このブログでは久々となるサントラ紹介。62年に公開された「フランス式十戒」という映画のサウンド・トラックとなる7インチです。モーセの十戒をフランス風に皮肉ったコメディ映画らしく映画自体はそこそこ有名なもののようですが、サントラとなるとなかなか手に入らないものだったりします。A面とB面で音楽を手がけた人が違う現代で言うところのスプリット盤でGeorges Garvarentzなる人が手がけるグルーヴィーなジャズ風のA面も良いのですが、やはり出色の出来と思われるのはB面のGuy Magentaサイド。と言うよりもB-1のNotre Sambaが奇跡としか言いようのない最高のお洒落フレンチ・サンバ。哀愁に満ちながらどこまでもグルーヴィーなオルガンとパーカッシヴなリズム隊、さらに中盤からはハンドクラップと♪ラララ~という女性コーラスまで加わって込み上げ度は無限大。フリーソウル経由のカフェ・ミュージック・ファンならば確実に一撃でノックアウトされること間違いなしの大名曲です。おそらく7インチのフランス盤でしかリリースされていないために手に入れるのは困難かと思われますが、それでもぜひ聴いてもらいたい珠玉の一曲です。夜明けも間近なパーティーの終盤でこんな曲が流れてきたら気持ちいいですね。小洒落たジャケットも最高です。
真っ赤なジャケットが印象的なイタリアのラウンジ・ジャズ~イージー・リスニングの名盤にして人気盤。とりあえずレコードのどこにもクレジットがないので詳細は良く分からないのですが、このAngel ''Pocho'' Gattiなる人はイタリアのオルガン奏者のようで、他にも何枚かライブラリー作品などを残しているらしいです。この盤と言えばイルマのコンピにも収録されたB-1の高速ラテン・ジャズダンサーのKashbaがやはり抜群に素晴らしい。洗練されたピアノと突き刺さるようにシャープなホーン隊、打っているドラムに音抜けの良さまでパーフェクト。ここまでクラブ映えするジャズっていうのも珍しいと思います。ただアルバム通して聞いてみると、クラブと言うよりもカフェで聴きたいようなラウンジーな楽曲が大半を占めていて、Kashbaのような曲はむしろ全体からしたら異色という感じ。最も須永氏Organ b. Taro 4にも収録されたA-3のThe Happy Zooのような涼しげなボッサから、とびきりメロウなB-4のTo My Loveみたいなフュージョンまで基本的にはラウンジーながらもしっかりグルーヴ感に満ちているのですけれどね。夕暮れ時から真夜中までよく似合いそうなメロウなエレピの音色が心地よい僕にとってのリゾート・ミュージック。夏の夜の浜辺で聴いてもトロピカルな気分に浸れて気持ちよさそうですね。簡単に手に入るというわけではないですが、自信を持ってお勧めできる逸品です。
前述した12インチのFour Songsが大人気の80's UK産のフェイクジャズ・グループによるLP。やっぱり曲単位で言ってしまえばTrickeryに適う曲はないのですが、こちらのアルバムもなかなかの快作に仕上がっています。全体的に気だるくアンニュイな作品で、ヴォーカルがFour Songsでの録音時に比べてさらに低くなっているために、LPを一枚通しての印象はとてもダーク。曲調的に明るいものがないわけでもないのですが、この低音ヴォーカルが入るためにどうしても暗くなってしまいます。ただ、別にそれが悪いと言っているわけではなく、特に今の時期など梅雨で鬱々としている気持ちで聴くと見事にハマったりするので不思議。特に気に入っているのがA-3のGreen Dolphin Sheetという曲で、程よくネオアコ・テイストが混ざったフェイク・ジャズ・ボッサといった感じ。わりとベースラインがしっかりと入っているせいか、どことなくTwo Banks Of Fourなんかに近い印象も受けます。サバービア誌で「早すぎたウェスト・ロンドン」と評されていますが、たしかにその通りかもしれませんね。ボッサ風変拍子のB-2、Start The Melodyもなかなかクールで良い雰囲気。ちなみにCDではFour Songs収録曲とセットで売られているみたいなので、興味があればそちらでどうぞ。
アメリカ西海岸はサンフランシスコの女性ヴォーカリストKitty Margolisが、1989年に自主レーベルからリリースしたデビュー盤にして傑作ライブアルバムです。僕は詳しいことは良く知らないのですが、どうやらJoyce Coolingと共にあのIt's Youを共作しているのが彼女だそうで、2001年にリリースした作品ではJoyce Cooling自身を迎えてIt's Youを再演していたりもするらしいです。さて、このアルバムではそんな彼女が洗練されたピアノ・トリオをバックに素晴らしい7つの演奏を聴かせてくれます。選ばれている曲はいずれも昔ながらのスタンダードばかりなのに、少しも古臭さを感じず逆に新鮮に聴こえるのが不思議。真夜中のカフェで映え渡りそうな高速ジャズボッサにアレンジされたA-1、I Concentrate On Youの込み上げ方は尋常ではないです。Bobbe Norris辺りを始めて聴いた時にも近い感触。途中のバップ・スキャットや長いドラム・ソロも良い雰囲気が出ているし、何より聴いていて客との一体感を感じられるのが素晴らしい。そしてもう1曲とても気に入っているのがB-1のWith A Song In My Heart。軽快にスウィングする高速ジャズ・ワルツの名演です。高層ビルから夜景を見下ろしながら聴いてみたいと思う曲。ちなみにCDでもリリースされている模様、と言うよりも年代的にCDのリリースが主だと思うので、逆にアナログの方が手に入りにくいかもしれません・・・。でもこの音はぜひアナログで持っていたい一品です。
