蘭Fontanaレーベルから1960年前後にリリースされたと思わしきジャズ・メッセンジャーズのEP作品。例のモーニンのリリース直後である58年末に渡仏していた時期のFontana音源を集めた編集盤で、実況録音の隠れ名盤である「オリンピアのジャズ・メッセンジャーズ」から2曲、「殺られる」のサントラから1曲が収録された一枚です。とにかく何はなくともA-1のタイトル曲が余りに素晴らし過ぎ。間違いなくジャズ史に残る屈指のバラード名演でしょう。この2年前に亡くなったクリフォード・ブラウンを偲びつつ、次の時代を担うリー・モーガンのためにゴルソンが書いたナンバーで、モーガン自身のブルーノート3作目でも披露されています(こちらも昔から大人気)が、やはり実況録音と言うことでこちらは臨場感が一味違います。演奏はほとんど当時若干20歳のモーガンによる独壇場状態ですが、この終始むせび泣くトランペットの音色に耳を奪われぬものはいないはず。昔ながらの渋めなジャズが好きで、この演奏が嫌いな人は恐らく存在しないでしょう。当時どの程度リリースされたのかは知りませんが、この曲をタイトルに持ってきた上に、独自の素晴らしいジャケット・デザインでEP化した蘭Fontanaレーベルは偉いと思います。また、B-1に収録されたLa Divorcee de Leo Fallは、この時期のメッセンジャーズとしては珍しい優雅なワルツ・ナンバー。前述の通り、元は「殺られる」のサントラに収録されていた曲で、実は以前そちらでもレビューしたことがあるのですが、こちらの盤で聴くと不思議なことに、まるで初めからこの形でリリースされることが必然だったかのように聞こえてくるのだから面白いものです。なお言うまでもなく、演奏しているのは全員本場アメリカの出身者ですが、録音された場所がパリであり、しかも良い意味でファンキーさを感じさせないプレイになっているおかげで、個人的には非常にヨーロッパの雰囲気を感じる一枚。おまけにそんな気分に拍車をかけるのが、この独特の色遣いによるブルーのジャケット。最近あまりレコードを買っていませんが、こういう盤を見かけるとやはり、自然とつい手を伸ばしてしまいます。
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