竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

後撰和歌集 巻16 歌番号1165から1169まで

2024年04月22日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻16
歌番号一一六五
原文 也末乃為乃幾美尓徒可者之遣留
読下 山の井の君につかはしける

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 遠止尓乃三幾々天八也末之安佐久止毛以左久美々天无也末乃為乃美川
和歌 おとにのみ ききてはやまし あさくとも いさくみみてむ やまのゐのみつ
読下 音にのみ聞きてはやまじ浅くともいざ汲みみてん山の井の水
解釈 貴女のことを噂に聞きましたから、ただ、聞くだけでは済ましません、あの歌に詠うように、浅くても、さぁ汲みに行きましょう、山の井に湧く水を。(私に抱かれてみませんか。)
注意 万葉集「安積山影さえ見ゆる山の井の浅き心をわが思はなくに」を引用する。

歌番号一一六六
原文 也末比之个留遠加良宇之天遠己多礼利止幾々天
読下 病しけるを、からうじておこたれり、と聞きて

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 志天乃也末多止留/\毛己衣奈々天宇幾与乃奈可尓奈尓加部利个无
和歌 してのやま たとるたとるも こえななて うきよのなかに なにかへりけむ
読下 死出の山たどるたどるも越えななで憂き世の中になに帰りけん
解釈 私は病により死出の山への路をたどたどしく越えてしまうのでしたが、そうではなく、どうも死出の山ではなく、病が峠を越えたようで、この辛いこの世に、どういう訳が帰って来たようです。
注意 詞書の「おこたれり」は「病が解放に向かう」の意味で、ここでは「病の峠が越えた」と解釈しています。

歌番号一一六七
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 加寸奈良奴三遠毛知尓々天与之乃也末多可幾奈計幾遠於毛比己利奴留
和歌 かすならぬ みをもちににて よしのやま たかきなけきを おもひこりぬる
読下 数ならぬ身を持荷にて吉野山高き嘆きを思ひ懲りぬる
解釈 (我が身は除目の考課では条件を「満(もち:満足)としています)、さて、物の数にも入らない我が身を持荷としているので登るのに吉野の山の高さに嘆きます、その言葉の響きではないが、吉野の山のような身分の高さへ、投げ気(絶望の気持ち)を思い、除目での私の身分が上がることへの期待に懲りているのです。

歌番号一一六八
原文 加部之
読下 返し

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 与之乃也末己衣无己止己曽加多可良女己良武奈个幾乃加寸者之利奈无
和歌 よしのやま こえむことこそ かたからめ こらむなけきの かすはしりなむ
読下 吉野山越えん事こそ難からめ樵らむ嘆きの数は知りなん
解釈 あの吉野の山を越えることは確かに難しいでしょう、ただ、山の木を樵(こ)る投げ木、その言葉の響きのような、貴方の除目で官位が得られずに、懲りたとの嘆きの数は、確かに判りましたよ。

歌番号一一六九
原文 与宇世為无乃美可止々幾/\止乃為尓佐不良八世太末宇个留遠
飛左之宇女之奈可利个礼八多天万川利个留
読下 陽成院の帝、時々宿直にさぶらはせたまうけるを、
久しう召しなかりければ、たてまつりける

原文 无左之
読下 武蔵

原文 加寸奈良奴三尓遠久与為乃之良堂万者飛可利三衣左寸毛乃尓曽安利个留
和歌 かすならぬ みにおくよひの しらたまは ひかりみえさす ものにそありける
読下 数ならぬ身に置く宵の白玉は光見えさす物にぞ有りける
解釈 物の数にも入らない我が身に置く宵の白玉は、光が途中で消えてなくなるものだったのですね。

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後撰和歌集 巻16 歌番号1160から1164まで

2024年04月19日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻16
歌番号一一六〇
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 堂々地止毛堂乃万佐良奈无三尓知可幾己呂毛乃世幾毛安利止以不奈利
和歌 たたちとも たのまさらなむ みにちかき ころものせきも ありといふなり
読下 たたちともたのまさらなん身にちかき衣の関もありといふなり
解釈 この恋路は真っすぐな路だと、私に期待を寄せないでください、身に近い衣、その名前のような「許呂母の関」があるというではありませんか。
注意 平安時代初期の「許呂母の関」の場所は推定では愛知県の三ケ日の付近で、鎌倉時代以降の宮城県の「衣川の関」とは関係がありません。

歌番号一一六一
原文 止毛多知乃比左之久安者佐利个留尓万可利安日天
与三者部利个留
読下 友だちの久しく逢はざりけるに、まかりあひて
よみ侍りける

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 安者奴万尓己比之幾三知毛志利尓之遠奈止宇礼之幾尓万与不己々呂曽
和歌 あはぬまに こひしきみちも しりにしを なとうれしきに まよふこころそ
読下 逢はぬ間に恋しき道も知りにしをなどうれしきにまどふ心ぞ
解釈 貴方に逢わない間は、一途に恋焦がれる恋路を知りましたが、どうしてでしょう、このように貴方にお逢いすると、その嬉しい気持ちに、ただ、これからどうしていいのか判らずに戸惑うばかりです。

