東京・台東借地借家人組合1

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【判例紹介】 期間満了時の更新拒絶を不可能な堅固建物の建替えが却下された事例 (1)

2008年07月08日 | 増改築・改修・修繕(借地)

 判例紹介


 賃貸借期間満了時の更新拒絶を不可能とするような借地条件の変更は相当でないとして堅固建物への条件変更が却下された事例 (高松高裁昭和63年11月9日決定、判例時報1319号191頁以下 確定)

(事案)
 借地人は、非堅固建物所有目的の借地権を有していたが、これを堅固建物所有目的に変更するための申立を行った。

 そして、その理由として、当該土地が市街化区域になり、準防火地域に指定されたこと。また、この地域が、今では市内の中心地になり鉄筋コンクリート造の建物が密集していることを挙げた。

 借地人としては、鉄筋コンクリート5階建てを建てる計画を立てていた。

 これに対し、地主は、建物が老朽化しており、契約の残存期間が10年以下であり、借地人の申立には緊急性・必要性がなく、借地契約期間満了時に正当事由の成否の判定を待ってからでも遅くない等と主張した。

 原裁判所の徳島地裁は、1000万円の支払いを条件に、借地人の申立を認め、併せて付随処分として、期間を30年に、地代を月額12万1200円に改定する旨の決定をした。

 これに対し、地主から高松高裁に抗告した。

 (判示)
 本決定は、借地人の堅固建物所有を目的とする土地利用の必要性は認めたが、
①、本件申立の主たる動機は、地域環境の変化により、現在の建物における生活を前提とした土地利用状態を維持することが困難になったというのではなく、借地人が新たに営業用建物を建築して収益を上げることを考えるためであり、目的変更の緊急の必要性に乏しいこと、
②地主が期間満了時に更新拒絶をして争うことが必至の状況にあること、
③借地期間が7年足らずで、期間満了時に更新拒絶についての正当事由が認められる余地がないわけではないこと等を上げて、将来の更新拒絶を不可能にするに等しい条件変更を認めるのは相当でないとして、原判決を取消して、借地人の申立を却下した。

 (短評)
 借地条件変更事件においては、借地法第8条の2第4項において、借地権の残存期間が考慮されるべき事項の中に挙げられていることから問題になるところであるがこの場合、一般的には借地権満了時における地主の正当事由具備の見込みの程度も併せて考慮しなければならないとされている。

 本件においては、原裁判所と抗告裁判所の結論が分かれているが、その分岐点は借地期間満了時における正当事由の有無についての判断の違いにあると考えられる。

 7年後(抗告裁判所の決定時において)の事情についてまで、本来は、予測できないものというべきであり、当決定の考え方が裁判所の主流となるならば、借地条件変更事件の存在意義が大きく失われることになろう。今後の動向を注視する必要がある。

(1989.11.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 


 

   参考法令 「借地借家法」第17条

 

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4年半の裁判の末に、借地上に鉄骨3階建の自宅が完成した (東京・台東区)

2008年07月03日 | 増改築・改修・修繕(借地)

 台東区谷中に住む山田さんは地主との4年半に亘る建築を巡る裁判の末に、借地上に鉄骨3階建の自宅がやっと完成した。

  事件の発端は、地主側弁護士からの通告書であった。地主側の通告書には、「通告人は、本書面を以って貴殿が本件土地上に於いて建物の新築・改築又は増築を行わないよう請求致します」と記されていた。 建築計画を立て、建築会社の設計図も完成し、新築の準備をしていた矢先のことであった。

 「貸地上に建築計画上の住宅・店舗の建築に際して更新料・承諾料の要求は一切致しません」と言う直筆の実印が押された念書を地主から貰っており、地主からは既に建物建築の承諾を得ていたにも拘らず、このような建築中止の通告である。地主のたちの悪い遣り方に納得が出来ず裁判に訴えた。

 地主は裁判が始まる5年前に住宅金融公庫から建築資金を得て、5階建の賃貸マンションの建築を11月から始めた。

 ところが、地主の敷地内で工事が行われていれば何ら文句は無い。しかし、4軒の借地人の同意も得ずに、その借地内に勝手に入り込んで無断で足場を組み、借地部分に60㎝以上も喰い込んで鉄板で囲い始めた。公庫と建築会社に敷地の無断使用を抗議した結果、工事は全面的にストップした。

