Some Like It Hot

お熱いのがお好きな映画ファンtakのつぶやき。
キネマ旬報社主催映画検定2級合格。

トラフィック(ぼくの伯父さんの交通大戦争)

2013-07-04 | 映画(た行)
■「トラフィック(ぼくの伯父さんの交通大戦争)/Trafic」(1971年・フランス)

監督=ジャック・タチ
主演=ジャック・タチ マリア・キンバリー マルセル・フラバル オノール・バステル 

 なんてお洒落な映画だろう。ベルギーで開かれるモーターショウにパリからキャンピング・カーを出品しようとする3人の珍道中を描いたロードムービー。ジャック・タチ作品は実は代表作の「ぼくの伯父さん」しか観たことがなかった。あの文明に振り回される現代人をおかしく、しかも暖かく見つめる視点がなかなか好きだった。本作でもそれは同じだ。渋滞の車の中での人々の同じような仕草や、アポロの月面着陸を見てゆっくり動いてみせる大人な達。台詞で多くを語らずとも映像はとても雄弁だ。この映画は登場人物たちにカメラが近寄らず、そこで何が起こっているかをきっちり見せているのが特徴かな。だから無用なカメラ目線の演技もないし、クローズアップで表情のおかしさを撮ることもない。例えばモーターショーが始まった途端に、あちこちで開けたり閉めたりする行動が繰り返されていたりするところとか。

 「ぼくの伯父さん」のユロ氏はどこか間の抜けたでも人間味のある人物として描かれていたが、それはここでも同じ。キャンピングカーの設計者という役どころなのだが、このキャンピングカーが楽しい仕掛け満載。フロントグリルでバーベキューしたり、バンパーを引き出すと椅子になったり、一見子供じみた発想かもしれないがそれもユロ氏の自由な精神が表現されているのだ。他の登場人物もユロ氏に負けず魅力的な大人たち。広報担当のお洒落なお姉さんはその筆頭だろう。クビを言い渡されたユロ氏が、車に乗らず地下鉄にも乗らず、彼女と相合い傘で消えていくラスト。人々が次々と車を降りて地面を埋め尽くす自動車の間を歩き回るこの場面は、モータリゼーションを皮肉って人間回帰を訴えているようでもあるではないか。この映画はビデオリリースのみだったが、1995年に原題のままのタイトルで劇場公開された。

(2003年筆)




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