歌番号一一六二
原文 堂以之良寸
読下 題知らす

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 伊可奈利之布之尓可以止乃美多礼个无志日天久礼止毛止个寸三由留八
和歌 いかなりし ふしにかいとの みたれけむ しひてくれとも とけすみゆるは
読下 いかなりし節にか糸の乱れけん強ひて繰れども解けず見ゆるは
解釈 どのような節目にでしょうか、紡ぐ糸が乱れるように貴方の気持ちが乱れたのでしょうか、無理に紡ぐ糸を繰って巻き取る、その言葉の響きではありませんが、無理してやって来てくれた貴方のお気持ちが、打ち解けないように見えるのは。

歌番号一一六三
原文 飛止乃女尓加与比个留三川个良礼者部利天
読下 人の妻に通ひける、見つけられ侍りて

原文 可天宇保宇之
読下 賀朝法師

原文 三奈久止毛飛止尓志良礼之与乃奈可尓志良礼奴也万遠志留与之毛可奈
和歌 みなくとも ひとにしられし よのなかに しられぬやまを しるよしもかな
読下 身投ぐとも人に知られじ世の中に知られぬ山を知るよしもがな
解釈 我が身を投げて死んだとしても、不倫の恋に死んだとは人には知られたくないものです、そのために、世の中で人が知らない山を知るすべはないでしょうか。

歌番号一一六四
原文 加部之
読下 返し

原文 毛止乃於止己
読下 もとのをとこ(元の男)

原文 与乃奈可尓志良礼奴也万尓三奈久止毛多尓乃己々呂也以者天於毛者武
和歌 よのなかに しられぬやまに みなくとも たにのこころや いはておもはむ
読下 世の中に知られぬ山に身投ぐとも谷の心や言はで思はむ
解釈 世の中で人が知らない山で、お前が不倫の恋に人知れずに身を投げて死んだとしても、お前がそのことを評判にだけはしないで欲しいと願う気持ちがあっても、私が人々にお前の不倫の恋のことを言わないで置くとは思わない。

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後撰和歌集 巻16 歌番号1155から1159まで

2024年04月18日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻16
歌番号一一五五
原文 以多久己止己乃武与之遠止幾乃飛止以不止幾々天
読下 いたく事好むよしを、時の人言ふ、と聞きて

原文 多可従乃美己
読下 高津内親王

原文 奈本幾々尓満可礼留衣多毛安留毛乃遠計遠布幾々寸遠以不可和利奈左
和歌 なほききに まかれるえたも あるものを けをふききすを いふかわりなさ
読下 直き木に曲がれる枝もあるものを毛を吹き疵を言ふがわりなさ
解釈 真っすぐな木にも曲がった枝もあるのにね、ただ、毛を吹き別けて疵を探し出して悪口を言うような細かな欠点を見つけて批評するのは道理には合いません。
注意 漢語成句「吹毛求疵」(韓非子:「不吹毛而求小疵、不洗垢而察難知」毛を吹きて小疵を求めず)を引用する。詞書の「こと(事)」は風流や漢詩を意味し、「とき(時)」は流行を追い駆けるのような意味合いです。

歌番号一一五六
原文 美可止尓堂天万川利多万日个留
読下 帝に奉りたまひける

原文 佐加乃幾佐為
読下 嵯峨后

原文 宇徒呂者奴己々呂乃布可久安利个礼者己々良知留者奈者留尓安部留己止
和歌 うつろはぬ こころのふかく ありけれは ここらちるはな はるにあへること
読下 移ろはぬ心の深く有りければここら散る花春に逢へるごと
解釈 私には帝への変わることなくお慕い申し上げる気持ちは深くありますが、一方では、帝の身の回りではたくさんに散らす花がおありのようで、まるで季節が春になったかのようです、(若い女たちとお盛んですね。)

歌番号一一五七
原文 己礼可礼於无奈乃毛止尓満可利天毛乃以比奈止之家留尓
於无奈乃安奈左武乃加世也止毛宇之个礼者
読下 これかれ女のもとにまかりて物言ひなどしけるに、
女の、あな寒の風や、と申しければ

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 堂万多礼乃安美女乃満与利布久加世乃左武久者曽部天以礼武於毛日遠
和歌 たまたれの あみめのまより ふくかせの さむくはそへて いれむおもひを
読下 玉垂れのあみ目の間より吹く風の寒くはそへて入れむ思ひを
解釈 貴女の部屋の美しい御簾の網目の間から、吹く風が寒いのであれば、吹き込むその風に載せて入れましょう、私の恋焦がれる思いの火を。