 公庫は地主に対して、借地人のとの間で工事に関する同意が得られない場合、且つ12月中に着工出来ない場合は、融資打ち切り・建築中止を勧告すると通告した。

 地主は建築中止を怖れ、借地人が要求する内容の念書を仕方なく書いたのであるが、借地人としては16本のH鋼 の打ち込みを容認する代償として念書を得たのである。

 裁判が始まると地主側は木造建物の建築承諾はしたが、堅固建物の建築承諾はしていないと反論してきた。確かに念書には堅固建物とは書いてない。

 だが、裁判所は非堅固建物から堅固建物への変更を認め、30年の借地契約で鉄骨3階建の建物へ建替えることを認めた。地主が書いた念書通り建替承諾料・借地更新料共に支払わずに済んだ。

 建築資金は店舗併用住宅なので国民生活公庫から融資を受けて、裁判終了から2年後に建物は完成した。

 

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水道管の水漏修理に対して地主が承諾料を要求 (東京・大田区)

2008年06月11日 | 増改築・改修・修繕(借地)

 世の中には、とんでもない世間離れした、地主がいるものだ。「物干し台を直したら承諾料を請求された。ガラス窓を直したら、風呂釜を取り替えたら承諾料を求められた」という相談が多い。

 また、相続による借地権の継承にも、権利譲渡の如く承諾料を求められたという。地主の名を尋ねると同一人物だった。

 大田区西六郷*丁目に約62坪賃借しているAさんは、水道管が壊れて水が漏れているので、都の水道局に申し入れたら地主の承諾を取るようにといわれて、地主に相談したら承諾料を請求されて組合に相談に来た。

 再度、水道局に申しいれるが、地主とのトラブルを避けたいと、水道局は補修工事の拒否を内容証明郵便で通告して来た。

 破損箇所は水道メーターの外側なので料金には影響はないことを確認して、Aさんと相談のうえ都議会議員を介して、水道局に申し入れると、水道法の規定により水道局が行う工事であることが明らかとなり、工事は無事完了した。

 

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 借地条件変更の裁判を得ても予定建物と大幅に違う建築は許されない

2008年06月04日 | 増改築・改修・修繕(借地)

 判例紹介


 借地条件変更の裁判を得た賃借人が当初の建築予定建物と規模、構造用途の異なる建物を建築することは認められないとされた事例 東京地裁平成5年1月25日判決、判例タイムズ814号)


(事件の内容)
 木造建物所有の目的で賃借していた借地人が、鉄筋又は鉄骨造3階建の工場を建築しようとして、昭和57年裁判所に借地条件変更の申立をしたところ、850万円の支払を条件に本件借地の目的を堅固建物の所有を目的とするものに変更するという決定がなされた。

 借地人は、右850万円を支払ったが建物を建築しないでいた。9年後に、借地と自己所有地に跨って、当初の予定建物とは異なる鉄骨(一部鉄筋コンクリート)造7階建の貸事務所・駐車場・住宅を建築しようとして、増改築許可の申立を行った。

 本件では、増改築禁止の特約は存在しなかったから、この申立は却下されたが、昭和57年に得た借地条件変更の決定により7階建の建物を建築できるか、借地と自己所有地に跨って建築することができるのか、という問題について詳しく判断を示している。


 (決定の要旨)
 「57年決定においては、堅固建物の規模、構造、用途を明示的に制限はしていないが、申立人が建築予定建物として提示した鉄筋3階建工場が財産上の給付額を算定する資料の一つとして斟酌され、それが条件変更と不可分一体の内容となっているのであって、条件変更を認められた部分と切り離すことはできないから、申立人は57年決定に基づいては、自ら提示した建築予定建物と規模、構造、用途の大きく異なる本件建物を建築することは認められない。

 条件変更の裁判を得た後に当初の予定建物とは異なる建物を建築しようとする場合には、申立人が当初呈示した建築予定建物の規模、構造、用途を借地条件の制限に準ずるものと見て、新借地借家法17条を類推適用することによって相手方との利益調整を図るのが実際的であり、法律の趣旨に合致するのではないかと解される。

