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シネマと虎とグルメたち

犬童一心監督作品に「ジョゼと虎と魚たち」があった。オイラは「観た映画が面白くて、美味いもの食って阪神が快勝」を望んでる。

夕陽のあと

2019年12月12日 | 映画
「夕陽のあと」 2019年 日本


監督 越川道夫
出演 貫地谷しほり 山田真歩 永井大
   川口覚 木内みどり 松原豊和
   渡辺早織 鈴木晋介 宇野祥平
   滝沢涼子

ストーリー
鹿児島県の最北端、豊かな自然に囲まれた海に浮かぶ島々からなる長島町。
1年前、この町にやってきた茜(貫地谷しほり)は、食堂で溌剌と働きながら、地域の子どもたちの成長を見守り続けていた。
一方、夫(永井大)とともに島の名産物であるブリの養殖業を営む五月(山田真歩)は、赤ん坊の頃から育ててきた7歳の里子・豊和(松原豊和)との特別養子縁組申請を控え、本当の“母親”となる期待に胸を膨らませていた。
ところが突然、行方不明だった豊和の生みの親の所在が判明。
その背後に7年前、東京のネットカフェで起きた乳児置き去り事件が浮かび上がる……。


寸評
生みの親か、育ての親かは時々テーマになる題材だが、「夕陽のあと」は特別養子縁組に関わる問題を描いている。
子供を捨て去った母親と、不妊の為にその子を引き取った母親という二人の感情が交差する物語なのだが、その両方を追ったために映画としては散漫になってしまっている。
育ての親の子供への愛情という観点で見れば、例えば「八日目の蝉」の方が遥かに訴えるものがあった。
生みの親の茜が子供を捨てなければならなかったDV被害や、貧困、孤独がうまく描かれていない。
子供を想いながら真面目に働いている時の苦悩も通り一辺倒な描き方である。
茜の過去や人生がメインテーマではないが、茜が子供を取り戻したいと願う気持ちの深さは描けていなかったように思う。
ちょっと、期待が過ぎたかな・・・。

豊和(とわ)はブリにはお母さんがいっぱいいて、皆によって育てられているという話をする。
それと呼応するように、五月によって島の皆が豊和を育てていると述べられる。
近所中で、村中で子供を育てていた頃が懐かしい。
哀しいことに多くの町ではそのような交流はなくなってしまっている。
近隣のおじさん、おばさんが気軽に声をかけることも、叱り飛ばすこともなくなってしまっている。
小さな島という閉鎖社会では、まだまだそんな人間関係が残っているのだろう。
母一人、子一人だった僕も、叔父や叔母を初め、皆に見守られて育ってきたと思う。
皆から「お前は一人の子なのだから」というプレッシャーをかけられながらも、皆が僕を育ててくれていたのだと思う。
豊和は鹿児島の離島に来て良かったのだ。
もっと言えば、生みの親より育ての親なのだ。
結末としては納得のいくものである。
夕陽の後の海はないでいて一番美しいらしい。
それを思わせるラストだが、茜は本当に吹っ切れたのだろうか?
豊和はいつか本当のことを知るだろう。
その時、豊和は茜とどのように接するのだろうと思った。
僕はたった一度の実の父親との出会いを思い返していた。