世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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2012年度予想「外貨動揺・円独歩高」でどうする日本④

2012-04-10 00:02:34 | 日本

(前回からの続き)

 財政政策に話を戻しましょう。

 先に仮定したように、財政出動による需要創出策をさらに強化、たとえば5兆円程度公共事業予算を増額すると、GDPが約500兆円弱ですから単純に1%あまり成長率が高まる計算となります。さらに、建設業やメーカー等の収益が拡大→失業率低下・市民の所得向上→消費の拡大→景気の一層の回復、という、いわゆる乗数効果が加わるでしょうから、さらなる成長率の伸びや2年目以降の持続的な経済成長も期待できます

 こうして景気が良くなってくれば、法人税や所得税などの税収も増えてくるでしょう。いま議論沸騰の消費税増税は、こうした一連のプロセスを経た後、そして世界的な金融の混乱状態が落ち着きを見せた後、景気がある程度熱を帯びてきてからでよいのではないでしょうか。
(ちなみに、欧米諸国の混乱がどのように収束するのか、私にはなかなかイメージが沸きませんが、ひょっとしたらユーロ圏は分裂し、たとえば北部欧州通貨とPIIGS諸国通貨などといった新通貨が登場するような可能性があるかも、などと想像しています)

 とういうわけで、流動性のワナに陥っているときには金融政策の効果は乏しいが、クラウディングアウト(国債大量発行で金利上昇)が発生していなければ財政政策の有効性は高まる」という、マクロ経済学の教科書どおりの政策案を提示してみました。世界経済が恐慌に近い状態に陥ったら、わが国は、難しいことを考えず、本当にこの教科書どおりの政策を実行すればよいと思っています。

 (言い方は適切ではないかもしれませんが、)いまはまさに世界的な金融動乱の幕開け前。つかの間の外貨フィーバー(ドル・ユーロ・新興国通貨高/円安)のあとは、未曾有の外貨危機がやってくるでしょう。インフレ以外の手の打ちようがない諸外国に比べ、わが国には複数の政策を選択することができる余地があると思います。

 どうやら外貨のほうが先に規律を失い、どんどん増刷されて価値を落としていきそうなトレンドのなか、円・日本国債の暴落(=外貨・外債の暴騰)はまず考えられないので、極端な政策的失敗(財政を超緊縮型にしたり、大規模な円売り・外貨買いや、諸外国の金融緩和に付き合って円を大増刷するなど)さえしなければ、わが国はこのシビアな局面を何とか乗り切っていけるだろうと予想しています。

(「2012年度予想「外貨動揺・円独歩高」でどうする日本」おわり)

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2012年度予想「外貨動揺・円独歩高」でどうする日本③

2012-04-08 08:41:41 | 日本

(前回からの続き)

 それではつぎに金融政策とは別なオプションを考えてみましょう。財政政策です。つまり、政府が公共事業等を実施することで需要を生み出すというものです。

 4月5日、東日本大震災からの復興事業を盛り込んだ平成24年度予算が成立しましたが、その内訳を見ると公共事業関係予算は総額で約5.3兆円(うち復興関係7千億円あまり)となっています。たとえばこれを10兆円くらいに増額し、さらに同規模の社会資本整備を2~3年程度継続し、国家事業として地震や津波に強いインフラの整備などを進めます。このための財源は税収と、足りない部分は国債を発行して賄います。

 ただでさえ巨額の財政赤字を抱えているのに、さらに国債を発行したらますます赤字額が膨らんでしまい、金利が上昇してしまうのでは、という心配はこの局面では無用でしょう。なぜならば、世界的な金融不安が高まれば高まるほど、先に示した図式「円←ドル←ユーロ←新興国通貨」に基づき、マネーが安全資産へ、つまり円・日本国債へと引き寄せられるからです(追加的な国債発行で円安に振れる可能性がありますが、それを上回る勢いで外貨が大量に増刷されるため、通貨供給量の比較などからみても過度な円安にはならないだろうと想定しています)。