歌番号一一五八
原文 於止己乃毛乃以比个留遠左波幾个礼者加部利天
安之多尓川可者之个留
読下 男の物言ひけるを、騒ぎければ、帰りて、
朝につかはしける

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 之良奈美乃宇知左者可礼天多知之可八三遠宇之本尓曽々天者奴礼尓之
和歌 しらなみの うちさわかれて たちしかは みをうしほにそ そてはぬれにし
読下 白浪のうち騒がれて立ちしかば身を潮にぞ袖は濡れにし
解釈 昨夜の貴女の閨で、白浪が打つ騒ぐではありませんが、貴女と言い争いをして共寝をせずにそのままに帰って来ましたので、我が身を辛いと思うほどに、白浪の浪雫のような潮に濡れたとばかりに、私の袖は辛い思いで流す涙に濡れてしまいました、(さて、機嫌は直りましたか。)

歌番号一一五九
原文 加部之
読下 返し

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 止利毛安部寸堂知佐者可礼之安多奈美尓安也奈久奈尓々曽天乃奴礼个无
和歌 とりもあへす たちさわかれし あたなみに あやなくなにに そてのぬれけむ
読下 とりもあへず立ち騒がれしあだ浪にあやなく何に袖の濡れけん
解釈 共寝をすることもなく、なにもすることがなく、ただ、立ち騒がしく帰って行った貴方、意味もなく打ち寄せる浪に何ほどの道理もないように、何を理由に貴方の袖は濡れたのでしょうか。(私は、もう、昨夜のことは気にもしていませんよ。)

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後撰和歌集 巻16 歌番号1150から1154まで

2024年04月17日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻16
歌番号一一五〇
原文 飛止乃毛遠奴者世者部利尓奴日天川可者寸止天
読下 人の裳を縫はせ侍るに、縫ひてつかはすとて

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 可幾利奈久於毛不己々呂者徒久者祢乃己乃毛也以可々安良武止寸良无
和歌 かきりなく おもふこころは つくはねの このもやいかか あらむとすらむ
読下 限りなく思ふ心は筑波嶺のこのもやいかがあらむとすらん
解釈 貴方のことを限りなくお慕いする気持ちは、あの「筑波嶺のこの裳」の歌ではありませんが、心を尽くして縫ったこの礼装の上着となる裳は、朝議での官礼服として着用されると思いますが、今後、貴方のお立場はどのようになるのでしょうか。
注意 古今和歌集「筑波嶺のこのもかのもに蔭はあれど君が御蔭に増す蔭はなし」を引用する。

歌番号一一五一
原文 於止己乃也末比之个留遠止不良者天安利/\天
也美加多尓止部利个礼八
読下 男の病しけるを訪ぶらはで、ありありて、
止みがたに問へりければ

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 於毛日以天々止不己止乃者遠堂礼三末之三乃之良久毛止奈利奈万之可八
和歌 おもひいてて とふことのはを たれみまし みのしらくもと なりなましかは
読下 思ひ出でて問ふ言の葉を誰れ見まし身の白雲となりなましかば
解釈 思い出したかのように病気の身を見舞う言葉を書いた手紙を誰が見るでしょうか、もし、その病に伏した人の身が死して魂が白雲のように天に昇りましたら。

歌番号一一五二
原文 美曽可越止己之多留於无奈遠安良久者以者天止部止
毛乃毛以者左利个礼八
読下 みそか男したる女を、荒くは言はで問へど、
物も言はざりければ

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 和寸礼奈无止於毛不己々呂乃徒久可良尓己止乃者佐部也以部者由々之幾
和歌 わすれなむと おもふこころの つくからに ことのはさへや いへはゆゆしき
読下 忘れなんと思ふ心のつくからに言の葉さへや言へばゆゆしき
解釈 あの歌ではありませんが、昔、私との関係があったことを、貴女はすっぱりと忘れてしまおうと思う気持ちが起きたので、私からの事情を問う手紙に返事することまでも、神罰に触れるような忌むことと思っているのですか。
注意 古今和歌集「忘れなむと思ふ心のつくからにありしよりけにまづぞ悲しき」を引用する。

歌番号一一五三
原文 於止己乃加久礼天於无奈遠三多利个礼者川可八之个留
読下 男の隠れて女を見たりければ、つかはしける

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 加久礼為天和可宇幾左万遠美川乃宇部乃安和止毛者也久於毛日幾衣奈无
和歌 かくれゐて わかうきさまを みつのうへの あわともはやく おもひきえなむ
読下 隠れゐて我が憂きさまを水の上の泡とも早く思ひ消えなん
解釈 貴方は私の屋敷内に隠れ居て、私の普段のなにも装っていない様子を見たのですね、その「みつ」の言葉の響きではありませんが、儚く消える水の上の泡沫ととも、私の恥ずかしいと思う気持ちが消え失せて欲しいものです。

歌番号一一五四
原文 与乃奈可遠止可久於毛日和川良日者部利个留本止尓於无奈止毛多知
奈留飛止奈保和可以者无己止尓川幾祢止加太良日者部利个礼八
読下 世の中をとかく思ひわづらひ侍りけるほどに、女友だち
なる人、なほ、我が言はん事につきね、と語らひ侍りければ

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 飛止己々呂以左也志良奈美堂可个礼八与良武奈幾左曽加根天可奈之幾
和歌 ひとこころ いさやしらなみ たかけれは よらむなきさそ かねてかなしき
読下 人心いさや白浪高ければ寄らむ渚ぞかねて悲しき
解釈 貴女が紹介する、その男の気持ちは知らない(判らない)、その「しら」の言葉の響きのような白浪が高く打ち寄せれば、そこへ寄るすべのない渚です。その貴女が紹介するその男への寄るすべの無いことは残念に思います。

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後撰和歌集 巻16 歌番号1145から1149まで

2024年04月16日 | 後撰和歌集 現代語訳 巻16
歌番号一一四五
原文 也末比之天己々呂本曽之止天多以布尓川可八之个留
読下 病して、心細しとて、大輔につかはしける

原文 布知八良乃安徒止之
読下 藤原敦敏

原文 与呂徒与遠知幾利之己止乃以多川良尓飛止和良部尓毛奈利奴部幾加奈
和歌 よろつよを ちきりしことの いたつらに ひとわらへにも なりぬへきかな
読下 よろづ世を契りし事のいたづらに人笑へにもなりぬべきかな
解釈 貴女と万世までも共に過ごすと誓ったことも、偽りだったと、貴女に笑われそうな境遇になってしまいました。

歌番号一一四六
原文 加部之
読下 返し

原文 多以布
読下 大輔

原文 加遣天以部者由々之幾毛乃遠与呂川与止知幾利之己止也加奈者佐留部幾
和歌 かけていへは ゆゆしきものを よろつよと ちきりしことや かなはさるへき
読下 かけて言へばゆゆしき物を万代と契りし事やかなはざるべき
解釈 不吉な事柄を口にだせば、それが確かな不吉なことになりますよ、貴方と万世までも共に過ごすと誓ったことが適わないわけがありません。

歌番号一一四七
原文 安良礼乃布留遠曽天尓宇个天幾衣个留遠
宇美乃本止利尓天
読下 霰の降るを袖に受けて消えけるを、
海のほとりにて

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 知留止三天曽天尓宇久礼止多万良奴八奈礼多留奈美乃者奈尓曽安利个留
和歌 ちるとみて そてにうくれと たまらぬは あれたるなみの はなにそありける
読下 散ると見て袖に受くれどたまらぬは荒れたる浪の花にぞ有りける
解釈 海辺にて霰が散っていると眺めて、それを袖に受け止めるけど、霰が袖に降り貯まらないのは、どうも荒れた海の浪の花だったみたいですね。

歌番号一一四八
原文 安留止己呂乃和良波於女己世知美尓奈武天无尓左布良日天
久川遠宇之奈比天个利寸計武止乃安曾无久良宇止尓天
久徒遠加之天者部利个留遠加部寸止天
読下 ある所の童女、五節見に南殿にさぶらひて
沓を失ひてけり。扶幹朝臣、蔵人にて
沓を貸して侍りけるを、返すとて

原文 与美飛止之良寸
読下 詠み人知らす

原文 堂知左波久奈美万遠和个天加川幾天之於幾乃毛久川遠以川可和寸礼无
和歌 たちさわく なみまをわけて かつきてし おきのもくつを いつかわすれむ
読下 立ち騒ぐ浪間を分けてかづきてし沖の藻屑をいつか忘れん
解釈 立ち騒いでいる浪の間をかき分けて潜って採り誂えた沖の藻屑、その言葉の響きのような、この沓の出来事を忘れることがあるでしょうか。忘れません。

歌番号一一四九
原文 加部之
読下 返し

原文 寸計武止乃安曾无
読下 輔臣朝臣(藤原輔臣、ある本に藤原扶幹)

原文 加徒幾以天之於幾乃毛久川遠和寸礼寸八曽己乃見留女遠和礼尓加良世与
和歌 かつきいてし おきのもくつを わすれすは そこのみるめを われにからせよ
読下 かづき出でし沖の藻屑を忘れずは底のみるめを我に刈らせよ
解釈 潜って見出した沖の藻屑、その言葉の響きのような「沓」の出来事を忘れないのなら、水底に生える海松布(みるめ)ではありませんが、大人になった、その時に、私に貴女との「見るめ」の機会を与えて、貴女の「女(め)」を刈らせて下さい。

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