川口保 のブログ

1市民として市政を眺めつつ、社会のいろいろな出来事を取り上げています。

天皇の生前退位まであと1年

2018-04-26 07:41:21 | 日記
 2019年(平成31年)4月30日に今上天皇が退位され、新元号となる「御代代わり」まであと1年余となった。ご高齢ながら激務をなされている天皇陛下が生前退位され、皇后陛下とともに少しゆったりされるのはよかったと思う。

 30年間の平成の時代は阪神淡路大震災や東日本大震災に代表される自然災害の多かった時代であった。天皇皇后両陛下が災害の被災地を訪れ、避難場所の被災者に対して膝を付き合わせて、やわらかい笑顔をたたえながら励ましてみえる姿は、私たちの記憶にいつまでも残るだろう。天皇皇后両陛下の訪問を受けて、途方に暮れる被災者の人たちがどれだけ励まされたことだろうか。
 
 我が国は世界でも有数の火山国である。世界の火山の約1割が狭い日本の国土にあるといわれている。平成の時代にも多くの火山の噴火があった。平成3年(1991)に発生した長崎県の雲仙普賢岳の噴火で、天皇陛下はジャケットを脱ぎ、ワイシャツの腕をまくって避難所に訪れ、床に膝をついて被災者を見舞った。これまでの124代の歴代天皇が膝をつくのは神様の前だけであったが、今上天皇は初めて膝をついて被災者に接した。天皇陛下はその後も皇后陛下とともにこのスタイルを通して、被災者を励まし続けられた。

 平成5年7月12日に発生した北海道南西沖地震で津波と火災で大きな被害を受けた奥尻島では、天皇陛下が訪れるというニュースが流れたところ、それまでうつろな目をしていた被災者の目が輝いたという。そして「私たちの復興の第一歩は天皇皇后両陛下にお会いできたことだ」と述べたという。
 平成23年5月に東日本大震災の被災地である福島県相馬市を訪れた皇后陛下は、自宅もご主人の店も流された女性に対し「生きていてくれてありがとう」と声をかけられたという。その女性は「何もかも失ったという喪失感があったが、皇后様のお言葉により、“そうか、生きていること自体が大切なんだ”と思えるようになった」という。

 「エンペラー(Emperor)」。日本語では「皇帝」または「天皇」と訳される。世界中の王朝の中でEmperorと表記されるのは我が国の天皇だけであるという。2009年11月にアメリカのオバマ大統領が初めて来日したときに天皇陛下に面会した。このとき大統領は腰を90度に折ってお辞儀をして敬意を表した。もともとお辞儀をする習慣のないアメリカでは、抗議デモまで起きた。世界に冠たるアメリカの大統領がなぜそこまでするのかということであった。
 今年は皇紀2678年。世界の中でも最も歴史の長い皇室である。世界が敬意を集めているのは男系男子でつないでいること。これだけ長い天皇の歴史で男系男子は奇跡的だといわれている。
 世界の中でも特に英国は日本の皇室に敬意をして示している。東日本大震災の翌年2012年(平成24年)6月にイギリスのエリザベス女王の即位60周年を祝う祝賀行事の昼食会には30ヶ国の王族が招待された。この時、天皇皇后両陛下は女王と同じテーブルで、天皇陛下は女王のすぐ横、もう一方の横にはスウェーデン国王、その横に皇后陛下がつかれたという。これはイギリスが日本の皇室をいかに高く評価しているかを表しているとされる。

     慰霊碑の 先に広がる 水俣の
     海青くして 静かなりけり

 平成26年の歌会始で詠み上げられた天皇陛下の御歌。前年に両陛下が水俣病患者を見舞われた時に詠まれた歌である。この歌には、和歌・短歌の心得が全くない私にもなぜか惹かれるものがあった。私の好きな歌である。

 天皇があればこそ日本という国が外国の人々から見て、奥行きや深みのある国にみえるのではないかと思う。それには天皇皇后両陛下の人間性が大きく関わっていると思う。両陛下には退位されてからも、いつまでもお元気でいてほしい。


(このブログは平成30年4月17日の伊勢市の神宮会館で開催された三重県神社総代会大会に行われた、皇室ジャーナリストの高清水有子氏の講演「皇統を守る ~ご譲位に伴う諸問題について~」を参考にして書かせていただきました)
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