At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

The Girl From Ipanema / Jimmy Davis And Norma Lee

2007-05-03 | OST / Library
USのイージーリスニング系レーベルWyncoteに64年に吹き込まれた1枚。何年か前に一部で話題になったので、ジャケットに見覚えのある方もいるのではないでしょうか。聴くところによるとジャイルス・ピーターソンのフェイバリットだそう。内容的にはA面が女性シンガーのノーマ・リーをフィーチャーしたボサノバ、B面がインストのラウンジ・ジャズという構成になっています。そもそもの用途がイージーリスニング用という性質上、ジャケットには大したクレジットも記載されておらず、演奏者等ほぼ謎に包まれているのですが、裏ジャケに書かれた僅かな解説によると、どうやらジミー・デイヴィスというサキソニストを中心に製作されたアルバムの模様。ただ、B-1に収録された人気のJasmineは、基本のトリオにヴァイブ+パーカスのみを加えたクインテット編成での演奏となっているので、その辺りの事情はやはり良く分かりません。最もジミー・デイヴィス自身がタビーのようにヴァイブとサックスのバイ・プレーヤーだったという可能性もありますが。さて、その人気曲であり、かつ夜ジャズ<裏>にも収録されていたJasmineですが、ラテン・フレーバーの香る上品なボサジャズに仕上がっていて良い感じ。各種ガイド本にも書かれているように、クラーク=ボランによるスモール・コンボ時の演奏にも似た雰囲気で、一聴しただけではユーロ産かと錯覚してしまいそうな一曲になっています。ただ、今の気分としてはこの曲より断然B-2のFive To Four。これまた思わずサヒブかと錯覚してしまいそうなフルートがリードする、偽クラーク=ボラン楽団なエレガント・ナンバー。タイトルにある5拍子から4拍子への転調もスムーズで見事です。他の曲も程度に差異こそあれ、どれもMusic For The Small Hoursにそっくりな仕上がりになっていて、かなりレベルの高い完成度を誇っています。またA面のボサノバも良く、中でもA-4のSomewhereがお気に入り。クラブで即戦力という類のレコードではありませんが、家でしっとり一枚通して聴くには結構オススメ。特にこれからの季節のBGMとしては非常に打ってつけなのではないでしょうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Southern Horizons / Joe Harriott Quintet & Sextet

2007-05-02 | Hard Bop & Modal
ジャマイカ生まれのアルト奏者Joe Harriottによる60年の米Jazzland盤。最も本作は先に英Columbiaからリリースされていた2枚のEPに、当時の未発表曲を加えて米Jazzlandでプレスされたものなので、そう言った意味では本当の原盤は英Columbiaになりますが…。ただ、Columbiaから出ているEPは非常に希少な上、未発表曲の方は本作でしか聴くことが出来ないので、充分に買う価値のあるレコードだと思います。その未発表曲のうちの一つであるA-4のタイトル曲は、2管のクインテットにボンゴを交えたパーカッシヴなアフロ・キューバン・ナンバーで、ジャズDJ諸氏からも人気の高い1曲。若者向けのレコード屋などでは、大概この曲がプッシュされているようです。ただ、個人的に考える本作の真の魅力は、むしろこのタイトル曲以外というか59年のBlue Harriottセッション。どこか不穏な空気と張り詰めた緊張感を同時に感じることの出来る、非常に魅力的なハードバップに仕上がっています。以前ここでも紹介したDizzy Reece(彼も同じくジャマイカ出身)のTempo盤にも通じる世界観と言ったところ。中でも取り分けA-2のCount Twelveが抜群に格好いいです。シルヴァーを取り上げたA-3のSenor Bluesや、アップテンポで迫るA-1のStill Goofin'辺りも完成度が高め。60年前後における英国式ハードバップの魅力を、ギュッと凝縮したかのような仕上がりを見せています。また、これは59年のセッションではないですが、B-4のTuesday Morning Swingも高速4ビートでブルージーにスウィングするナンバーでなかなか。Tempo期のタビー・ヘイズとか好きな人ならば気に入るのではないでしょうか。いわゆるクラブ・ジャズ的なものではなく、しっかりとしたハードバップを聴いてみたいという人の玄関口にもオススメ。米盤と言うこともあり、おそらくこの辺りの欧州ジャズの中では比較的容易に手に入れられる盤かと。最近は少しずつ値段も上がってきてしまってるみたいですが。ちなみにハリオットはこの数年後、インド音楽とジャズとの融合を試み、そのまま徐々に精神世界の住人になってしまいます。スピリチュアル・ジャズ方面では、そちらのIndo Jazz~シリーズも需要があるようですが、個人的にはやっぱりちょっと苦手ですね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

The Jutta Hipp Quintet / Same

2007-05-02 | Hard Bop & Modal
少し久しぶりの紹介となるブルーノート盤。例の有名な1500番台がスタートする以前、10インチでリリースされていた5000番台というシリーズの中の一枚です。一般にブルーノートと言うとブレーキーやシルバー、それからモブレイなどを始めとしたファンキーな黒人ジャズのイメージが強いと思いますが、実はこの5000番台の頃は白人のレコードも何枚もリリースしていて、本作もそんな白人作品のうちの一つ。リーダーのユタ・ヒップはドイツの女性ピアニストで、この作品が縁となり後に半年間と言うごく短い間だけアメリカでも活動していたそうです。サイドを務めるのも全員ドイツ人。クラブ世代のリスナーである僕にとっては、Yogi Jazzで知られるヨキ・フロイントと、マンゲルスドルフ兄弟の兄エミールが2管でフロントを務めているのが興味深いところですね。ちなみに録音自体も西ドイツで行われていて、ブルーノート初の海外録音作品ということになるみたいです。54年の吹き込みということもあって、さすがに演奏スタイルはやや古い感じもしますが、ウエストコースト風のいかにも白人と言った趣きのジャズをやっていて、部屋で聴く分にはなかなかに悪くない雰囲気。急速調で軽やかに飛ばすB-2のBlue Skiesなど、最初期のバッソ=ヴァルダンブリーニ楽団にも通じる演奏になっているので、ヨーロッパにおけるモダン・ジャズの原点を知る意味で聴いてみてもいいかもしれません。僕のお気に入りはピアノ・トリオで演奏するB-1のWhat's New。いつ聴いてもユタ・ヒップが奏でる優しいピアノの音色に癒されます。特に今日みたいな雨降りの夜には、部屋で静かに聴くのにぴったりなのではないでしょうか。なお、年配層には古くから人気のある一枚なので、オリジナルで買うにはなかなかに高価だと思われます。8年ほど前に東芝EMIの企画で原盤に忠実な10インチ仕様で復刻されているので、ご興味のある方はまずこちらでどうぞ。ちなみに何度か12インチ化もされているようですが、やはりファンならばここは10インチで持っていたいもの。そう言えば数ヶ月前のジャズ批評誌の10インチ特集でも表紙に使われていましたね。クラブ的には全く使えないレコードですが、パッケージ含め個人的に好きな一枚です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする