(前回からの続き)
マレーシアやフィリピンを含むASEAN(東南アジア諸国連合)諸国が、南シナ海島嶼の領有権問題を事実上、棚上げしてでも、その係争相手国である中国との関係強化に動くなか、これに反比例するかたちで同エリアにおけるアメリカの存在感は薄らいでいく―――このように予想しています。その理由は、アメリカがASEAN諸国のニーズに応えるだけの能力や国力を失いつつあるため、なのではないか・・・(?)
どうしてASEAN諸国が中国に接近するのか、といえば先述のとおり、彼らが中国の経済力に期待しているから。具体的には、さらなる貿易の拡大やチャイナマネーによる開発投資の促進等により、自国経済の浮揚を図りたいから、でしょう。もちろん中国もそんなASEAN諸国の思いをお見通し。実際、こちらの記事にも書きましたが、中国は同国主導で設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)の融資スキームを通じて、これら国々の灌漑施設、道路、港湾、空港などのインフラ建設にマネー・プロジェクト建設の両面で関与しようとしているのでしょう。
これに対してアメリカは・・・ASEAN諸国に十分な資金援助を行えるだけの余力はないし、彼らのインフラ整備の要望にも対応できない。それどころかトホホにも当のアメリカ自身が自国のインフラ建設にあたって中国製の部材等に頼り切っているようなありさまです・・・。今後は既存のアジア開発銀行(「世界銀行」のアジア版?)もAIIBの登場で影が薄くなりそうですし・・・(?)
さらにいえば、アメリカの軍事的影響力も今後は希薄になるばかりと予想されます。まあ、いまでこそ同国のバラク・オバマ政権は「航行の自由」作戦(中国が南シナ海に建設した人工島[実際は岩礁で、領土には当たらない]から12カイリの内側に米艦船を入れる作戦)を実行し、中国の不当な南シナ海エリア支配を牽制しているわけですが、これだって1か月に1回程度(?)では同国をビビらせるほどの効果はないでしょう。
それに・・・次期大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏が指摘しているように、アメリカは巨大な軍事支出をこの先、大幅に減らすのは必至の情勢です(?)。同氏が大統領になれば当然そうなるし、クリントン氏になってもトランプ支持層(≒白人貧困層など)に配慮し、内政支出を増やすなどの代わりに軍事支出は削減せざるを得ない(?)。そのとき・・・アメリカ本土沿岸、北大西洋や地中海、ペルシャ湾や紅海・・・などと比べてアメリカにとって戦略的な重要性がぐっと小さな南シナ海・・・の関連支出は真っ先にリストラの対象になるはず・・・(?)
・・・みたいなアメリカのこの先はASEAN諸国にも楽々読めるわけです(?)。となれば「もうアメリカは経済的にも軍事的にも頼りにならない」と彼らが考えるのも無理はありません。上記のマレーシアやフィリピンの中国への接近の背後にはこうした事情があるものと考えられます。