豆の育種のマメな話

◇北海道と南米大陸に夢を描いた育種家の落穂ひろい「豆の話」
◇伊豆だより ◇恵庭散歩 ◇さすらい考
 

わが裏庭で「鹿角」を拾う

2021-11-08 10:11:03 | 伊豆だより<里山を歩く>

今年(2021)も伊豆下田へ行ってきた。新型コロナ感染第5波の山がようやく下火になり、全国的に緊急事態宣言が解除された10月下旬のことである。目的は墓参と空き家の管理である。中でも村道から家までのアプローチ小径と庭の草刈りが大仕事。コロナ禍の外出自粛で一年ぶりの下田行であったので茅は伸び放題、猪と鹿が通った獣道を辿って家に着く有様だった。

刈払い機を振り回し、刈り倒した茅を片付ける。庭木を剪定する。慣れない仕事に老体が悲鳴をあげるが、「もう歳だから、無理しないでね」と労わりながら、何とか4日で予定の作業を終えた。刈り払った残渣を裏庭の隅に堆積しようと運んでいると、「鹿角」が落ちているのを見つけた。持ち帰って、孫へのお土産にしよう。

奥伊豆のこの村落も猪や鹿が増え、農業は防護柵を設置しないと成り立たない状況になっている。家庭菜園さえもが野生の猪、鹿、猿など鳥獣被害にさらされている。わが家の庭へは夜ごと猪がやって来るし、鹿の糞が落ちていたこともあるので「鹿角」が落ちていたとしても大きな驚きはない。

鹿は雄にのみ角が生える。外敵から身を守るため、群れの中で優位性を保持するためだと言われている。4月頃「袋角」ができ、5~8月にかけて角は2又、3又と分岐して急成長、9月頃には立派な角が完成。9~11月の繁殖期にはオス同士が競うのに使用され、3月頃には抜け落ち、毎年生え変わると言う。

1歳の鹿はまだ分岐していない細い1本角、2歳になると2又に分岐する鹿もいるが太さは細く、3歳になると2又か3又で大きな角が生え、4歳以上の鹿は3又に分かれて太さも太く立派な角になるそうだ。裏庭で拾った角は三又に分かれているので3歳以上の鹿と言うことになろうか。

鹿角は、日本では加工して工芸品として利用されることが多い。中国では漢方薬「鹿茸(ろくじょう)」として活用されるが、この鹿茸は春先に生え始めたばかりの柔らかい鹿の角「袋角(ふくろづの)」から作られるらしい。

近年、増えすぎた鹿を駆除して、或いは飼育して、鹿肉を食用として利用する動きがみられるようになった。縄文時代の人々の狩猟対象は主として猪と鹿であったと言うから、食用として利用するのに抵抗感はあるまい。鹿肉は高タンパクで低脂肪、鉄分の含有量も非常に高い特徴がある。ただし、生食ではE型肝炎や住肉胞子虫による食中毒になった報告があるので注意。加熱調理が必須である。

奥伊豆の山間にあるこの家はしばらく空き家にしているので、猪や鹿にとっては楽園みたいなものだ。裏山には猪が泥水浴する水溜まり(沼田場)が出来ているし、身体を擦りつける丸太は皮が剥げている。毎夜のように里へ下りて来る獣道には偶蹄の痕跡が残っている。崖にも猪突猛進して道を作る。鹿は群れを成して動き、一か所に糞を残して行く。

2019年の夏が終わる頃だったろうか白骨化した動物の骨に出くわしたことがある。骨格から鹿であろうと推察したが、何故そこに放置されたのか分からない。崖の獣道に近かったので、滑り落ちた鹿が足を骨折し動けなくなり、朽ち果てたとしか想像できない。息絶えた鹿は風雨にさらされ、野生の動物、鳥、虫、バクテリアなどが関与して自然に化す循環、自然の摂理があったのだろう。田舎に行くと色んな場面に遭遇する。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする