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【不動産の切り売りしかない?トホホなPIIGS】QEをめぐって対立深まる欧州③

2015-01-23 00:02:41 | ヨーロッパ

(前回からの続き)

 ところで・・・近ごろ金融市場でさかんに取り沙汰される「デフレリスク」というワードですが、使われ方にある種の意図があるように感じられます。

 いま世界経済でもっともデフレ効果を発揮しているのが原油安といえるでしょう。では、これって本当にリスクなのか?いうまでもなく産油国にとってはリスクだけれど、こちらの記事に綴った日本を例にとっても分かるように、石油消費国にとってはリスク面よりも「恩恵」のほうがはるかに大きいはず。

 これは域内に大きな産油国のないユーロ圏にとっても同じこと。つまり原油安は、輸入額の減少を促して各国の経常収支の改善に寄与するとともに、エネルギーコストの低減をもたらして企業の利益や家計の実質所得を増やします。ということは経済や景気に大いにプラス―――素直にこう捉えるべきでしょう。日本と同様に、欧州は原油安デフレのマイナス面にヘンに神経質になる必要なんてないと思います。

 にもかかわらず原油安を引き合いに欧州でデフレリスクがしきりに強調されるのは、マーケットが本心でデフレを恐れているから。で、ここでいうデフレとは、原油安デフレではなく「資産デフレ」のほうだということ。つまりデフレリスクとは・・・資産効果が弱まってバブルがはじけそうになっている!→このままだといろいろヤバいから早くヤク(QEマネー)をチョーダイ!というECBへの悲痛な催促だということです。かといって露骨にバブルを起こせ!とはいえないので、原油安でも何でもいいから物価下落は「悪いこと」で、これを食い止めてインフレ(=資産バブル)を起こすことが「良いこと」と人々のマインドに刷り込もう!・・・それが上記「デフレリスク」を唱える側の意図であり、その対応手段としてのQEを正当化する論法だと考えています(安倍政権・黒田日銀がガソリン代が上がると喜び、下がると悲しむのと同じですね!?)。

 で、このあたりについては先日、FRBによるQE終了後のアメリカのアセる気持ち(?)を勝手に推測してこちらの記事に書きましたが、欧州においてこのアメリカと同じくらいの「禁断症状」に陥りつつあるのが、こうした資産バブルに依存したギリシャ、スペイン、イタリアなどの南欧諸国ということになります。もちろん彼らの望みは派手なQE・・・で、自国の資産―――不動産価格が高騰すること

 これまた本ブログのこちらの記事等で綴りましたが、PIIGSとかキプロスといった国々は、現金収入をもたらす天然資源に恵まれているわけではありません。高い付加価値を生む製造業の基盤はないし、その育成もしていません。まあ農業や観光業は見るべきものがあるけれど、彼らのいまの生活水準を維持するためにはそれらだけでは不十分。したがってこれら諸国が何で稼ぐのかとなれば、自ずと「国土」、つまり不動産の切り売りしかない、ということになります。

 たしかにこれら諸国の不動産は魅力がありそうです。何といってもその多くが「世界遺産付きの物件」ですからね・・・。パルテノン神殿が臨めるコテージとか、コロセウムまで歩いて5分のマンション、なんて銘打ったら、アラブの石油王とか成金の中国人とかにいい値段で売れるでしょう・・・(ギリシャなんて、しまいには世界遺産の「本体」まで売りに出すんじゃないかなー。ということはパルテノン神殿に五星紅旗が翻る日も近い!?)

 しかし、いくらこれら物件が高く売れても、「売ったきり」ではその後の収入が望めません。で、不動産で稼ぎ続けるには、やはりその価格がつねに上がる環境が必要になります。これによって不動産の売買が活性化し、それにつられて国外からの投機マネーが流入して価格がさらに上昇して・・・というサイクルです。こうしておカネが回れば歳入が増えて資金調達もしやすくなるから国の運営がスムーズにできるようになる―――そんなバブルを起こしてくれるQEを早く!・・・PIIGS諸国の目論見はむかしもいまもそんなところではないでしょうか。

(続く)

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