読書日記

いろいろな本のレビュー

世界のなかの日清韓関係史 岡本隆司 講談社選書メチエ

2009-07-20 16:29:04 | Weblog
 韓国の小国意識は明・清王朝の属国としての歴史が長く、その間に事大主義がはびこって行ったことによって形成されたという事は、夙に指摘される通りである。本書は朝鮮王朝の清朝との関係を「属国自主」という言葉で表し、「属国」の実相を細かく分析して、両国の関係史に新しい光を当てている。
 清国と朝鮮の間には、宗属関係と言われる一種の優劣が存在したが、朝鮮を「属国」とみなすか、「自主」を認めるかという、微妙な使い分けによってバランスが保たれていたことを資料によって裏付けている。朝鮮にとっては「寄らば大樹の陰」とばかり、清国に庇護を求める傍ら、ある程度の自主外交を実現できるということもあり、この桎梏から逃れることをしなかった。まるで大戦終了後のアメリカと日本との関係のようだ。19世紀に西欧列強が東アジアに進出し、日本が近代化を始めると、そのバランスが崩れ始める。即ち朝鮮は清国から「自主独立」を達成するやいなや、たちまち列強からの進出を受けて、最後は日本に併合された。ついに「自主独立」外交を展開して、列強と渡り合うという歴史を持つことが無かった。それが現在の韓国・北朝鮮の政治状況に大きな影響を与えていることは確かだ。国際情勢が朝鮮半島の国家体制にストレートに影響する構図はここに淵源を持つ。かつての清の属国が現在さらに二分化されてそれぞれ異なる政治体制を敷いているのだから、スケールから言って、このままでは一流国になる事は難しかろうと思われる。まずは北朝鮮の金正日体制の崩壊と、韓国のリーダーシップによる南北統一が是非とも必要だ。これには中国は黙って見ていないだろうが、中国自身、共産主義の限界を感じており、あえて北朝鮮を「属国」化しておく余裕も無くなって、民主化が進む可能性が高い。したがって統一は夢ではない。