 外貨と異なり、相対的に規律ある通貨管理が保たれている円建ての日本国債だからこそ、金融危機に揺れる世界からの買いを集めるため、低金利での発行が可能となるでしょう。別な言い方をすれば、わが国は世界金融危機を逆手にとって低金利で資金調達をすることができる有利な立場にいるのです。

 もっとも、こうした状況では多くの外国人が外貨を売って日本国債を買うでしょうから、日本国債の外国人保有率が高まり、日本国債の安定度の基盤をなす自国民保有率(現在90%超)が下がるかもしれません。

 しかし、格付け会社の日本国債の格付けは、AAA格のドイツ国債や英国債、AA+格の米国債などよりも低いAA-(S&P)程度(個人的には、金利の低さなどからみて主要国債のなかでは最高格と思っていますが・・・)。この格付けの「低さ」が逆に幸いして(?)、外国人の日本国債買いはある程度のレベルにとどまるのではないかと予測します。

 一方で、外貨投資などで大損をしたジャパンマネーの多くが日本国債に回帰すると予想されるため、結果として日本国債の自国民保有比率はそれほど下がることはないだろうとみています。

(続く)

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2012年度予想「外貨動揺・円独歩高」でどうする日本②

2012-04-07 00:00:51 | 日本

(前回からの続き)

 おそらく、欧米諸国は、過剰流動性が引き起こした激しいインフレ資産・所得の格差の一層の拡大によって投資や消費が大きく落ち込み、厳しいリセッションに見舞われるでしょう。欧米諸国への輸出依存度が高い新興国経済も同様に激しく混乱するでしょう。それこそ世界恐慌に近い状態です。

 このようなときは、わが国としてはとても外需に頼れない状況となります。したがって内需を一段と振興させる必要が高まるものと思われます。

 そこで、まず考えられるのは、金融政策でしょう。おそらく、円高が進むにつれて「円高=悪」の観点から日銀に対して新たな金融政策を求める声が高まるでしょう。結局、日銀は2月に続いて大規模な金融緩和(第2弾)をせざるを得ない状況に追い詰められる可能性が高いと思います。

 本来、金融政策で期待されるのは、低利資金の大量供給→企業の設備投資が増加→企業の収益が増加→市民の賃金・給与が増加→消費拡大→景気回復・・・といった効果でしょう。

 しかし、わが国の企業は、バブル崩壊から長い期間にわたってバランスシートの改善に努めてきたこと、またこの間に多くの企業がM&Aや設備投資を自力で行えるほどのキャッシュを蓄えてきていること(非金融法人の現金・預金総額は約205兆円[日銀2011年])、などから、現状、企業側には資金需要はそれほど多くないと考えられるため、こうした流れは太くなっていかないでしょう。つまり、新たに流動性を供給しても民間投資や消費を刺激することがない、いわゆる「流動性のワナ」とよばれる状態になっていると考えられます。

 そのなかで、金融緩和の効果をしいてあげるとすれば、金融緩和でマネーサプライ増加→円安→輸出企業の業績回復の思惑から外国人が日本株買い→株価上昇→資産効果で景気回復・・・といったところでしょう。

 しかしこの効果も限定的と考えられます。わが国の家計の金融資産のうち株式等の占める割合は約12%(日銀2008年)程度に過ぎず、こうした株価上昇の恩恵は十分とはいえません。それに、3月末時点でも日経平均は1万円程度。バブル期の最高値(1989年の38,915円)の約1/4あまり・・・。この程度の水準では含み益が増えたどころか含み損がやっと少し減ったという人々のほうが多いくらいかもしれません。

 さらに、上記のような経済情勢から、欧米諸国の金融緩和の圧力はたいへん強く、日銀が多少の金融緩和をしてもますます外貨が増刷されて為替が円高/外貨安に振れる可能性が高いでしょう。そうなれば外国人がふたたび日本株を売却する動きに出ると想定されるため、株価の安定した上昇はなかなか望めません。

 むしろ、一層の金融緩和には、先日ここで書いたような副作用、つまり円安にともなう資源価格等の上昇等に起因するインフレという悪影響をもたらす心配があります。3月下旬、アメリカで講演した日銀の白川総裁は、この副作用、つまり金融緩和が引き起こすインフレの危険性について言及しています。いまのところ日銀もさらなる金融緩和には慎重であるようです(いまの主要国の中銀総裁で、こうした金融緩和のマイナス面を堂々と指摘できるのは白川総裁くらいかもしれません)。

