シネマと虎とグルメたち

犬童一心監督作品に「ジョゼと虎と魚たち」があった。オイラは「観た映画が面白くて、美味いもの食って阪神が快勝」を望んでる。

怪物

2023年06月16日 | 映画
映画「怪物」を見ました。

「怪物」 2023年 日本


監督 是枝裕和
出演 安藤サクラ 永山瑛太 黒川想矢 柊木陽太 高畑充希 角田晃広 中村獅童 田中裕子

ストーリー
消防車がサイレンを鳴らしながら向かった先には、上部から激しい炎を吹き出す雑居ビルの姿があった。
翌日、早織がクリーニング店で働いていると、ママ友の女性がやってきて、昨夜の火事の出荷元は雑居ビルの3階にあるガールズバーで、湊の担任の保利が通っていたらしいと噂した。
湊が塞ぎこんでいるので心配した早織が問いただすと、湊は自分の脳が「豚の脳」だと担任の保利から言われたと告げた。
早織は校長の伏見に会い抗議したが、学校の対応は事なかれ主義で無難なことばを言ってお茶を濁そうとする。
早織はまた学校へ出かけ、保利を見つけた早織が追いかけると、保利は湊が同じクラスの生徒・星川依里(より)をいじめていることを告げられた。
家に帰った早織は、湊の部屋を覗くと、部屋に点火棒ライターがあったので動揺する。
保護者たちが呼び出され、その前で保利が湊に暴力を振るったことが明らかにされた。
保利は謝罪し、地元の新聞にも大きく報じられた。
それからしばらくの後、巨大な台風8号が日本列島に接近した。
翌朝、早織が目覚めると、湊がいなくなっていた・・・。

保利は覇気がないように見えて誤解されやすいのだが、彼なりに教師として努力していた。私生活では広奈という恋人がおり仲も順調。
学校で起きた事柄も保利の視点から見ると、また違ったものだった。
同じように湊と依里の視点から見れば、また違った。


寸評
嘘、欺瞞、事なかれ主義がはびこっているのも現実の社会だ。
早織はシングルマザーで一人息子の湊を必死で育てている。
しかしその必死さは盲目的に息子を信じさせてしまっている。
子供との信頼関係を疑うことはなく、息子の言うことに嘘はないと確信している。
しかし、子供は巧妙な嘘をつくものなのだ。
事故で亡くなった夫への愛を今も持ち続けているようだが、夫は不倫相手との旅行中に事故死していて、実はその事を息子である湊も知っている。
湊は仏前で見せる早織の態度に疑問をいだいていたのではなかろうか。
校長の伏見に教育に対する熱意は感じらず、自ら先頭に立つことはない。
スーパーで走り回る子供を注意するのではなく、足を引っかけて倒すことで自分の気持ちを表している。
伏見夫婦は孫を誤ってひき殺しているが、運転していたのは夫なのか妻なのか不明である。
もしかすると夫は妻の身代わりとなったのかもしれない。
その態度は学校側の事なかれ主義を助長していく。
事なかれ主義は大人たちの間にあるだけではなく、湊も依里も取り繕うことでもめ事から逃避している。
背景にはモンスターペアレントの存在やイジメ問題がある。
見て見ぬふりをする体質はイジメの実態を見逃がしてしまう。
物語はそれぞれの視点で描かれていくが、多くの謎を残したまま進んでいく。
サスペンスとして謎解きを追求するのではなく、浮かび上がってくるのは人間の愚かさだ。
大人の世界、子供の世界、学校という組織など、存在している社会で行ってしまう人間の愚かな行為である。
真相が徐々に明らかになってくるのは構成上自然な流れである。
たしかに子供たちは怪物的要素を持っているが、ここで言う怪物はむしろ学校側の者たち、いや学校と言う組織そのものだったのかもしれない。
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映画館へ

2023年06月15日 | 映画

ショッピングモールが開錠となる前の早朝一番の映画に出かけた。
モールは10:00オープンだが映画は9:15から始まる。
一カ所だけ入り口が開いており、エレベーターが動いている。
映画は是枝裕和監督の「怪物」。
過日にはベス・デ・アラウージョ監督作の「ソフト/クワイエット」を見に行ったが、これは後味の悪い映画だった。
もっとも、後味の悪さを感じてもらうことが狙いだったのかもしれない。
以前は秀作と凡作を交互に撮っていると思っていた是枝裕和だが、最近はアベレージを保っている。
「怪物だあ~れだ!」
僕は学校ではないかと思った。
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新星登場

2023年06月11日 | 阪神タイガース
やってしまった、今シーズン初の3連敗。
勝てる試合もあったが、リリーフ陣の不調が重なって、まさかの3連敗。
ノイジー、佐藤もひどい。
近本も調子落ちで打線的にもつらい。
ここは我慢のしどころで、今日の日ハム戦後はオリックス、ソフトバンク、DeNAと強敵が続く。
救いは前川に使える目途が立ったことである。
懸案だった6番ライトが固定できるかもしれない。
今一番鋭い振りを見せているのが高卒2年目の前川だ。
左ピッチャーでも使ってほしいと思わせる。
頑張れ、前川!

