「百花」
監督 川村元気
出演 菅田将暉 原田美枝子 長澤まさみ
北村有起哉 岡山天音 河合優実
長塚圭史 板谷由夏 神野三鈴 永瀬正敏
ストーリー
レコード会社に勤務する葛西泉は、ピアノ教室を開き女手一つで自分を育ててくれた母・百合子との間に、子どもの頃のある出来事が原因で深い溝が生まれてしまい、今もその溝を埋められずにいた。
そんなある日、一人暮らしをしている母の認知症が判明する。
スーパーでは同じ商品を何度も買い物かごに入れ、挙句の果てには“浅葉さん!”と叫んで未精算の買い物かごを持ったまま見ず知らずの男を追いかけて万引きと疑われる始末である。
行方不明になることも度々生じて、泉はついに母親を施設に入れる決心をする。
妊娠中の妻の香織と施設を訪問しても二人が誰だか分からなくなってきた。
徐々に記憶を失っていく中で、“半分の花火が見たい”と不可解な言葉を口にするようになる母の姿に戸惑いを隠せない泉だったが…。
寸評
認知症になった母親と息子の姿を描いているが、二人の間には微妙な確執が横たわっているのが一風変わった設定となっている。
「なんで忘れてんだよ、こっちは忘れられないんだよ」と泉が叫ぶシーンは胸に突き刺さってくるが、そう叫ぶ泉も忘れていることがある。
その事が判明した時はさすがに感動を呼ぶ。
その前に宍道湖での思い出があったことで感動が増幅されているのだが、伏線めいた過去の記憶に関する場面の挿入に巧みさを感じる。
一輪差しが多かった理由の見せ方、ビスケットの思い出の見せ方も上手いと思う。
反面、巧みさの中での説明不足感もあったようにも感じる。
百合子が友人から聞かされる日記の話も伏線の一つなのだが、では百合子の日記は泉にショックを与えたようなのだが、どのように伝わったのか不明である。
また泉の父親は泉が物心つかないうちに死亡したのか、あるいは離婚したのかも不明だ。
と通で登場する重要人物の永瀬正敏は死亡したのか、あるいはせいぞんしていたのだけれど、災害によって百合子が子供への母性を呼び起こされて戻ったのかも不明だ。
色々想像できるから面白いのかもしれないが、微妙なフラストレーションが起きた。
私も母親との関係において上手くいっていたとは言い難いが、それでも母親を見捨てられないのが親子関係でもある。
半ば義務感、半ば愛情と感謝で母親と接している泉の姿は私の投影でもあったような気がする。