 こうしてみてみると、外貨危機がもたらすと予想される事態への対処法としての金融政策には効果がそれほど期待できそうにありません

(続く)

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2012年度予想「外貨動揺・円独歩高」でどうする日本①

2012-04-05 00:03:54 | 日本

 2月中旬の日銀の金融緩和から3月までの世界経済におけるマネーの流れは、いわゆる「リスク・オン選好」となっています。

 ギリシャに対する二次支援が決定され、とりあえずギリシャの無秩序なデフォルトは回避されました。危機が遠のいたということでユーロが買い戻されて円・ドルに対して上昇しました。

 またここ数ヶ月程度続いている雇用統計の好結果(失業率低下・新規雇用者数の増加)などから、アメリカの景気が回復しつつあるとする見方が強まってドル高・円安となり、1ドル83円前後にまで上昇してきました。ユーロ圏が落ち着いてきたことなどを受けてブラジル・レアルなどの新興国通貨も高くなっています。

 しかし、まもなく次のようなフローに転化するとみています。「リスク・オフ選好」です。

 円←ドル←ユーロ←新興国通貨

おそらくきっかけはまたもやユーロになりそうな気がしています。4月から5月にかけてギリシャやフランスで選挙が予定されています。その結果、ギリシャの新政権がEU諸国との合意に反して緊縮財政政策を見直すような動きに出たり、あるいはフランスでEU統合に否定的なオランド氏が現職のサルコジ氏に替わって大統領になる可能性があります。そうなったらユーロはたちまち動揺するでしょう。

 そして今年度もPIIGS諸国の債務問題から目が離せません。ギリシャの財政情勢に加えて、直近ではスペインに対する不安感も高まってきました。2011年の対GDP財政赤字が目標値6%に対して8.5%となり、今年の同目標も当初目標達成を早くも断念するなど、ジワジワと財政状態が悪化してきています。PIIGSのいずれの国々も、厳しい経済情勢のもとでマイナス成長は避けられず、税収も伸びないし国債金利も高まって、自力での資金調達がさらに難しくなっていくでしょう。

 いずれ、PIIGS諸国は自国債を持つ民間金融機関に対してギリシャと同率程度の債務カットを要求する可能性が高いと推測しています。「ギリシャに対して借金棒引きに応じたのだからわれわれの借金も同率で棒引きしろ」といった理屈です。まさにモラルハザードです。

 結果として、これらの国債を大量に保有する欧州金融機関のバランスシートが著しく悪化します。一部の銀行等は破綻あるいは過小資本に追い込まれ、公的資金の注入が真剣に議論されるでしょう。また貸し渋りが一層強まって金融システムが機能不全に陥り、景気はますます冷え込むでしょう。

 さらに、新興国への融資等を引き上げるなどの動きが加速し、逃げ足の速いマネーが新興国市場から続々欧米本国に帰っていきます。新興国通貨はいっせいに売られるとともに、外貨建ての借金を多く抱える新興国のなかにはデフォルトの危機に直面する国も出てくるかもしれません(個人的には韓国あたりが危ないと思っています)。

 こうじたヨーロッパの混乱を受けて、アメリカの金融システムも大きく動揺します。PIIGS諸国の国債や、これらの債券および欧州金融機関のCDSなどを大量に引き受けているアメリカの金融機関も大打撃をこうむるでしょう。

 さらにガソリン価格などの激しい物価高や住宅価格の下落等の影響で各種ローン支払い者の破産等も増えて、貸し倒れや不良債権もさらに膨れ上がるでしょう。これらの結果、欧州金融機関に続き、アメリカの金融機関の経営危機も表面化します。

 このような危機の連鎖により、「リスク・オフ選好」における上記のマネーフローがますます強まり、新興国通貨・ユーロ・ドルに蓄えられていたマネーの多くがリスク回避の動きを早めて円に向かうと予測しています。円がすべての通貨に対して買われる「円独歩高」の展開です。