(デイリースポーツ紙より転用)
井上の広ちゃんも、もう一回上がって来て活躍してほしいところである。
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公園水没

2023年06月03日 | グルメ・他

昨日の豪雨が去って今朝は曇り空。
いつも通り早朝に散歩に出かけると公園が水没していた。
寝屋川が増水すると公園は貯水池として河川の水が引き込まれるようになっているからだ。
昨日は家に引きこもっていたので感じなかったが、やはりこのあたりも相当な雨が降っていたのだ。
雨が上がったので今日の甲子園はありそうだ。
3連敗がない阪神なので、それを守るためにも今日は無敗の大竹で絶対勝たねばならない。
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ソフト/クワイエット

2023年06月02日 | 映画
過日定期検査で病院を訪れた帰りに映画館に寄ってみた。
公的な会合が多かった5月で、久しぶりの映画館であった。
時間的に良かったので12:00からの「ソフト/クワイエット」であった。

「ソフト/クワイエット」 2022年 デンマーク / ドイツ / スウェーデン / フランス

監督 ベス・デ・アラウージョ
出演 ステファニー・エステス  オリヴィア・ルッカルディ  エレノア・ピエンタ
   デイナ・ミリキャン  メリッサ・パウロ  シシー・リー

ストーリー
とある郊外の幼稚園に勤める教師エミリーが、「アーリア人団結をめざす娘たち」という白人至上主義のグループを結成する。
教会の談話室で行われた第1回の会合に集まったのは、主催者のエミリーを含む6人の女性。
マージョリーは勤務先でヒスパニック系の同僚がさきに昇進したことに腹を立て、食料品店の店主で2人の子どもを育てるキムは、ユダヤ系の銀行に融資を断られたことを根に持っていた。
その他、キムに誘われて集会に来た刑務所上がりのレスリー、ブラック・ライブズ・マター運動に異議を唱えるアリス、生まれたときから秘密結社KKKの一員だと話すジェシカが参加していた。
多文化主義や多様性が重んじられる現代の風潮に反感を抱き、有色人種や移民を毛嫌いする6人は、日頃の不満や過激な思想を共有して大いに盛り上がる。
会合の内容を知った教会の神父から「面倒がごめんだから今すぐ帰ってくれ」と言われてしまい、エミリーは自宅で2次会を開こうと提案し、キム、マージョリー、レスリーはキムの食料品店で買出しをすることにした。
そこへ閉店中と知らずにアジア系の姉妹アンとリリーが来店し、思わぬトラブルに発展してしまった。
最悪の空気の中、エミリーの夫クレイグが迎えに来たが、4人の怒りは一向に収まらない。
姉妹の家に押し入り、仕返しをしてやろうと計画する。
クレイグはエミリーに止めるよう説得するが、「妻が侮辱されて何とも思わないの?」と言い寄られ、仕方なく同行することになった。
エミリーたちは姉妹が留守にしている家に忍び込むと、モノを壊しパスポートを燃やそうとするなど迷惑行為を続けていたところへアンとリリーが帰宅してきた。
度を越した4人の行為に激怒したクレイグは、最初こそ証拠隠滅のために姉妹の拘束を手伝うがそのまま現場を去った。
残された4人は口封じのために姉妹を脅し、卑劣な行為を繰り返した。
エミリーたちは極限状態からまともな判断ができず、やがて取り返しのつかない恐ろしい事態を引き起こしてしまう。


寸評
冒頭で教師のエミリーが少年に黒人の掃除係に注意を言いに行かせる。
教師なら自分で言うべきことなのにと思って見ていると、カメラはそこからワンショットでエミリーを追っていく。
教会の談話室を借りての会合なのだが、話される内容は白人至上主義の人種差別容認であり、女性は専業主婦でなければならないと述べ、エミリーが持参した手作りのピザにはナチスのカギ十字がほどこされているなど、現在の社会が目指していることとは真逆の思想の持ち主たちであることが示される。
僕は彼女たちの会話に嫌悪感が湧いてきて、この映画の存在価値を否定する気持ちでいっぱいになる。
やがてエミリーの家での二次会が提案されキムの店に向かうのだが、ずっとワンショットで撮られているために、話はリアルタイムな展開を描いており、場所を変えながらも描かれる彼女たちの姿は普通に存在する人たちだと思わせてくる。
そして起きていることは普通に起こりえることなのだとの想像を生み出していく。

彼女たちがアジア系姉妹の家で行うことはひどい。
傍若無人で明らかに犯罪行為だ。
時々良心的な言動を見せたりするが、結局は誰も暴走を止めることが出来ない。
繰り広げられる行為はヘドが出るようなもので、戦場におけるむごたらしいシーン以上の嫌悪を感じる。
見終ると全くもって腹立たしく、嫌な気持ちで映画館を出ることになったのだが、僕はそこでふと思った。
この映画を認めることが出来ず、嫌な気持ちを持ったということは、僕はまともな人間だったのだと。
人種差別意識は根深く、この映画はごく普通の人が変身を遂げてしまうプロセスをみせ、世の中に内在されている危うさをベス・デ・アラウージョは訴えていたのかもしれない。
ごく普通の人が自分たちが気付かないうちに徒党を組んで暴徒と化してしまっている危うさである。
集団でなくても、個人的に妄想を抱いて首相を襲う輩も出現してしまう世の中のゆがみだ。
逆説的な映画だったと思うが、それにしても後味の悪い映画だったなあ・・・。
もしかするとこの後味の悪さを感じさせるのが狙いだったのかもしれない。
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