このブログ的なジャンル分けだと、こういう曲ってどこに位置づければ良いのかイマイチ分からないのだけれど、とりあえず去年辺りに世界中の音楽ファンを震撼させた天才少女による限定7インチです。アルバム自体のリリースはたしか去年で、大手の外資系CDショップなどでプッシュしていた記憶はあるんだけれど、そこからのカットとなるこのピクチャー仕様の7インチが出たのはわりと最近の話。正直僕自身アルバムのジャケには見覚えがあったものの、このシングルがリリースされるまできちんと聴いたことありませんでした。そしてたまたまJet Set下北沢で目に留まり試聴してみたら、これが個人的に大当たり。今さらYoung-Holt UnlimitedのSoulful Strutだなんて反則級の特大ネタ使いだとは思うのですが、ここまで上手に料理されたら降参というしかないです・・・。純粋なロック・ファンやR&Bファンよりも、サバービア~フリーソウルが好きな人が歓喜しそうな2005年版のAm I The Same Girlというしかない好内容。かく言う僕もこういうタイプのネタ使いには本当に弱いです。この7インチは限定らしいですが、アルバムは多分少し大きなお店に行けばどこでも買えると思うので、ぜひ聴いてみてください。久々にクラブ畑以外の新譜に心を動かされました。
ブラジル人ピアニスト兼ヴォーカリストのタニア・マリアが81年にConcord Jazzに残したアルバムで、僕の中でのブラジリアン・ジャズの金字塔的作品。とにかくA-1のTranquilityが奇跡としか言い様がない出来の良さです。タイトル通り静寂に始まるイントロの繊細なピアノが流れた瞬間、周囲の雰囲気が一瞬にして変わってしまうという魔法のような一曲。曲は次第にヒートアップして、彼女自身のピアノとスキャットがユニゾンで駆け抜けていく怒涛の展開へ。当時ヒップホップに飽きを感じ始めていた僕が、初めてCafe Apres-Midiのコンピで聴いたときには本当に衝撃を受けました。言葉には上手く出来ないけれど、聴けば聴くほどにうっとりするほど良い曲です。そしてA-2のImagineカヴァーもかなり良いです。静かだけれどジャジーなImagine、僕はSvante Thuressonによるヴァージョンも大好きなのですがそれに匹敵する素晴らしさです。天にも昇る心地よさとはこのことを言うのでしょう・・・。そして真夜中に都会の喧騒を優しく暖かく包み込むかのようなA-4の2 A.M.も永遠の名曲。至福のベッド・タイム・ミュージックです。CDでもリリースされているし誰でもわりと簡単に手に入れられると思うので、絶対に聴いてもらいたいアルバムの一枚。ただサバービア掲載の関係でアナログは無駄に高かったりしますが・・・。探していれば1000円~1500円であると思うので、無駄に高いお金を払わないようにご注意ください。大推薦版です。
先月のG/9 GroupやMichael Naura Quintetに引き続き、今月もまたとんでもない激レア盤が再発されました。数々の傑作を残しているギタリストSebastiao TapajosがMaria NazarethとArnaldo Henriquesという2人のヴォーカリストを向かえてアルゼンチンで録音したボサノヴァ最高作。正直なところ僕はボサノヴァとかブラジル音楽に関してはジャズやソウル以上に詳しくなくて、だから定番がどんなアルバムだとかそういうことは分かりません。もともと、それほど熱心に聴き込んでいるというわけでもないので、ブラジル関連の高額レア盤なんかも買ったことないです。僕の持っているブラジル盤は基本的にみんな安い再発盤。でも、それはそれで良いと僕は思うのです。ブラジル音楽ってのは僕にとってリラクゼーション・ミュージック。少し遅く起きた朝やのんびり時間がある夕方に自然な雰囲気でかけていたいんですよ。あまり真剣に聴くものではないので、わざわざ高い金を払う必要性を僕はあまり感じないんですね。しかもブラジル音源って盤質悪いもの多いし・・・。まぁあくまで価値観の問題でしょうけれど。さてさて、このアルバム全体を通して良いですが、やはり白眉はA-4のSambachiana。2人のヴォーカルの掛け合いが素敵な高速ボッサの傑作です。こういう気持ちの良い曲を、よく晴れた夏の日に聴いていたいものですね。ピアノが綺麗なB-3のVoy Por Ahiも好きです。こちらは切ない夕暮れかな?