 跨り建物は、賃貸借契約の終了に伴う地上建物の収去や買取請求あるいは賃借権譲渡の場合における介入権行使との関係で困難な問題を生じ、賃貸人に対して著しい不利益を与える可能性がある。特に、本件計画建物の場合には、その規模構造及び建築された場合の跨りの状況からすると、建物収去、介入権行使後の建物取得は事実上不可能であることが推認されるので、跨り建物たる本件計画建物を建築することは認められない。」

(1993.09.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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【判例紹介】 建替えに際して地下駐車場を造ったことが契約解除の理由になった事例

2007年11月07日 | 増改築・改修・修繕(借地)

 判例紹介

 木造又は簡易鉄骨プレハブ住宅の所有を目的とする借地契約につき、借地人が建替えに際して地下駐車場を造るために借地を掘り下げたことを理由とする契約解除が有効とされた事例 東京地裁平成6年1月25日判決、判例時報1517号78頁)

 (事案) 
 Y(借主)はX(貸主)から木造又は簡易鉄骨プレハブ住宅の所有を目的で借地していたが、借地上の建物を建替えるに際し、地下駐車場を造ることにした。YはXから建替えの承諾を得ていたが、その際地下駐車場を造ることまでは説明していなかった。

 借地をほぼ全域に渡って深く約2メートル余まで掘り下げ土を搬出する工事を行い、そのため借地内にかなりの湧き水が出て水浸しの状態になり、周辺の土地に地割れや近隣家屋の壁等に割れ目が入ったりする被害が発生した。

 Xは、近隣住民から種々の苦情が寄せられたこともあってYに工事中止・原状回復を求めたが、Yが応じなかったため契約違反を理由に借地契約を解除した。

 その後、掘削部分の埋戻工事が実施されたが、地盤が軟弱化し一定の補強をしないと建物の建築が困難な状況になっている。

 (判決)
 本判決は、
 第1に、前記のような掘削工事の規模・地盤の軟弱化などの事実を認定したうえで、本件掘削工事は、土地の形質に影響を及ぼしたものであって、右工事は、本件土地の形状を著しく変質するものというべくXの同意なくして土地の形状を変更してはならないとの約定に違反することは明らかで、本件掘削工事は建物建築のために必要不可欠な掘削という以上のものであるとし、第2に、掘削工事の規模、態様、近隣への影響などに照らすと、Yの行為(土地の形状の変更)について、賃貸人との信頼関係の破壊がない特段の事情があるということはできない旨判示して、借地契約の解除を認めた。

 また、Y(借主)は、近時の土地利用の状況からすれば、地下部分を駐車場として利用することは許容されるべきであるとも主張していたが、これに対して本件判決は、他人の土地を賃借した者には、自らその利用の態様に制限が伴うことは当然で、地主の承諾がなければ本件のように土地の形状を著しく変更することは到底許容されない旨判示してYの主張を退けている。

 (寸評)
 借地人が借地の形状を変更した場合に、その程度によっては保管義務違反や用法違反を理由に借地契約の解除が認められる場合がある。

 本判決は、その一つの判断基準を示したものであり、近時都市部での地下利用が増える中で、今後借地で地下掘削工事をする際の参考になると思われる。

 なお、借地に新たに半地下の車庫を造るなど借地の利用をしようとする場合には、本判決も指摘しているように地主に計画をきちんと説明してその承諾を得るのが最善です。地主が承諾しない場合には、裁判所に増改築の許可の申立をして、裁判所の許可を得てから地下工事をするようにしましょう。

(1995.04.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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(問題4)火災と借地上の建物の修理と増改築

2007年09月28日 | 増改築・改修・修繕(借地)

(問題4)火災と借地上の建物の修理と増改築 
 ①火災の火元となった。2階居宅の一部が焼けたがボヤ程度で、居宅を使用できるように内装工事をしようと思うが、地主の許可は必要か。
 ②全焼で自宅を建替える場合、地主の許可は必要か。
なお、契約書では増改築や大規模修理は地主の承諾を必要とされている。



  ① (①地主の許可は必要。   ②地主の許可は必要ない。) 

 解答・解説は田見高秀弁護士(東借連常任弁護団)です。

 ①の解答(②地主の許可は必要ない。)
①の解説「台東借地借家人組合4」(2007年7月7日)ブログ参照 


   増改築禁止特約があっても
      改良工事(リフォーム)や修繕に
            承諾料を支払う必要はない

 (問) 借地上の建物の修復工事とリフォームを考えている。地主に承諾料を支払わないと工事は出来ないのか。内訳は外壁の亀裂の修理、屋根の葺替え及びベランダ・風呂場・台所のリフォーム。尚契約書には増改築特約がある。

  (答) 市販の借地契約書や不動産仲介業者が使用している契約書には「建物の増改築をする場合には事前に賃貸人の承諾を受けなければならない」という条項が挿入されている。これに違反した場合、地主は催告を要しないで借地契約を解除する旨の特約を無断増改築禁止特約と言う。しかし、常に借地人がこの契約条項に拘束されていては借地の利用が制約されてしまう。

 そこで増改築の承諾を巡る当事者の協議が調わない場合は裁判所が借地人の申立てにより、その増改築についての地主の承諾に代わる許可を与えることが出来る借地借家法17条)。これにより地主が増改築禁止特約を盾に増築や改築を認めない場合でも裁判所の代諾許可を得れば適法に増改築が行える。

 裁判所の許可の手続きをしないで無断増改築を行った場合、直ちに契約解除が認められるのか。

 判例は「賃借人が賃貸人の承諾をえないで増改築をした場合において、増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり、土地賃貸借に著しい影響を及ぼさないため、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは賃貸人は特約に基づき解除権を行使することは許されない」(最高裁1966年4月21日判決)としている。

 つまり、無断増改築であっても、地主に対する信頼関係を破壊する恐れがあると認められない場合は契約の解除は出来ない。総ての増改築について地主の承諾が必要という訳ではない。

 それでは地主の承諾なしに増改築出来る範囲はどの程度なのか。

   前記最高裁の事案では、家族が居住していた2階建建物の一部の根太と2本の柱を取替え、2階6坪を14坪に増築し、外階段にして2階全部をアパートにして賃貸にしたケース。この程度なら地主の解除権は認められない。 既存建物の維持・保存に必要な通常の修繕修復工事や建物のリフォームが増改築禁止特約に触れないと言うことは勿論のことである。 


 

 ②全焼で自宅を建替える場合、地主の許可は必要か。
  
 (①地主の許可は必要。  ②地主の許可は必要ない。)

②の解答は(②地主の許可は必要ない。)
②の解説は「台東借地借家人組合4」(2007年7月10日)ブログ参照

 増改築を制限する特約付の場合でも
      火災後の再築には地主の承諾は不要

  (問) 火災で借地上の建物が焼失してしまった。20年間の借地契約の残存期間は4年であるが、再築することは出来るのか。又、地主の承諾がいるのか。

 (答)  借地借家法施行(1992年8月1日)前に設定された借地権については建物滅失後の建物築造に関しては、なお従前の例によるとされている(借地借家法附則7条)。

 最高裁は建物の《滅失》を次のように定義している。建物の滅失の原因が自然的であると人工的であると借地権者自身の任意の取壊しであると否とを問わず、建物が滅失した一切の場合を含むとしている(最高裁1963年5月21日判決)。

 相談者の事例は借地法7条が適用される。7条には次の趣旨のことが書かれている。
 ①借地権の存続期間が終了する前に借地上の建物が滅失しても借地権自体は消滅しない。
 ②従って借地人は新たに建物を築造することが出来る。
 ③その再築建物の耐用年数は、借地権の残存期間を超えることが多いので、地主が滅失建物の再築に「遅滞ない異議」がなければ借地権の存続期間の延長を認める。借地権の存続期間延長の起算点は、旧建物が滅失した時(事例では火災で建物が焼失した日)である。
 ④借地権は建物滅失の日から起算して堅固建物については30年間、その他の建物は20年間存続する。
 ⑤但し、残存期間の方が長い時は、その期間による。
 ⑥また、地主が借地人の再築に反対する旨の異議を遅滞なく述べた場合、その異議の効果は、従来の借地権の存続期間が延長されないだけである。勿論借地人は、借地契約の期間満了後に「借地法6条」による法定更新を主張することが出来る(最高裁1972年2月22日判決)。

 異議は遅滞なく述べなければならない。再築に着手しているにも拘らず、その完成間際になって異議を述べてもその異議は有効ではない(高松高裁1972年10月31日判決)。

  だが増改築を制限する特約がある場合はどうであろうか。
 実際の借地契約では増改築をする場合は地主の承諾が必要であり、承諾なしに増改築をすると地主は契約を解除出来るという特約条項がある。

