(前回からの続き)
それではつぎに金融政策とは別なオプションを考えてみましょう。財政政策です。つまり、政府が公共事業等を実施することで需要を生み出すというものです。
4月5日、東日本大震災からの復興事業を盛り込んだ平成24年度予算が成立しましたが、その内訳を見ると公共事業関係予算は総額で約5.3兆円(うち復興関係7千億円あまり)となっています。たとえばこれを10兆円くらいに増額し、さらに同規模の社会資本整備を2~3年程度継続し、国家事業として地震や津波に強いインフラの整備などを進めます。このための財源は税収と、足りない部分は国債を発行して賄います。
ただでさえ巨額の財政赤字を抱えているのに、さらに国債を発行したらますます赤字額が膨らんでしまい、金利が上昇してしまうのでは、という心配はこの局面では無用でしょう。なぜならば、世界的な金融不安が高まれば高まるほど、先に示した図式「円←ドル←ユーロ←新興国通貨」に基づき、マネーが安全資産へ、つまり円・日本国債へと引き寄せられるからです(追加的な国債発行で円安に振れる可能性がありますが、それを上回る勢いで外貨が大量に増刷されるため、通貨供給量の比較などからみても過度な円安にはならないだろうと想定しています)。
外貨と異なり、相対的に規律ある通貨管理が保たれている円建ての日本国債だからこそ、金融危機に揺れる世界からの買いを集めるため、低金利での発行が可能となるでしょう。別な言い方をすれば、わが国は世界金融危機を逆手にとって低金利で資金調達をすることができる有利な立場にいるのです。
もっとも、こうした状況では多くの外国人が外貨を売って日本国債を買うでしょうから、日本国債の外国人保有率が高まり、日本国債の安定度の基盤をなす自国民保有率(現在90%超)が下がるかもしれません。
しかし、格付け会社の日本国債の格付けは、AAA格のドイツ国債や英国債、AA+格の米国債などよりも低いAA-(S&P)程度(個人的には、金利の低さなどからみて主要国債のなかでは最高格と思っていますが・・・)。この格付けの「低さ」が逆に幸いして(?)、外国人の日本国債買いはある程度のレベルにとどまるのではないかと予測します。
一方で、外貨投資などで大損をしたジャパンマネーの多くが日本国債に回帰すると予想されるため、結果として日本国債の自国民保有比率はそれほど下がることはないだろうとみています。
(続く)