偏屈老人の銀幕茫々 石堂淑朗 筑摩書房
著者は脚本家で、昔、必殺仕事人(藤田まこと主演)の脚本を書いていたと記憶する。東大を出た後、松竹に入社し、大島渚の助監督となる。大島は当時の人気女優の小山明子と結婚するが、石堂も小山に気がありアプローチしたがだめだったらしい。このことは本書には書いていないが、知る人ぞ知る話である。本書は破天荒な生き方をした一脚本家の交友を、大胆な筆致で書いたもので、昭和の裏面史という色彩が強い。今村昌平、浦山桐郎、実相寺昭雄、種村季弘など懐かしい名前がでてくる。
私も学生時代、ATGアートシアターで実相寺昭雄の映画をよく見た。今思い出せるのは、三島由紀夫原作の「音楽」だ。主演は篠田三郎。あの頃は文学作品をマジメに映画化していたものだ。懐かしい。石堂の自分史は共に過ごした「昭和」という時代を回顧させてくれた。ありがとう。謝謝。