 このような特約は建物が火災で焼失した場合にまで適用されるのか。
 借地法7条は、建物が滅失しても建物を再築することが出来ると規定している。7条の規定に反して再築を禁止する特約は、借地法11条の規定によって借地権者に不利なものとして無効とされる最高裁1958年1月23日判決)。

 従って増改築を制限する特約は火災・地震・風水害が原因で滅失した建物の再築までを制限したり禁止する趣旨ではないことは明らかである。判例も 「建物を新築する時は、地主の承諾を得る旨の特約があるとしても、この特約は、消失した建物を再築する際にも地主の承諾が必要である趣旨ではない」(東京高裁1958年2月12日判決)。

 このように増改築に制限のある特約がある場合でも火災によって建物が滅失し、それを再築する場合は地主の承諾は不要という結論になる。

 

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無断増築に対して法外な承諾料の請求 (東京・小平市)

2007年08月03日 | 増改築・改修・修繕(借地)

   無断で行った一部増築に
        地主から法外な承諾料の請求

 西武多摩湖線一橋学園駅近くで約31坪を借地しているYさんは、地主に無断で2階部分の一部を増築し、屋根の改修工事を行なった。

 契約書では、地主に書面で承諾を受けることになっていた。地主の代理人から、承諾料として更地価格の5%の236万円と、地代現在坪800円を一挙に1500円に値上げするよう請求を受けた。Yさんは、地主に無断で増築したことを謝りに行ったが、地主からは代理人と話し合うよう言われ、代理人の不動産業者と何度か会って書面のやり取りを行なった。

 Yさんは、新築でもないのに5%はあまりにも高額で路線価の2%程度の承諾料は支払う旨条件を提示したが、地主の代理人は承諾料の条件を譲らず、支払わないと契約を解除すると脅かしてきた。

 Yさんは、19年前の更新時に250万円の更新料を支払っている。Yさんから相談を受けた組合は、増築に関しては無断であるが、軽微の契約違反で契約を解除されるような、信頼関係を破棄する重大な違反ではないので、地主の代理人の請求は法外であり、地代も固定資産税等が月額坪220円なら、現行地代でも3・6倍と高額でこれ以上値上げする必要はないとアドバイスした。

 この不動産業者は、この近くの別の借地でも不当な請求をして、借地人から総すかんに会っている。組合から「軽微な違反に対する賃借人の提案した範囲内で話し合いによる解決を望んでいる」旨の通知を出したが、地主の代理人から何の返事もない。

 

東京借地借家人新聞より

 

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改築請求をすると地代を5倍にすると回答して来た (兵庫・豊岡市)

2007年05月10日 | 増改築・改修・修繕(借地)

 豊岡市内で戦前から借地(面積53坪)をしているAさんは、地主へ「建物を改築したい」と連絡したところ、平成元年に坪月あたり100円で合意した地代を500円の値上げを受けました。

 5倍もの値上げ請求に驚いたAさんは、全大阪借地借家人組合連合会(大借連)事務所(電話06-4802-8870)へ相談。

 そして、Aさんは、この間の固定資産税がどのようになっているのか調べるため、豊岡市の税務課へ固定資産税課税証明書の発行を請求したところ、同市は、「借地人には地主の委任状がなければ証明書を発行しない」と門前払い。

 大借連から豊岡市へ「平成14年4月から地方税法の改正によって借地借家人にも固定資産評価額を公開し証明書を発行することになっている」と指摘したところ、「借地人であることを証明する具体的な資料(たとえば賃貸借契約書)を提示しないと公開させていない」と回答。

 そこで、大借連は、契約書の無い契約の場合の対応について正したところこれも拒否。

 そこで、借地人の住民票および家屋の納税証明書と借地の所在地が一致すれば当該借地人であることが確認できるので行政サービスの視点から公開するように強く申入れました。

 その結果、Aさんの借地上の税負担は、前回の地代改定時に比べ坪月あたり概ね13円の増税であることが確認できました。Aさんは、税金が13円しか増えていないのに何故100円の地代が500円となるのかと地主へ申入れました。 

 だが、改築工事を早く進めたいこと等から取敢えず地代を200円に増額して昨年12月末に送金し、現在、建物の改築工事を進めています。

 

 

全国借地借家人新聞より

 

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建物建替えの非訟手続で新築する事が出来た (東京・八王子市)

2006年11月09日 | 増改築・改修・修繕(借地)

 八王子市大和田町で借地をしているOさんは、借地上の建物の建替えに関して地主との話合いが纏らず、裁判所へ建替えの代諾許可申立の手続を行っていた。それに対し、今年3月に東京地方裁判所八王子支部において建替えに関する和解が成立し、従来の建物を取壊し、そこに木造2階建建物を新築することが出来る事になった。

 Oさんの父親がなくなった以降から地主は頻繁に地代値上げ請求を繰返し、平成4年頃から地代の受取りも拒否され、法務局への地代弁済の供託を続けてきた。

 Oさんは今回の和解成立の2年前に自宅の改築を地主に申し入れたが、地主は地価の4%の承諾料、更新料として6%を要求された。地主の性格上、これ以上の条件と譲歩を求めた上で改築の許可を得ることは困難と考え、借地借家人組合とも相談して組合の顧問弁護士に依頼し、建替え承諾に関する借地非訟手続を行った。

 借地非訟の鑑定では、改築(新築)の申立は土地の通常の利用上相当と認められ、改築の承諾料を更地価格の3%(坪当たり約17000円)とし、地代の改定は不要として供託している現行地代が認められた。鑑定の結果通り和解が成立し、地主が契約書に挿入することを要求していた更新料支払特約は総て削除させ、平成30(20018)年2月まで期間とする借地契約書を締結した。

 

東京借地借家人新聞より 

 


 

 借地契約書に建物の増改築に制限を加える特約条項がある場合、借地人はどのような方法をとれば建替えができるのか。借地借家法17条は建物の建替えに果して有効なのか。立替を考えている方は、こちらを参考にして下さい。(東京・台東借家人組合)

 

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屋根の葺替え実行 (東京・江東区)

2006年08月09日 | 増改築・改修・修繕(借地)

    組合役員が付っきりで見張り
          屋根の葺替え実行
            地主の妨害全く受けず

 江東区東砂*丁目の借地でクリーニング店をやっているNさんは、建物の雨漏りがひどいので、屋根の全面葺替えをすることにした。

 地主は、地元では有名な強欲地主。Nさんは、かつて昭和63年の契約更新時に堅固な建物を建てる予定で更新料、名義書換料、借地条件変更料、増改築承諾料として僅か21坪で483万円もの大金を支払って30年間の契約書を作った。

 契約書には「5年以内に1回限り甲の承諾なしに建物の増改築を認める」と書かれているが、Nさんは増改築をしないまま他界され、5年の期限が過ぎてしまったため、せっかく支払った建替承諾料が無駄になってしまった。 

 そんな経過があって、今回の屋根の葺替えは、地主がどんな態度にでるか分からず、心配なので、組合の応援を受けて工事を進めることにした。

 7月18日着工。2日間で工事は完了した。工事中は組合役員が付きっきりで見張りをしたが、地主からは、なんの妨害も受けなかった。

 

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契約書に増改築に関する特約がないので (東京・小平市)

2006年07月29日 | 増改築・改修・修繕(借地)

  更新料は断わり、地代は相当額で供託中

 小平市小川西町で54坪を借地しているAさんは平成3年に地主から契約書を送りつけられ、契約の更新の名義変更料として200万円を請求された。都の相談室の弁護士に相談し、法律上根拠のない名義変更料と契約書の作成を拒否した。

 すると地主は、翌年の平成4年に地代を坪1100円から1400円に値上げしてきた。 Aさんはたまらず値上げを拒否し、坪1100円で地代を供託した。

 Aさんは母親と夫婦と子供3人の6人家族で、子供さんも成長したので、増築して子供の勉強部屋を作れないか思案し組合に相談をした。

 幸い、Aさんの最初の契約書には増改築の定めがなく、またAさんは東京都の職員で都の職員共済組合で地主の承諾書がなくても融資が可能であることなどから組合の紹介で住宅生協に工事を依頼した。

 工事は4ヶ月間かかったが、幸い地主の妨害もなく工事は順調に行なわれて完成した。子供達も自分の部屋が出来たと大喜びだ。

 

東京借地借家人新聞より

 

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非訟手続で建物を建替え (東京・大田区)