 では、こうした外貨の激しい動揺に起因する円高に、わが国はどう対処したらよいでしょう。

(続く)

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今年度最大のリスク=インフレ「リンゴを1つ下さい」②

2012-04-02 00:41:49 | 世界共通

(前回からの続き)

 ところで、以前、幼稚園児たちの「ままごと」でこんな光景を見かけたことがあります。それは、自分たちが作ったお金で木材やプラスチックでできた果物や野菜などを売買するという、「お金」の単位や使い方の勉強を兼ねたままごとでした。

 はじめ、園児たちは、

「リンゴを1つ下さい」「90円です」「はい100円」「おつりは10円です。ありがとうございました!」 

というように平和に遊んでいましたが、そのうち、園児のひとりが、ゼロを1つ加えるとお金の単位が1つ増えることに気がつきました。100円にゼロを1つ加えて1,000円、1,000円にさらにゼロを加えて10,000円、といった具合に「高額紙幣」を次々に乱発し始めたのです。

 すると、さきほどのシーンは、

「リンゴを1つ下さい」「900,000,000,000円です」「はい100,000,000,000,000円」「おつりは・・・?いくらになるの!?」

などとなって、園児たちの小さな経済は大混乱! 結局、みかねた周囲の大人たちが園児たちが乱造した大量の高額紙幣をすべて回収し、かわりに幼児教育用のプラスチック製の硬貨を市場に投入して事態を収拾したのでした・・・

 たわいない「ままごと」ですが、ムツカシイ理論や理屈を抜きにすれば、いまの世界経済(とくに欧米経済)で起きていることの本質はこれと同じ。ようするにマネーの大増刷です。

 その結果、

「リンゴを1つ下さい」「9ドルです」(高っ!)「はい10ドル」(マジで買う気か!?)「おつりは1ドルです。サンキューベリマッチ!」(って、生活は?・・・できっこないので「フードスタンプ」受給へ(涙))

といった絵空事が本当に現実になりかねないほどの激しいインフレが巻き起こるリスクが高まっています。

 それでも、以前にも書いたように、欧米諸国にはインフレ策以外の手はないでしょう。市民の生活はますます厳しくつらいものになっていくでしょう。だから、インフレが激しくなる前に、多くの市民が「リンゴ」(実物資産)を買っておこうとするかもしれません。

 ともかく、日米欧ともに、ガソリン価格の動向から目が離せなくなってきた新年度入りです。

(「今年度最大のリスク=インフレ「リンゴを1つ下さい」」おわり)

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今年度最大のリスク=インフレ「リンゴを1つ下さい」①

2012-04-01 00:00:30 | 世界共通

 2012年度に入りました。

 現在、世界経済にはさまざまなリスクが想定されていますが、個人的には今年度最大のリスクはインフレだと思っています。もっとも、欧米諸国(および新興国)とわが国のインフレの度合いには多少の違いがあって、それを天気予報風に表現すると、

 ・欧米諸国:インフレ暴風警報
 ・わが国 :インフレ注意報

欧米諸国ではインフレがますます激しくなり、社会不安も高まって、ところによりデモや暴動が多発するような事態となるでしょう。一方わが国でもインフレに十分な注意が必要になるでしょう・・・といったところだと思います。

 欧米諸国では、度重なる金融緩和であふれたマネーが国際商品市場に流れ込み、石油や小麦などの価格を高騰させています。その一方で実体経済の回復が遅々として進みません。インフレがどんどん激しくなるのに市民の賃金や給与が上がらないため、市民生活が大きなダメージを受けて社会不安が増大していきそうだ、という予想です。

 他方でわが国は状況がやや異なります。金融緩和を続けてきた欧米諸国に比べて規律ある通貨管理が行われていることなどから為替は長く円高/外貨安のトレンドを描いてきました。この円高ファイアウォールとなってドル建ての石油などの資源価格の上昇を抑制し、それが物価の安定に寄与してきました。

 もっとも、2月の日銀の金融緩和以降、一転してやや円安/ドル高の基調となり、これらの資源価格の円建て価格が急激に上昇し、それがインフレをもたらしかねない状況となってきたので十分な注意が必要になってきた、ということです。

(続く)

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