経営所得安定化対策の米政策の見直しとして、26年産米からコメの直接支払が10a当たり7,500円に半減し、平成30年からは廃止されることとなり、この減少分を日本型直接支払制度にあてることになっています。

 市においては、担い手や集落営農組織など生産現場の強化を主眼におきながら、国の制度を最大限に活用し、効率化を推進し、地域の中心経営体及び新規就農者の育成・発掘に努め、関係機関と連携し持続可能な農業経営の実現を図って行くことが重要であると考えています。
                                            ―― 以上答弁 ――

B、営農組織、認定農業者(担い手農業者)
 私の地区では20軒ほどの農家があります。20年ほど前ではほとんどの農家が稲作を自前で作っていました。今はほとんどの農家が営農組織や認定農業者に委託して作ってもらっています。
 これからの稲作はこれまで通りの個人作付けの他、営農組織や認定農業者また規制緩和により参入した企業で作付されることになります。そのうち個人作付けはこれからも減っていくことが予想されます。
                  
【質問】
そのような中で稲作栽培関係での松阪市独自の政策にはどのようなものがあるか、あるいは無いのか。

【答弁】
 松阪市は県内有数の田園地帯であり、約6,300ヘクタールの水田を有しており、平坦地と中山間地域に二元化した有効活用を図っています。
 市独自の政策としては、平坦地域では水田活用推進対策補助金により、大規模な地域戦略作物の麦・大豆の作付けに取り組み、コメの生産調整を円滑にして、担い手や集落営農組織を核に水田の有効活用を図っていきます。

 また生産条件が不利な中山間地域では中山間地域水田活用推進対策補助金により、多様な作物の作付け等を支援し、耕作放棄地の抑制を図っております。
この他、農業経営の継続に意欲のある認定農業者や集落営農組織等を支援する「がんばる認定農業者等支援補助金」を今年度から実施しています。
                                            ―― 以上答弁 ――

 営農組織は農家で組織する農事組合法人などで、機械の共同購入や共同作業を行います。松阪市内の営農組合は30団体です。この営農組合の多くは、作業を認定農家に委託していますが、松阪市藤之木町を中心とする「農事組合法人 コスモス(組合員69 経営委託約90ha 作業受託約56ha)」は、全て機械購入から作業まで自前で行っています。全国的に見ても優れた組織で、多くの視察があるということです。

 認定農業者は担い手農業者とも言われ、市町村が一定の条件で認定した農業経営者や農業生産法人で、国、県、市町村から補助金などの支援を受けられます。各農家の水田を借り受け、農家には賃借費として米1俵(水田によっては1.5俵)を渡す場合が多いようです。農林水産省では今後10年間で認定農家が耕作する農地面積を全農地面積の8割になるよう農地集積を目指しています。

 松阪市内の認定農業者は158経営体で、その内「主穀(米・麦・大豆など穀類を作付けする)認定農業者」が76団体です。認定農家の人に話を聞きましたが、「これだけ米価が下がると経営は苦しく、稲の休耕地につくる大豆や麦の補助金(麦35,000円 大豆15,000円)と、保険の様に掛金をしておいて、米価が下がった時に過去3ヶ年の平均の価格で買い取りをしてもらう、収入減少緩和対策(ならし対策)の制度でやっている」ということです。

【質問】
 営農組織の充実に県の役割はあるが、市の行政が果たす役割はないのか。

 農業を推進していく上での市の役割は、国の経営所得安定対策の推進、これを円滑にしていくため集落営農組織などの農業者団体との連携、戦略作物の振興や米の受給調整の推進、農地の利用集積、混作放棄地の再生利用、担い手の育成・確保等により地域農業を推進していくことを目的とした松阪市農業再生協議会を設置しています。
 担い手や集落営農組織などに対して、国等の支援制度を最大限活用できるよう、情報の共有化・発信を行っています。
                                       ―― 以上答弁 ――

C、米の消費拡大
 米の消費拡大について、飼料米として使うことや、学校給食に使うなどの方法があります。
養鶏農家の人に聞いてみましたが、米をトウモロコシの代わり5%程度まで使うことができるということです。ただ卵の味は変わらないのですが、黄身の色が薄くなるのが難点で、この場合は黄色の色粉を与えることが必要であるということです。

 松阪市の学校給食では米飯給食とパン給食が行われています。全てを米飯給食にすれば米の消費拡大になるのですが、子ども達の好みもあってパン食は欠かせません。そこで米粉でできた米粉パンを給食に使ってはどうかということになります。以前「学校給食に米粉パンを」というテーマで一般質問をしたことがあります。小麦のパンに比べると米粉パンは単価が少し高くなり難しいという答弁でした。しかし全国的には給食に米粉パンを使う自治体は増えてきています。

【質問】
 米の消費拡大について何かいい施策はありますか。

【答弁】
 農林水産省によると日本の1人当たりのコメの消費量は昭和37年の年間118.3㎏をピークに平成24年では56.3㎏と半分以下となっています。
 松阪市では学校給食においてコメの地産地消を図るとともに、今後米飯給食を増やしていく計画であります。米粉パンも年5回ほど使用していますが、農山漁村活性化プロジェクト支援交付金等で米粉の利用を図っていきます。
 今後もコメや米粉の活用等について考えていきたいと思っています。
                                            ―― 以上答弁 ――

 この他、農産物のブランド化について、六次産業化について、インターネットを使った農産物の発信と販売についてなど質問しました。
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