2006年07月21日 | 増改築・改修・修繕(借地)

 大田区池上4丁目のAさんは、親の遺産借地約60坪を継承した。
 しかし、地主は「親に貸したのでお前に貸した覚えはない」と、相続を認めようとしない。しかも地主は不動産業者に依頼して土地の返還を求める始末だ。業者に諌められて等価交換の話になったが、地主は業者の説得も聞き入れず、7割、6割の取り分を主張するので業者は手を引き、協議は決裂した。

 Aさんが望んでいた家屋建替えの承諾も再三にわたり拒否し、地代は供託するに至った。
  昨年、建替えの非訟手続を取ったが、地主は一度も出廷せず、今年の4月に承諾料が確定した。

  そこで、支払のため地主に連絡しても応じず、Aさんと組合役員が直接地主を訪ねたが地主はドアも開けずに受領拒否。Aさんは直ちに供託し、建替え工事に着手した。

東京借地借家人新聞より           

 

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借地での建替え (東京・大田区)

2006年04月19日 | 増改築・改修・修繕(借地)

 借地非訟手続で裁判所から 
   建替承諾の許可を得て2階建てを新築

 大田区北糀谷1丁目に居住する河原さんは、3年前に借地(約36坪)の更新料を支払い、更に近隣の平均よりも高額な地代への改定にも同意して更新契約を締結した。

 それは総て地主の建替承諾を得るためである。仲介の不動産業者が地主の言い値で更新料と地代値上げを認めるのであれば、引換え条件として地主の建替承諾許可の同意を取り付けるという提案があたからだ。当時、地主(5人の相続人全員)は建替承諾を口頭であるが、了承して共有賃貸人として合意したものである。

 河原さんは、建替えの挨拶をしたところ、共有賃貸人の1人から相続での取り分が少ないという理由で借地の返還を求められた。不動産業者に相談しても我関知せずの態度のため、組合に相談し入会した。

 早速、組合は借地借家法17条に基づく増改築承諾許可の非訟手続を裁判所へ申し立てた。増改築許可申立の際に、共有賃貸人の1人が死去し、その相続人4人が加わり計8人相手の申立となった。

 後日、裁判所の許可の条件は、更地価格の3%の承諾料ということで決定した。

 しかし、地主側は承諾料と地代の受領を拒否している。止むを得ず、それらは法務局へ供託している。

  地主の嫌がらせは続く、非訟手続申立の際に図面に塀の設置が書き込まれていなかったことに難癖をつけ、工事の妨害をするなどである。

 河原さんは、地主の妨害をはねのけて新築建物を完成させ、塀の工事も完了させた。 玄関脇の柿木は風雪に耐えて見事な実をつけた。

東京借地借家人新聞より

 


 借地借家法
 借地条件の変更及び増改築の許可
第17条 > 建物の種類、構造、規模又は用途を制限する旨の借地条件がある場合において、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更により現に借地権を設定するにおいてはその借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当であるにもかかわらず、借地条件の変更につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、当事者の申立てにより、その借地条件を変更することができる。

 増改築を制限する旨の借地条件がある場合において、土地の通常の利用上相当とすべき増改築につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、その増改築についての借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。

3 裁判所は、前2項の裁判をする場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、他の借地条件を変更し、財産上の給付を命じ、その他相当の処分をすることができる。

4 裁判所は、前3項の裁判をするには、借地権の残存期間、土地の状況、借地に関する従前の経過その他一切の事情を考慮しなければならない。

 転借地権が設定されている場合において、必要があるときは、裁判所は、転借地権者の申立てにより、転借地権とともに借地権につき第1項から第3項までの裁判をすることができる。


6 裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第1項から第3項まで又は前項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。
 
 (注) 借地権者=借地人   借地権設定者=地主
 
 

東京借地借家人新聞より

 

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建替えで和解 (東京・大田区)

2005年11月26日 | 増改築・改修・修繕(借地)

  地主が無理難題をいうので
         非訟手続を進めると和解を提案  

 大田区池上3丁目に所在する土地約91・68㎡を賃借する松島さんは、9年前の契約更新満了の際に地主より代理人弁護士を通して自己使用を理由とする更新拒絶を求められたが、これを拒否し法定更新にて今日に至った。

