岩井俊二監督の「リップヴァンウィンクルの花嫁」がもうすぐ公開されるので、「Love Letter」と「リリイ・シュシュのすべて」を再見する。
最近は出かけない限り、毎日1,2本の録画ビデオを見るのが日課となっている。
今のところ岩井俊二監督作品のなかで好きなのはこの2本。
「Love Letter」はみずみずしい映像で覆われた、ひねりの効いたラブストーリーだ。
二役を演じた中山美穂が手紙のナレーションを含めていい演技を見せている。
何本か映画出演も果たした中山美穂だが、彼女の代表作は間違いなくこの作品だし、この作品しかないと言っていいぐらい役柄にハマっている。
登場シーンからその魅力が全開で、中山美穂ファンならずともうっとりしてしまう。
雪の中に息を止めて寝っ転がっている彼女のアップから始まり、山腹の雪景色の中を歩いていく姿と共に、雪原の中にタイトルが表示されていく。
なんともアート的なオープニングで、僕はその映像に完全に魅了されてしまった。
雪の中での藤井樹の三回忌シーンが続き、ピアノ曲に乗って舞台は小樽へ移り、もう一人の藤井樹が登場する。
このつなぎ方も映画的で、観客を魅了するのに十分な演出だった。
「リリイ・シュシュのすべて」は、心に傷を負った14歳の少年少女たちの心の闇や痛みを繊細なタッチで描いた作品だ。
美しいピアノの旋律が流れ、美しい光景やショットも散りばめられているのに、見ていくうちに何かしら辛くなってくるし、見終っても重苦しい気持ちが残る。
ここで描かれれていた少年少女たちはリアルな14歳なのだと言えばそうなのかも知れないが、やはり異常な世界を感じてしまう。
僕が彼らの年齢の頃には経験しなかったようなことが今は起きているのかもしれないと感じさせる作品である。
イジメによる自殺、あるいは教師側の誤った指導、無責任さによって命を絶つ生徒のニュースは1年のうちに何度も目にするようになってきている。
我々の想像を超えた世界が彼らの周りに広がっているのかもしれない。
中学生のリアルな姿を描いていたのかもしれないが、なにか未来が見えない作品だ。
なのに、どう表現していいか分からない瑞々しさがある作品なのが好きな所以である。