(前回からの続き)
財政政策に話を戻しましょう。
先に仮定したように、財政出動による需要創出策をさらに強化、たとえば5兆円程度公共事業予算を増額すると、GDPが約500兆円弱ですから単純に1%あまり成長率が高まる計算となります。さらに、建設業やメーカー等の収益が拡大→失業率低下・市民の所得向上→消費の拡大→景気の一層の回復、という、いわゆる乗数効果が加わるでしょうから、さらなる成長率の伸びや2年目以降の持続的な経済成長も期待できます。
こうして景気が良くなってくれば、法人税や所得税などの税収も増えてくるでしょう。いま議論沸騰の消費税増税は、こうした一連のプロセスを経た後、そして世界的な金融の混乱状態が落ち着きを見せた後、景気がある程度熱を帯びてきてからでよいのではないでしょうか。
(ちなみに、欧米諸国の混乱がどのように収束するのか、私にはなかなかイメージが沸きませんが、ひょっとしたらユーロ圏は分裂し、たとえば北部欧州通貨とPIIGS諸国通貨などといった新通貨が登場するような可能性があるかも、などと想像しています)
とういうわけで、「流動性のワナに陥っているときには金融政策の効果は乏しいが、クラウディングアウト(国債大量発行で金利上昇)が発生していなければ財政政策の有効性は高まる」という、マクロ経済学の教科書どおりの政策案を提示してみました。世界経済が恐慌に近い状態に陥ったら、わが国は、難しいことを考えず、本当にこの教科書どおりの政策を実行すればよいと思っています。
(言い方は適切ではないかもしれませんが、)いまはまさに世界的な金融動乱の幕開け前。つかの間の外貨フィーバー(ドル・ユーロ・新興国通貨高/円安)のあとは、未曾有の外貨危機がやってくるでしょう。インフレ以外の手の打ちようがない諸外国に比べ、わが国には複数の政策を選択することができる余地があると思います。
どうやら外貨のほうが先に規律を失い、どんどん増刷されて価値を落としていきそうなトレンドのなか、円・日本国債の暴落(=外貨・外債の暴騰)はまず考えられないので、極端な政策的失敗(財政を超緊縮型にしたり、大規模な円売り・外貨買いや、諸外国の金融緩和に付き合って円を大増刷するなど)さえしなければ、わが国はこのシビアな局面を何とか乗り切っていけるだろうと予想しています。
(「2012年度予想「外貨動揺・円独歩高」でどうする日本」おわり)