Japanese Hiphop界のオリジネーターYou The Rockによる3年ぶりのニューアルバムからの1stカット。長年在籍していたCuting Edgeを離れた後の彼は、これまでのハード・コアから一転して急激にポップ・サイドへアピールしてくるようになりました。本来的に狭い殻・身内ノリに閉じこもりがちな国内ヒップホップの輪から簡単に抜け出し、プロデュースにも小西康晴やFantastic Plastic Machineなどクラブ・サイドの人間を積極的に起用。最もその一方で従来のHiphop畑の人間との交流も決して忘れることなく、MuroなどJ-Hiphopを牽引するトラックメイカーとの仕事もしっかりとこなしているのが凄いところ。彼はまさにメジャーとマイナーの垣根を飛び越えた真のエンターテイナーと呼べるでしょう。さて、これはそんな彼の最新シングルで、プロデューサーにBuddha BrandのDev Largeを迎えたアルバム中もっともオシャレなナンバー。ダバダバ・コーラス&ファンキーな(おそらく)ヨーロッパ産レア・グルーヴのサンプリングが病みつきになります。そして注目はこの盤のみ収録となるInfrenced Jazz Remixと名付けられたSunaga t Experienceによるリミックス。原曲の持つグルーヴはそのままに、太宰百合を中心としたクインテットで完全生音演奏でオシャレ度&ゴージャス度120%増しの素晴らし過ぎるリミックスです。ホーンのユニゾンが格好良過ぎ。ぜひ聴いてみてください。
アルト・サックス~フルート奏者として有名なバド・シャンクと彼のバンドによるルグラン・カヴァー集。なんとアレンジを手がけているのはルグラン本人で、「シェルプールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」「華麗なる賭け」という彼の代表作である3本の映画から選りすぐった曲を、小粋なビッグバンド・ジャズ・アレンジでカヴァーしています。これらの映画は当時から人気だっただけでなく、90年代以降のいわゆる渋谷系によるサントラ・ブームにおいてもサウンドが高く評価されたアルバムなだけに、それらのジャズ・カヴァーというのはサバービア・ファンにとっては嬉しい限り。アメリカ録音と言えどルグランが手がけているだけに全体的にオシャレな音なのですが、なかでも特筆して素晴らしいのはロシュからの3曲でしょう。人気のB-5、Chanson Des Jumellesは疾走感溢れるビッグバンド・ジャズ・アレンジ。ボトムの音が脆弱なのでクラブ・プレイには不向きかもしれませんが、昼下がりのカフェで聴くには最高のナンバーです。さらに僕がこの曲よりも気に入っているのがA-5のChanson De Solange。イントロのドラム・ブレイクからしてとてつもなくオシャレなサニー・ジャズに仕上がっています。ちなみにこの盤はロシュ関連の中では最も安く手に入れやすい部類に入る一枚なので、興味のある方はぜひレコード屋に足を運んでみてください。Cafe Apres-Midi以降のサバービアが好きな方は必聴の一枚です。
1983年にオランダTimelessに吹き込まれた本作は、ユーゴスラビアのマルチ・サックス奏者Milivoj Markovicとトランペット&フリューゲル・ホーン奏者Stjepko Gutによる双頭セクステットによるハードバップ~モーダルな一枚。ケニー・ドーハムのカヴァーとなるA-1、Asiatic Raesが文句なしの格好良さを誇ります。テーマ部分も勿論ですがバピッシュに飛ばす各ソロがダンディズムと哀愁に満ちた演奏で、ヨーロピアン・ジャズ好きの琴線を見事についた名演。終盤でテンポ・ダウンするのが若干残念な気もしますが・・・。モーダルなボサノヴァ、B-2のStep 5もオリジナル曲ながらなかなかに粋な一曲。パーティーが終わった後、明け方のフロアでこんなのがかかっていたら気持ち良さそうですね。最近はボサノヴァでもこういうどことなく哀愁が漂う曲の方が気分なのかもしれません。年代が比較的新しいのに変な80'sっぽさをあまり感じない録音も高ポイントですね。そして何よりこの美しいジャケットが個人的には一際目を惹きます。ジャケ違いのユーゴスラビア盤もあるようですが、やはりこのジャケットの美しさには適いません。本来的にはレアな盤なのかもしれませんが、最近D.M.R.がデッドストックを大量に入手した模様。この辺りのヨーロピアン・ジャズ好きはなくなる前に買っておきましょう。なかなかのお勧め盤です。