 一昨年秋に建替えの必要が生じたので、地主に承諾を求めるために組合役員同席で地主の弁護士と交渉を行った。その場での合意内容は地価については路線価を基準にすることだったが、その後地主は、松島さんの借地の場所からはかけ離れた商店街通りの路線価を基準にした計算方式で、松島さんの提示額の2倍強(400数10万余)の更新料と建替え承諾料を求めてきた。

 さらに、更新拒絶後も受領していた地代は5.2倍の増額請求だった。地価下落の現実を無視した信託銀行不動産部の調査に基づくものとして松島さんに提示してきたものだった。

 松島さんは限られた予算と今後支払う地代を考えると、こんな無理難題をいう地主代理人弁護士とは交渉は出来ないと、組合役員と相談のうえ借地非訟手続を申立てることにして、昨年の2月にその手続が行われた。

 同年10月に地価の3%との鑑定が裁判で示された。すると相手弁護士から承諾料に10数万円加算し100万円で和解したいとの申し入れがあったと組合顧問弁護士より連絡あり、松島さんは地主の意向を受入れてこの程和解が成立した。

 新年を迎えて、新築の工事に着工することになった。

 

東京借地借家人新聞より

 

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建替承諾料の支払なしで鉄骨住宅に建替え (東京・台東区)

2005年11月01日 | 増改築・改修・修繕(借地)

建替承諾料・借地更新料支払い無し

 

 地主との4年半に亘る裁判の末に、借地上に鉄骨3階建の自宅がやっと完成した。

 事件の発端は、地主側弁護士からの通告書であった。借地期限が後1年になったことから、建築計画を立て、建築会社の設計図も完成し、新築の準備をしていた矢先のことであった。

 地主側の通告書には、「通告人は、本書面を以って貴殿が本件土地上に於いて建物の新築・改築又は増築を行わないよう請求致します」と記されていた。

 ところが、裁判の始まる5年前に「貸地上に建築計画上の住宅・店舗の建築に際して更新料・承諾料の要求は一切致しません」と言う直筆の実印が押された念書を地主から貰っており、地主からは既に建物建築の承諾を得ていたにも拘らず、このような建築中止の通告である。地主の悪どい遣り方に納得が出来ず裁判に訴えた。

  地主の敷地は借地部分を含めると約250坪で奥に長い四角形である。言問通りに面し、その南側にある。言問通りに面した部分〈約70坪〉に借地人の4軒の建物が建っている。従って地主の土地はその一部が言問通りに面し、L字形をしている。土地の殆どは借地人達の建物の裏(北)側にある。

 地主は裁判が始まる5年前に住宅金融公庫から建築資金を得て、5階建の賃貸マンションの建築を11月から始めた。ところが、地主の敷地内で工事が行われていれば何ら文句は無い。しかし、4軒の借地人の同意も得ずに、その借地内に勝手に入り込んで無断で足場を組み、あまつさえ借地部分に60㎝以上も喰い込んで鉄板で囲い始めた。公庫と建築会社に敷地の無断使用を抗議した結果、工事は全面的にストップした。

 公庫・建築会社と借地人との話合いの過程で、山留めのH鋼が借地人の敷地内に16本打ち込まれる計画であることが判明した。敷地外にH鋼を移動することは、現在の建築面積が採算ラインぎりぎりであって、これ以上建築面積の縮小は採算ライン以下になり工事の全面見直しとなる。H鋼の移動は不可能である事も解った。公庫は地主の杜撰な建築計画に常識外れと呆れていた。

 公庫は地主に対して、借地人のとの間で工事に関する同意が得られない場合、且つ12月中に着工出来ない場合は、融資打ち切り・建築中止を勧告すると通告した。

 地主は建築中止を怖れ、借地人が要求する内容の念書を仕方なく書いたのであるが、借地人としては16本のH鋼 の打ち込みを容認する代償として念書を得たのである。

 裁判が始まると地主側は木造建物の建築承諾はしたが、堅固建物の建築承諾はしていないと反論してきた。だが、裁判の結果は非堅固建物から堅固建物への変更を認め、30年の借地契約で鉄骨3階建の建物へ建替えることを認めた。地主が書いた念書通り建替承諾料・借地更新料共に支払わずに済んだ。

 建築資金は店舗併用住宅なので国民生活公庫から融資を受けて、裁判から2年後に建物は完成した。

 

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